飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。

学林局はその日一番慌てふためいた。感門之盟初日、物語講座14綴受賞式での出来事だ。物語講座では、窯変落語賞、窯変ミステリ賞、窯変幼な心賞、トリガー賞、編伝賞、冠綴賞の6つのアワードが発表される。最初に発表された窯変落語賞を受賞した叢衆(学衆)は夜想曲南軍将軍文叢のF。しかし、Zoomで参加しているはずのFの姿がどこを探しても見当たらなかったのだ。
学林局スタッフが大急ぎでFに電話を掛ける。実はFが受賞したのはこれだけではなかった。窯変幼な心賞、トリガー賞でもその名が呼ばれ、会場からは歓声ともどよめきともとれる声が上がる。
Fは46破の物語編集術で3000文字のお題に対して、それを軽々越える5万字を書いた強者である。当時を知る参加者からも次々とコメントが届く。破学匠の原田淳子からノワールと呼ばれたFを、46破師範の齋藤成憲は「鬼才」と評し、同じ教室の学衆であったKは「只者じゃない」と称賛した。
受賞式もいよいよ大詰めを迎え、月匠の木村久美子から冠綴賞が発表される。物語講座全体を通して素晴らしい成績をおさめた叢衆に送られる冠綴賞。再びFの名前が呼ばれた時、ようやくZoomが繋がった。全員が安堵する中、「選ばれるとは思わなかった」と飄々と語るFに3冊の本と綴墾巻が贈られた。受賞インタビューで[離]に申し込んだことがあかしたF。これからどんな物語を綴っていくのか目が離せない。
▲叢衆Fに贈られた3冊。これに『綴墾巻』も加わる
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物語講座物15綴は今秋開講予定。
受講条件は[破]応用コースの修了。進破がまだの方、まずは48[破]へ!
森本康裕
編集的先達:宮本武蔵。エンジンがかかっているのか、いないのかわからない?趣味は部屋の整理で、こだわりは携帯メーカーを同じにすること?いや、見た目で侮るなかれ。瀬戸を超え続け、命がけの実利主義で休みなく編集道を走る。
うかうかしていると、足音はいつの間にか大きくなっている。かつては映画の中か夢物語かと思っていたAIが、日常にあるものとなった。 何度かの冬を経て春を迎えたAIに対し、人はどう受け止め、どう考えるのか。好奇心と探求心を […]
指南とは他力と共に新たな発見に向かうための方法です。豪徳寺が多くの観光客で賑わっていた2月22日。14名の参加者がイシス編集学校花伝所のエディットツアーに集い、編集ワークやレクチャーを通して「師範代」というロールの一端 […]
感門之盟や伝習座などのイベントで、テクニカルのすべてを担う黒膜衆。いわば彼らは「イシスで起こる全事件の目撃者」である。その黒膜衆のひとりであり、今期41[花]で花伝師範を担う森本康裕が53[守]伝習座に見たものとは。 黒 […]
コミュニケーションとはエディティング・モデルの交換である。イシス編集学校校長の松岡正剛が27年前に執筆し、先日増補版が刊行された『知の編集工学』の中で論じていたことである。コミュニケーションは単なる情報交換やメッセージ […]
自分の一部がロボットになり、強大なものに向かっていくかのような緊張感や高揚感を覚える。ガンダムか攻殻機動隊か。金属質で無骨なものが複数の軸を起点にしながら上下左右に動く。漫画や小説、アニメで見聞きし、イメージしていた世 […]
コメント
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2025-08-16
飲む葡萄が色づきはじめた。神楽鈴のようにシャンシャンと音を立てるように賑やかなメルロー種の一群。収穫後は樽やタンクの中でプツプツと響く静かな発酵の合唱。やがてグラスにトクトクと注がれる日を待つ。音に誘われ、想像は無限、余韻を味わう。
2025-08-14
戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。
2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
たくさんのあなたが一千万の涼風になって吹きわたる。お釈迦さまやプラトンや、世阿弥たちと肩組みながら。