ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
弐のドク:『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』『Birds』

「ISIS now 遊撃するブックウェア」(第89回感門之盟)で2番目に登場したのは、松岡正剛校長の火を誰よりも苛烈に燃やし続けている、世界読書奥義伝[離]の太田香保総匠。紹介するのは、『百書繚乱』(アルテスパブリッシング)とともに今年の命日のために刊行された『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』(晶文社)、『Birds』(bookshop M)の2冊だ。
『世界のほうがおもしろすぎた』は校長の最初で最後の自伝。昨年3月に朝日新聞で連載された、「人生の贈り物」という全14回のインタビューが元となっている。もともと校長は自ら自伝を書く計画を立て、あとは着手するのみ、というところに取材企画が舞い込んだ。自伝執筆の事前準備のつもりで引き受けたであろうインタビューのおかげで、「最後の自伝」がまとまった。
インタビュアーを務めた記者・山崎智さんが動画メッセージを寄せ、「(松岡さんは)わかりやすさを徹底的に嫌って、複雑なものを複雑なまま、何とかして私に伝えようとしてくれた」と取材時の様子を語ってくれた。松岡校長の発言を受けた「世界のほうがおもしろすぎた?」という山崎さんの問いがタイトルに採用されているが、太田総匠がまとめたこの本で、何度でも「松岡さんのゴーストに出会うことができたらいい」と結んだ。

そして、『Birds』。校長が亡くなった後、書斎の片隅から鳥をモチーフにした書画がたくさん見つかった。鳥を「ここ」(here)と 「むこう」(there)をつなぐ媒介者と見立てていた校長を、軽やかに羽ばたかせたい、との願いから編まれた書である。



セイドクにて、そこここに揺蕩う校長の気配を感じたい。
▼以下順次公開
壱のドク:『百書繚乱』と千夜千冊絶筆篇
弐のドク:『世界のほうがおもしろすぎた──ゴースト・イン・ザ・ブックス』『Birds』【本稿】
参のドク:多読アレゴリア
肆のドク:ほんのれんラジオ/多読アレゴリア「ほんのれんクラブ」
伍のドク:九天玄氣組プロジェクト Qten Genki Book『九』刊行など
アイキャッチ・写真/後藤由加里
文/白川雅敏
白川雅敏
編集的先達:柴田元幸。イシス砂漠を~はぁるばぁると白川らくだがゆきました~ 家族から「あなたはらくだよ」と言われ、自身を「らくだ」に戯画化し、渾名が定着。編集ロードをキャメル、ダンドリ番長。
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コメント
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2026-02-10
ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
2026-02-05
誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。