ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
門を感じて、門に入(い)る。門をくぐって、門をひらく。
イシス編集学校の設立から四半世紀。3月末に開催される感門之盟も、ついに90回目を迎えます。
感門之盟は、王義之の「蘭亭の盟」に肖った名です。豪徳寺本楼に一座建立し、半年間の稽古を締め括るセレモニーではありますが、単なる卒業式ではありません。
門をくぐった先に見えるのは、ゴールではなくあらたな道です。編集はじっとしていません。ですが、完成を想定したとたんに編集は止まってしまいます。
感門とは、どこまでいっても途上にある稽古者の門を感じあう祝祭なのです。
このたびの感門タイトルは「読奏エディストリート」に決まりました。「読奏」には、春の兆しを読み奏でようという麗らかな志を込め、「エディストリート」の一種合成は、Edi+Street(編集街道)とEdist+Lied(編集歌曲)とを多義的に響かせています。
読書は本来、共同的な営みです。楽譜が一個人の脳内で再生されるにとどまらず音楽家たちに演奏されることを待っているように、書物もまた閉じた書斎から飛び出して読書家たちに“読奏”されることを待ちわびています。いつだって本は、たくさんの人の手で奏でられることを切望しています。
松岡正剛校長が編集学校を立ち上げたのは、読むこと・聞くこと・知ること・感じること・分かること・思うこと・考えること・話すこと・書くこととがバラバラに分断されておらず、それらが有機的に結び合った知覚や思考や想像の回路をひらくためでした。ここに相互編集は必要不可欠です。イシスで重んじられている共読も、自我の閉塞から読書を解放する試みであり、他者との触知的なインタラクティヴの只中へ読み書きを還していくための実践なのです。
教室も一冊の本に見立てられます。世界にたったひとつだけの名を持った教室で、ひとつとして同じではないドラマが繰り広げられた劇的な日々を振り返るのが感門之盟です。師範から師範代へは感門表が贈られ、師範代から学衆へは卒門証や突破証が贈られます。世間一般的な卒業証書とはちがって、複製品ではありません。個々の奮闘をかたどるように、一文字一文字、丹精込めて綴られます。
今期の感門は2講座ずつ、2日にわけての開催です。3月21日のDay1は[55破]と[44花]の合同、3月22日のDay2は[56守]と[遊・物語18綴]との合同で実施されます。つまり、突破者は花伝所を、卒門者は物語講座を覗き見ることができるチャンスです。[守][破]師範代に託される先達文庫や、花伝師範に贈呈される花伝選書、そして物語講座のアワード発表のうちにも、多様多彩な“読奏性”を見出せるでしょう。当日本楼は、それぞれのエディストリートがクロスオーバーする交差点となるはずです。
本棚劇場を飛び交うさまざまな人の声に耳を澄ませることは、テキストベースとは一味違った格別の共読機会になるにちがいありません。一途で多様なイシス人の風姿に触発されながら、その先の編集道へ、あらたな一歩を踏み出してみてください。
3月21日、22日の感門之盟まで待ちきれない方もいるでしょう。そこで遊刊エディストでは感門に先行して、[守破花遊]の師範陣でこの期にちなんだ本を共読・共筆しあう連載企画「師範の読奏エディストリート」をスタートします。さらに感門Web(近日公開)とも連携していく予定です。
いったいどんな本が紹介されていくのか。ここエディストで鳴り響く師範たちの“前奏曲”もどうぞお楽しみに。
アイキャッチ/田中晶子、 宮崎有仁子
★Day1 [55破]、[44花]の方はこちら
■日時:2026年3月21日(土)12:30-19:30(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom90day1
★Day2 [56守]、[遊・物語18綴]の方はこちら
■日時:2026年3月22日(日)12:30-19:00(予定)
■会場:豪徳寺イシス館 本楼(https://es.isis.ne.jp/access/)
■費用:4,400円(税込)
■申込先:https://shop.eel.co.jp/products/es_kanmom90day2
バニー新井
編集的先達:橋本治。通称エディットバニー.ウサギ科.体長180cm程度. 大学生時に入門後、師範代を経てキュートな編集ウサギに成長。少し首を曲げる仕草に人気がある。その後、高校教員をする傍ら、[破]に携わりバニー師範と呼ばれる。いま現在は、イシスの川向う「シン・お笑い大惨寺」、講座師範連携ラウンジ「ISIScore」、Newアレゴリア「ほんのれんクラブ」などなどを行き来する日々。
準備も本気で本格的に。それがイシス流である。 感門本番まで残すところあと2日、これまで個々に用意を重ねてきた[破][花]の指導陣が、いよいよ本楼に集って全体リハーサルを行った。音響、立ち位置、登降壇順、マイク渡しに席 […]
感門準備の醍醐味は、手を動かし口も動かすことにあり。 8月最後の土日、[守][破][花]指導陣の有志(感門団)で豪徳寺学林堂に集まって、一週間後に控えた感門之盟の下準備に入った。ペットボトル300本に感 […]
「守をちゃんと復習し終えるまで、破へ進むのはやめておこう……」 卒門後、そのように考える慎重な守学衆が毎期何人かいます。けれども、コップに始まりカラオケへ至った学びのプロセスによくよく照らしてみれば、「立 […]
◆感門タイトルは「遊撃ブックウェア」 読書はなかなか流行らない。本から人が離れてゆく。読書はもはや、ごく一部の好事家による非効率でマニアックな趣味にすぎないのだろうか? 読書文化の退行は今 […]
モノに見立てて肖って●54[破]評匠 セイゴオ知文術レクチャー
本を読んで、文を書く。そのとき人は、いったい何について書いているのだろうか。そこでは何が出入りしているだろうか。 日々の暮らしの中で何気なくおこなうこともできてしまう読書行為というものをひとつの巨大な“ […]
コメント
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2026-02-10
ハンノキの葉のうえで、総身を白い菌に侵されて命を終えていたキハダケンモンの幼虫。見なかったことにしてしまいたくなるこんな存在も、アングルを変えてレンズを向けてみると、メルヘン世界の住人に様変わりする。
2026-02-05
誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
2026-02-03
鋸鍬形、犀兜、鰹象虫、乳母玉虫、碁石蜆、姫蛇の目、漣雀、星枯葉、舞妓虎蛾、雛鯱、韋駄天茶立、鶏冠軍配、鶉亀虫。見立ては、得体の知れないものたちを、手近に引き寄せたり、風雅に遊ばせることの糸口にもなる。