古今東西の情報が集積し、世代や属性を問わず人が出入りする書店。それが九州最大の駅ビルにある書店となれば、書籍の種類は実に多彩、量も膨大です。どの書籍に焦点を当て、どのように陳列するかを日々シビアに見定めていく必要があります。
そんな駅ビルの一角で博多の書店文化をリードし続ける丸善博多店に6月7日、松岡正剛の「千夜千冊エディション」が一斉に乗り込みました。
1日約35万人が利用するJR博多駅は九州最大規模。百貨店や専門店など約230もの店舗が集まる駅ビル「JR博多シティ」に、丸善博多店はあります。
JR博多駅博多口から海に向かってのびる大博通り。港には博多港国際旅客船ターミナルがあり、釜山行きのフェリーも就航しています。
JR博多シティ8階の丸善博多店。2011年3月に天神の福ビルから移転しました。通勤通学の方、買物客、観光客で常に賑わっています。睨みをきかせたポスターのある棚がフェアコーナー(エスカレーターのそば)。
整然と並んだ書棚にはベストセラーや話題の本をはじめ、文学、専門書、児童書、漫画、福岡や九州の地域文化の書籍も充実。「お目当の本はなくとも立ち寄って、気がつきゃいつでも大人買い」そんな方も多いのでは。
ギラリと睨む松岡正剛、その視線たるや。棚の目前にあるエスカレーターを上り下りするお客さんをギョッとさせています。
フェアは話題書コーナーの一角を占拠。『情報の歴史21』とともに陳列されています。もちろん記念冊子も発売中。配架は書店側ですべて仕立ててくださったので、「最新刊」ポップだけ貼らせてもらいました。
千夜千冊エディションの多彩なデザインを一目で楽しめる面出しの棚です。刊行順でなく関係性を意識して配架、さりげない編集が効いています。
フェアを担当する副店長の前田文雄さん。すでに予定で詰まっていた棚のスケジュールを、フェアのためにこじ開けてくださいました。いつも軽快な関西弁で出版業界のアレコレを語って聞かせてくれます。お仕事柄、選んだ本も『本から本へ』。
丸善博多店とは天神のど真ん中「福ビル」にあった頃からご縁があります。2009年4月に松岡正剛校長をお招きして九州国立博物館(太宰府市)で独演会「ぼくの九州同舟制」(主催:A&Q、共催:九天玄氣組)を開催した際に、会場入り口で書籍の出張販売を担当、そのとき駆けつけてくださったのが、店長の四元博之さんと前田さんでした。他にも同店では「九州の三冊」をテーマにした三冊屋のほか、イシス編集学校学林局長の佐々木千佳さんと花伝所長の田中晶子さんによる編集ワークショップもBOOKUOKAの共催で開くなど、本による編集の場を共にしてきた経緯があります。
博多駅ビルに移転した後は、あまり接点を持てずにいましたが、フェアを提案するために久々に再会。前田さんは開口一番、「まだやってんの、九天玄氣組。しぶといね(笑)」。そしてフェアが始まり、棚を眺めながらこうも話すのです。「九天玄氣組と出会わなければ、松岡正剛さんの本をこうして扱うことはなかったと思うよ」
ーーこれ以上の褒め言葉があるでしょうか!
大阪生まれの前田さん。書店業界一筋と思いきや、一度だけ出版社勤めの経験があるそうです。当然ではあるけれど、自社の本しか扱わないことにもどかしさを感じ、書店業界に飛び込みます。「書店には様々な版元から多彩なジャンルの本が一堂に集まるでしょ。だから面白くてね」。書店は前田さんにとって、一途で多様な編集の現場。縦横無尽なジャンルを編み込む千夜千冊エディションのフェア棚も、そんな前田さんの手で配架されたとあれば、書店の棚の中にある小さな書店のように見えてきます。書店でつながる博多の街と人ーー 千夜千冊エディションによる縁結びです。
(フェアは7月末までを予定)
丸善 博多店
https://honto.jp/store/detail_1577305_14HB310.html
写真:中野由紀昌
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中野由紀昌
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