草むらで翅を響かせるマツムシ。東京都日野市にて。
「チン・チロリン」の虫の音は、「当日は私たちのことにも触れてくださいね」との呼びかけにも聴こえるし、「もうすぐ締め切り!」とのアラートにも聞こえてくる。

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1995年に開店したジュンク堂書店大分店は、入居ビルの建て替えにより2017年に閉店することになりました。大分市は人口約48万人の県内首位都市です。大型書店が無くなることを危惧した市民の要望に応えて、僅か2か月後には中央商店街にある近くのビルにて再オープンしたのです。
中央町商店街は大分駅前から、官庁街へ続く大分市きっての歓楽街。2本の通りが交差する中央は開閉式ドームになっています。地元出身の磯崎新氏設計の建築物や朝倉文雄氏の彫刻も点在している大分市。アートイベントも多く、アーケードを広げて大分県立美術館まで屋根付き通路で結び、雨に濡れることなく通行できる計画もあるそうです。
アーケード街に面したエントランスは立ち寄りやすく、フロアー面積はさほど広くないのですが、5階までが売り場になっています。
目に付きやすい3階エスカレーター前では、8棚でジャンルを超えた様々な特集が組まれます。この中央に千夜千冊エディションが並びました。左に教育書、右にビジネス書といったランダムな棚づくりによって、関心ある本だけでなく、偶然目にした本との出合いも楽しめるようになっています。
平常は人文、社会関係の本が置かれている3階に松岡正剛の棚があり、通路にいてもポスターに手招きをされるかのよう。同階の柱ではフェアの案内をしていました。
多くの人が手にした形跡があり、特に『仏教の源流』『面影日本』が人気だったそうです。
実は全国に先駆けてフェアを展開したのはジュンク堂書店大分店。まもなくフェアは終了しますが、開始は『仏教の源流』が刊行されて間もなく、5月10日だったのです。九州の西部で、2ヶ月間のフェアが堂々開催されてきたのです。終了間際に訪ねました。
フロアー担当はビジネス書から異動したばかりの藤澤美穂さん。笑顔で気さくに対応してくださいました。「この階にはまだ不慣れで、勉強中なのですよ」と語る言葉に素直なお人柄を感じます。エディション棚から取り出したのは、タイトルに惹かれるからと『少年の憂鬱』でした。「フェア棚では『情報の歴史21』が真っ先に売れたのをよく覚えていますよ」と言われて、藤澤さんの誕生年を一緒に見ました。「山口百恵ブームですか、私は彼女がベストテンで一位になった日に生まれたのですよ。すごい本ですね」と、藤澤さんのイチオシでした。
フェア後も千夜千冊エディションは書店に並び、7月末日までお求めの方には特典映像用のQRコードが付いています。
大分県北部の中津市耶馬溪在住。職人さんに大工や左官仕事の教えを乞い、古い木造住宅を改修中。発足から参加している九天玄氣組の合宿所になることも。漬物も修行中です。
文・写真:田中さつき
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エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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