道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。
今さら聞けない「あの人の『情歴』活用法」が明らかに
『情報の歴史21』を手にした方の多くが抱く共通の要望が二つある。一つは「どこから読めばいいのか」。もう一つは「他の人がどのように読み、活用しているのか」。
両方の要望にこたえる ISIS FESTA SP「『情報の歴史21』を読む」シリーズがいよいよ開幕した。
第一弾のゲストは山本貴光氏。ゲーム作家・文筆家であり、松岡正剛が座長をつとめるHyper-Editing Platform[AIDA]のボードメンバーであり、1996年の増補版以来、25年以上にわたる『情歴』ヘビーユーザーである。
そもそも『情報の歴史』はリニアなテキストに対し「ハイパーテクスト」の最たるもので、辞書やダイアグラムのように、どこから読み始めても、どこにとんでも、どこで読み終えても構わないメディアである。この遊刊エディストが乗っているウェブも、画像や動画やアプリを含めたハイパーテキストの一種である。このように「自分で読む順序が委ねられていること」がハイパーテキストたる『情歴』の読み方の醍醐味であり、悩ましさでもある。
ハイパーテキストの海で「問い」を立てる
そんな悩める『情歴』読者にむけて、ISIS FESTA SPで山本さんがまず勧めたのが「問い=Questionを立てること」である。山本さんは、連載中の「文学のエコロジー」(『群像』、講談社)でバルザックの『ゴリオ爺さん』を取りあげており、その執筆にあたり、「バルザックの執拗なまでの環境描写は、当時のメディアや芸術環境の影響をうけていたのでは?」という問を立てたうえで、バルザック生誕年である1799年の『情歴』のページを開いたという。そこで飛び込んできた歴象が「A.フンボルト」と「リトグラフ」だったとのこと。
フンボルトといえば、南米中心の旅行で植物の分布を一枚の上にまとめた人物。この分布図は今日の「インフォグラフィック」の先駆けとなっている。一方、「石版」を意味するリトグラフの登場によって、今まで以上に緻密な表現が可能になり、新たに雑誌に風刺画やカリカチュアが登場しはじめた。このように、問いによってバルザックの描写にあたえた影響に連動する情報が得られたという。
問いを立てて『情報の歴史』を読むのは、本屋や図書館で書棚の間を歩いていて、その時々の関心に応じて棚からある本が飛び込んでくるようなもの。つまり、関心と書棚(=問いと情報)の組み合わせによって、飛び込んでくる情報を動かすことができるわけです。(山本氏)
山本さんの講演は、その後も新たな使い方だけでなく、独自の書き込みルールや紙とデジタルとの使い分け、『情報の歴史』デジタル化に向けて考えるべき課題にまで及んだ。
次回のISIS FESTA SP「『情報の歴史21』を読む」シリーズは3月22日(火)19:30から。ゲストは社会学者の大澤真幸氏をお招きする。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)