2024年7月、NHKの人気番組「100分de名著」で、ジョーゼフ・キャンベル『千の顔をもつ英雄』が取り上げられた。世界中に残るあらゆる英雄伝説型の神話には、「旅立ち→試練→帰還」という共通の構造がある。現代人はそれを学ぶべきだという内容だった。
その放送を見て、「私たちは25年前から学んでいる!」と密かに叫んでいた者がいた。イシス編集学校[破]コース学匠・原田淳子だ。[破]で学ぶのは、校長・松岡正剛の仕事術。とはいえそれは、「読むだけで身につく〇〇スキル」というようなノウハウの類いではない。文体・クロニクル・プランニングそして物語の編集術を、1ヶ月ごとの稽古を通して体得するのである。第84回感門之盟「25周年番期同門祭」の舞台に立った原田学匠は、52[破]の4ヶ月間の舞台裏を明かした。
「破の指南とはどのようなものであるべきか」とある師範代の問いかけに、かつて松岡校長はこう返した。「師範代が自由と思えるのが破の指南」だと。これが、原田学匠をはじめとする指導陣が、今期向き合ったお題だった。
師範代とは、単なるファシリテーターではない。既知と未知の狭間に挑む学衆を喝破し、断崖絶壁の打破に誘い、差し掛かりの走破へと導く。原田学匠は、その師範代が自由を感じられる指南とはなんなのだろうかと考えたという。
「自由のためには相応の『用意』が必要だと思いました。そこで、錬破(開講前の師範による師範代向けトレーニング)では、師範の皆さんに前期以上に厳しく当たってもらいました。」
ときには師範代の得意手をあえて封じて、苦手に向かわせるような指導もあったという。こうした師範ー師範代間での密な対話を重ねるうちに、師範代も指南への自信が表れてきた。その姿勢に、学衆からも「この師範代にあたっていっていいんだな」と思われるような信頼が寄せられるようになったという。
73人で出発した52[破]は、なんとちょうど52人で帰還した。これにて「めでたしめでたし」と思われたが、原田学匠は「突破率は71%でした。まぁ、破としては普通ですね」とぴしゃり。
松岡校長曰く、破で学ぶのは、「ぶっち切るための方法」。
「お題をもっと多めに引き受けて、編集道を歩んでほしい」と背中を押された突破者たちは、次なる旅立ちに向かう。
文:中尾拓実
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
ISIS 25周年師範代リレー [第50期 三浦一郎 編集の熱気球となって世界にさしかかる教育者]
2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2025年6月に25周年を迎えます。第52期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、25年のクロニクルを紹介します。 ◇◇◇ 2022年10月 […]
安藤昭子コラム「連編記」 vol.8「根」:足元の大いなる知性
「編集工学研究所 Newsletter」でお届けしている、代表・安藤昭子のコラム「連編記」をご紹介します。一文字の漢字から連想される風景を、編集工学研究所と時々刻々の話題を重ねて編んでいくコラムです。 IN […]
イシス編集学校で予定されている毎月の活動をご案内する短信「イシスDO-SAY(ドウ-セイ)」。 2024年10月の行事をまとめて一挙ご案内いたします。10月は新コースの開講ラッシュ。特に、編集学校の入り口で […]
イシス編集学校に「学長」が誕生した。法政大学名誉教授にして元総長の、江戸文化研究者・田中優子である。(2024年9月1日付で就任) イシス編集学校は、2000年に松岡正剛が立ち上げたネット上の学校だ。創立以 […]
イシス編集学校のアドバイザリー・ボード「ISIS co-mission」(イシス・コミッション)に名を連ねる9名のコミッション・メンバーたちが、いつどこで何をするのか、編集的活動、耳寄りニュースなど、予定されている動静を […]