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日本社会は停滞している。諦めムードが漂って久しい。戦争は続き、政治も変わらず、地球温暖化にも歯止めがきかない。山積する問題を前に、改革の掛け声よりもため息のほうがさきに出る。
イシス編集学校校長・松岡正剛は言った、「この社会は編集を終えようとしている。だから僕はそれにあらがいたい」。かつて日本には一人ひとりがいきいきと暮らし、社会がつねに編集されていた時代がある。それは江戸だ。
法政大学前総長で江戸文化研究者の田中優子氏は、現代に生きる日本人の諦念は、SNS時代ゆえの無言の同調圧力に由来するのではと考えている。
「現代は、人とは違うことを言う恐怖感が明らかに強いと思います。江戸時代には多少人と違うことを言ったとしても、せいぜい、ごく近くの人に眉をひそめられるだけ。武士階級でない限り、自分の思いが多くの人に知られることなどありませんでしたから、ほとんどの人にとっては監視社会ではありませんでした」
江戸は、新たなアイデアが生まれやすい土壌をもっていた。かといって、現代人が江戸時代にタイムスリップするわけにもいかない。閉塞感をおぼえる人たちはどうすればいいのか。田中氏は言い切った。
「イシス編集学校という結社があります」
「ここには、社会を編集していくことをためらわない人たちがいます」
イシス編集学校は、世間のルールに呑み込まれないアジールとして存在している。「学校」と名がつくものの、文科省の管理下にはない。また、一般的な私塾とも異なり、知識を詰め込むような教育をするわけでもない。さらにいえば、ここで学んだからといってビジネス上の出世に役立つわけでもない。それなのに開校以来22年間で3万人が学んでいった。ここには何か、自由への方法がある。
2023年1月15日(日)14時〜17時、田中優子氏によるレクチャーが東京・豪徳寺の本楼にて開催される。題して「田中優子の編集宣言」。なぜ、現代において編集力が重要なのか。江戸の私塾や現代の学校と比べて、イシス編集学校のなにが特殊なのか。どうしてイシスではみんなが楽しそうにしているのか。長らく大学教育に携わりながら、自身でもイシスの[守][破][離]のコースを修了した田中氏だからこそ見えた編集稽古の可能性が語られる。
事前打ち合わせに際し、田中氏は「イシス編集学校が実践している『才能を伸ばす方法』は、確実に効果のある学び方。だから、イシスを世に広めることが社会のためになる」と意気込む。田中氏は、イシス編集学校50[守]学衆や指導陣から事前に寄せられた質問すべてに赤ペンで応答。番外編の質疑応答だけでも2万字を超える大ボリュームとなった。
熱の入った特別講義は、学衆たちも待ち望んでいる。田中氏が出演するTBSテレビ「サンデーモーニング」を撮りため、かつ毎日新聞や朝日新聞での寄稿記事を切り抜くファンもいれば、このレクチャーを目当てに入門した学衆も、この日のためにハワイから一時帰国した師範もいるとか。
田中氏は明言する。「イシス編集学校は極めて個性的で、理想の教育現場」。日本の未来は、このイシス編集学校が担っているのかもしれない。
イシス編集学校第50期[守]特別講義
「田中優子の編集宣言」
~法政大学前総長が語る「これからの編集力の必要性」~
□日時:2023年1月15日(日)14:00~17:00
主催:イシス編集学校
2023年5月開講 51期基本コース[守] 受講生募集中
https://es.isis.ne.jp/course/syu
アイキャッチ・記事中写真:後藤由加里
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-07-03
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2025-07-02
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ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。