{[(ゴミムシぽいけどゴミムシではない分類群に属している)黒い星をもつテントウムシに似た種]のように見えるけど実はその偽物}ことニセクロホシテントウゴミムシダマシ。たくさんの虫且つ何者でもない虫です。
■Web検索時代になぜ「学ぶ」のか?
鎌倉時代の禅僧にして日本曹洞宗の開祖。『正法眼蔵』を著し、只管打坐を主張する。
この程度の情報であれば「道元」に限らず、ものの数分で調べることができる。Web検索などを使えば今やほとんどの情報が収集可能になりつつある。この21世紀に「学ぶ」とはどういうことか。なぜ「学ぶ」のだろうか。
2021年10月31日、輪読座の日本哲学シリーズ「道元を読む」でバジラ高橋はこうこたえる。
道元(1200~1251)の『正法眼蔵』を 21世紀的に読めば、「自己確立・自己革新の方法」をめぐっています。
高橋秀元『道元を読む案内資料』より
■13世紀と20世紀に共通の「心の誤作動」
20世紀においては国家(nation)、法人(corporation)は余りにも大きく、個々の人 (person)は余りにも小さくなってしまいました。20世紀的人間は被搾取状態を「選択の自由を与えられた消費者」と自覚させられて満足している個人に成り下がってしまいました。
(中略)
目先の利益追及に 「心」が動かされ、今世紀に至って「サステナブルな社会」などという標語が流行しはじめました。だからといって、それを実現する行動をどうすればよいかは未知のままです。その原因は、20世紀を通じて育てられた「心」が捨てきれないからだと。
(同上)
道元の生きた13世紀以降、争いは止まらない。16世紀からは欧米による植民地支配が始まり、20世紀には2度の世界大戦を体験した。今夏のアフガニスタン紛争でのアメリカ軍撤退も記憶に新しい。日本もバブル崩壊後の1990年代に自殺者が3万人を超え、自粛にステイホームの2020年には、小中高生の自殺者数が過去最高となった。
本来、「心」は新たな関係を見出し創発を生む編集エンジンであったはずだ。その心は今や国家や社会通念、企業や学校の規定により誤作動を起こてしまっている。
この状態は、道元の生きた13世紀の「心」の状態に類似しているのではないか。バジラにとって「道元を読む」とは、誤作動を起こす「心」を再編集する方法を学ぶことでもあった。
■道元はジェネレーションZだった!?
そのバジラ高橋が最近注目しているのは、意外なことに「ジェネレーションZ」の若者たちだという。
ジェネレーションZは「Z世代」とも呼ばれ、2000年代に生まれた人を指す。小さな頃からインターネットやSNSに囲まれ、Web検索を駆使して情報検索を自在におこなえるデジタルネイティブ世代を指す。
「食べログは使わない」「マスメディアを信じず自分で調べる」「自らを動画で配信する」「言葉も心よりも行動を重視する」ーーバジラはジェネレーションZの特徴をこう分析する。
AIに「心」はなく、いわば「無心」です。彼ら(ジェネレーションZ)は煩わしい「心」の作動を一旦、AIにあずけ、その先の未知に向かうときにこそ、「心」を作動させるべきだと覚悟しているようにも思えるのです。
(同上)
1200年に生まれた道元が目の当たりにしたのは、戦乱で焼け野原となった京都だった。バジラにとっては、21世紀のZ世代と13世紀の道元が重なって見えているのだろう。
■目指すべきは「唯我独尊状態」
それでは道元は、現在の社会・文化・国家・国民教育によって失われた自己がどうあるべきと考えたのだろうか。バジラによると「釈迦が誕生時に発した『天上天下唯我独尊』に戻し、これを基礎に釈迦の心身を構築すること」だという。今では自分勝手と否定的に用いられる「唯我独尊状態」こそ、自己再編集のターゲットであったはずだ。
その実現のための方法が『正法眼蔵』には詰まっている。「只管打坐」もその一つである。バジラが道元の方法を「自己確立・自己革新の方法」と述べた背景には、このような見方があったのだ。
こうした二十一世紀人(ジェネレーションZ)が20才を越えはじめた 2021年にこそ、『正法眼蔵』の輪読座の開座にふさわしいように思います。
(同上)
第1回の輪読座のテーマは「だれでもブッダ(覚者)として生きていける」。「2つの『正法眼蔵』」「道元の修行の三位一体」「釈迦から達磨に至る禅宗史」という切り口のバジラ高橋による図象解説の後に、仮名版の『正法眼蔵』を全員で輪読する。
なお、本日からスタートした輪読座だが、現在でもオンライン受講生を募集中である。第1回を逃した方も輪読座の専用ラウンジで資料や動画が公開されるのでキャッチアップできる。21世紀の今こそ「道元」の方法を。
【詳細】輪読座「道元を読む」ページへ
【申込】サテライト受講ページへ
輪読座で毎回共有される「図象」。バジラ高橋が構成した「概念曼荼羅」である。あらゆる歴史・文化・地理などあらゆる情報の状態をヴィジュアライズしたバジラの編集を実践できる。
輪読座で使用するテクストである寺田透らによる編集の『日本思想体系 道元(上・下)』(岩波書店)。松岡校長は千夜千冊エディション『本から本へ』の中で、「最初のうちは岩波思想体系をベースキャンプにしてきた」と記している。
(アイキャッチデザイン:阿久津健)
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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2025-12-02
{[(ゴミムシぽいけどゴミムシではない分類群に属している)黒い星をもつテントウムシに似た種]のように見えるけど実はその偽物}ことニセクロホシテントウゴミムシダマシ。たくさんの虫且つ何者でもない虫です。
2025-11-27
マンガに限った話ではないが、「バカ」をめでる文化というものがある。
猪突猛進型の「バカ」が暴走するマンガといえば、この作品。市川マサ「バカビリーバー」。とにかく、あまりにもバカすぎて爽快。
https://yanmaga.jp/comics/
2025-11-25
道ばた咲く小さな花に歩み寄り、顔を近づけてじっくり観察すると、そこにはたいてい、もっと小さな命がきらめいている。この真っ赤な小粒ちゃんたちは、カベアナタカラダニ。花粉を食べて暮らす平和なヴィランです。