中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
イシス唯一のリアル読書講座「輪読座」。「みんなで読めば怖くない」の精神でこれまで数々の難読古典にも挑戦してきました。4月27日からの新コースは、噂を聞きつけすでにあちこちから「これは受けたい!」という声があがっている『古今和歌集』と『新古今和歌集』の両読みです。
ナビゲーターをつとめる博覧強記の輪読親分・バジラ高橋を突撃して、今回の見どころを聞いてみました。
――『古今和歌集』も『新古今和歌集』も日本人なら誰でも知っているタイトルですが、実際に読んだことがある人は少なそうですよね。
バジラ:万葉の時代が終わったあとに政府が日本語で国家をつくろうと考え、歌を募集したんです。そうやってつくったのが『古今集和歌集』。平安文学は古今集なしには読めません。それから鎌倉幕府成立の前後につくられたのが『新古今和歌集』。ところで、なんで新古今っていうの?どこが”新”、”おニュー”なのか分かる?
――うーん、なんででしょう…。
バジラ:ひとことで言うと、バーチャルリアリティの出現。古典的な言葉で言えば幽玄の出現です。いま盛んにVRと言われているけど、あんなのとっくに新古今がやってたことなんだよね。
――800年前のVRですか。それは世阿弥にも通じる?
バジラ:『万葉集』は男女の言葉の区別がありませんでした。ところが、はじめて女性の言葉を使って文学にしたのが古今集。新古今になるとVRだから、もはや男とか女の話ではなくなっている。どうやって仮想現実世界を歌で表現するか、そこへ行っちゃった。これこそが、日本文学のある種の頂点をつくりだしていくわけです。その流れに世阿弥が出てきて、能にも展化していく。
――そういう文脈で見ると、遠い昔の古典が現代と結ばれていく感じがします。それにしても、前回の『古事記』『日本書紀』に続いて、今回も『古今和歌集』『新古今和歌集』の「両読み」。また大胆な試みですよね。
バジラ:古今も新古今も1,000首以上あるんだけど、部立てにあわせて抜粋しながら全巻を読んだ状態に持っていこうと思ってるの。そんなこと誰もやったことがないから、輪読師の僕としてもちょっと大変な挑戦なんだけども(笑)
――それはもう、バジラさんだからこそなせる業!
バジラ:古今集ってなに?新古今集ってなに?どうしてそれが”おニュー”なの?って言われても答えられない人が多い。それじゃあ日本語がなにか分からないと言っているのと同じなんだよね。日本語で表現できないと言っているのと同じ。
――ギクリ…
バジラ:だからこそみんなで一緒に読んでいこうというのが輪読座です。明治期には古今も新古今も否定された歴史があります。でも僕は人の意見を鵜呑みにするのが大嫌いでね。原典を自分で読んでみるのを大切にしたい。自由な発想を妨げるから輪読座は予習禁止にしているし、前提知識も一切不要。今回はまっさらな気持ちで古今と新古今をあわせて読むことで、ふたつのあいだにどんな変化が起こっているのか、どこが面白いのかがだんだんと見えてくるのを楽しんでもらいたい。
――そう言われると安心して受けられます(笑)
バジラ:それから、古今も新古今も、こういう枠組みで、こういう仕掛けで歌を編集しますという編集方針がきちんと残っている。それぞれの仮名序・真名序を比べるところからはじめて、歌を読み合わせながら、日本語とは何か、何を表現したかったのかの根本をみんなと一緒に探ってみたいと思っています。どうぞよろしく。」
* * *
誰もやったことがないことに挑戦するのはちょっと大変と言いながらも、「そんなことしてみたいと思うほうがおかしいかな?はっはっは!」と笑い飛ばしていたバジラ親分。松岡正剛とともに伝説の雑誌『遊』の創刊号から編集を手掛け、「『遊』を市場に定着させてくれたのは、高橋秀元君のおかげである」「偉大な東洋観念学徒である」(松岡正剛『編集宣言』工作舎、p.10)と松岡からの信頼も厚かった男は、きっと今回も圧倒的な両読み体験を用意してくれることでしょう。
最後に親分はこう言い残して去っていきました。
「Adoはねえ、新古今だよ。」
古典だけでなくトレンドにも妙に詳しいバジラから飛び出た「Adoは新古今」というキーワード。その種明かしがいつあるか分かりませんが、Adoの曲でも口ずさみながら未だかつてない『古今和歌集』『新古今和歌集』の両読みにぜひご参加ください。
“Hey you 一人じゃないのさ 眠れないのなら さあ 歌を歌おうぜ”(Ado/ロックスター)
●日時 全日程 13:00〜18:00
2025年4月27日(日)
2025年5月25日(日)
2025年6月29日(日)
2025年7月27日(日)
2025年8月31日(日)
2025年9月28日(日)
●受講資格 どなたでも、お申し込みいただけます。
●受講料
◎本楼リアル参加◎ 6回分 55,000円(税込)
◎オンライン参加◎ 6回分 33,000円(税込)
*リアル/リモートともに全6回の記録映像が共有されますので
急な欠席でもキャッチアップいただけます
●詳細・お申込はこちら
https://es.isis.ne.jp/course/rindokuza
★講座スタート後でもお申込みOK!見逃した回は記録映像でお愉しみください。
福井千裕
編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。
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コメント
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