2023年秋の[多読ジム season16]で、読衆(受講生)は、湯気が立った状態の「千夜千冊エディション」を手に取ることになる。9月末発売予定の『千夜千冊エディション 性の境界』だ。
少し中も覗いてみよう。
リン・マーグリス&ドリオン・セーガン『性の起源』で「性の多様性」を問い、ダナ・ハラウェイの『猿と女とサイボーグ』に「母・女・差別」を探る。オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』やジャン・コクトーの『白書』から「ゲイ感覚」を身体に通し、ブ・コゾフスキー・セジウィックの『クローゼットの認識論』やカミール・パーリアの『性のペルソナ』を通じて、「エロスとLGBTQ+」を傍らに置く。
私たちは、自分の中の潜む「性」や「性に対する概念」に無自覚だ。知らない世界も無数にある。『千夜千冊エディション 性の境界』体験は、あなたの境界を取り払うものになるだろう。
●オオタニを読む・ミトマを書く
いささか興奮して先走ったが、改めて[多読ジム season16]のラインナップを紹介しよう。
■season 16・秋(2023.10.9~12.24)ラインナップ
<1>ブッククエスト :50[守] 49[破] 先達文庫
<2>三冊筋プレス :アスリートの3冊
<3>エディション読み:『性の境界』 ←★最新刊!!
まずはウォーミングアップを兼ねて、リストから自分だけの本棚を編集する「ブッククエスト」。
今回は、今春の第81回感門之盟で、50[守]師範代、49[破]師範代に送られた「先達文庫」を扱ってもらう。
松岡校長が、どんな意図で選本したか。その思いをリバースエンジニアリングするのも面白いだろう。
選んだ3冊から創文を仕上げる「三冊筋プレス」、今回のテーマは、「アスリートの3冊」だ。
拳で勝負したモハメド・アリ(『モハメド・アリ――その生と時代』岩波現代文庫)。フットボールに「モダン」を持ち込んだヨハン・クライフ(『ヨハン・クライフ自伝 サッカーの未来を継ぐ者たちへ』二見書房)。イルカに最も近づいたジャック・マイヨール(『イルカと、海へ還る日』講談社文庫)、などなど。アスリートたちの“裸の”声を聞くのもいい。
スポーツノンフィクションにスポーツ系小説。スポーツ漫画にスポーツ評論。「不足」から身体を見る伊藤亜紗に、武道から思想を語る内田樹。いちいち名前は挙げないが、アスリート系の本は数多ある。作家だけではない。赤提灯ののれんをくぐれば、あちこちでミトマやオオタニが語られる。アスリートの躍動する身体が、私たちを揺さぶるのだ。
いまやアスリートたちに備わっている魅力も資産であろう。そんなことは棒高跳びのイシンバエワや、サッカーの三浦カズやゴルフの石川遼が才能と官能を一緒くたに自覚していることを思い浮かべてみれば、すぐに了解できることである。
千夜千冊1490夜『エロティック・キャピタル』(『千夜千冊エディション 性の境界』所収)
●裸で「読書」を鍛える
「性」に「アスリート」。[多読ジム season16]は身体性にカーソルが当たっているが、これは「ジム(gym)」本来の意義に立ち返ったともいえる。
ジム(gym)のおおもとをたどると、「ギュムナシオン(gymnasion)」に行き着く。これは古代ギリシャのスポーツ訓練施設のことで、「裸の~」を意味する「gymnos」から派生した。つまり「ジム」とは、始原を探れば、「裸で鍛える場所」だったのだ。
ギュムナシオンで鍛えていたのは裸の肉体だけではない。ここでは、哲学、文学、音楽の講義や討論も行われた。まさに「多読ジム」ではないか。
そもそも読書自体が、身体的なのだ。
プラトンはレスリングの選手だったし、寺山修司は終生ボクサーに憧れた。晩年の三島由紀夫は肉体改造に励んだ。肉体と精神は線で結ばれている。
松岡校長はいう。
読書ってアスリートみたいなところがあるんです。多読はしかも、100メートルとか400メートル競技というより、十種競技のようなところがあって、ゲームのルールもちがう。だから、ほっておけばカラダがなまるように、アタマもなまる。
『多読術』
読書はスポーツとも似ているんです。ふだんからメンタルとフィジカルを鍛えておくと、より本との付き合い方が上手になる。まずフィジカルを鍛えるには、本を体になじませることです。
「NIKKEI 松岡正剛の読書術」
アスリート的読書体験、[多読ジム season16]は、10月9日より始まる。
Info
◉多読ジム season16・秋◉
∈START
2023年10月9日~12月24日
※申込締切日は2023年10月2日
∈MENU
<1>ブッククエスト :50[守] 49[破] 先達文庫
<2>三冊筋プレス :アスリートの3冊
<3>エディション読み:『性の境界』 ←★最新刊!!
∈URL
https://es.isis.ne.jp/gym
∈DESIGN the eye-catching image
角山祥道
編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama
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