◆2日目:12月11日(日)
AIDA大阪合宿2日目は、安藤礼二さんの案内で四天王寺(大阪市)を訪れるところからスタートする。
聖徳太子と縁のある四天王寺は、死と再生のお寺でもある。寺は海に面しており、春分・秋分の日には大門から一直線のところで太陽が水平線の彼方に沈む。そのことから極楽浄土に往生することを願う人が四天王寺に集ったと言われる。死が再生につながり、芸能が生まれる場所で、一行はかつてこの地に集まった”願う人”に気持ちを重ねながら境内を巡る。折口信夫はこの四天王寺からほど近いところで生を受けた。
午後は近畿大学に戻り、アカデミックシアターのモノづくりスペース「THE GARAGE」にてオープニングセッションが始まる。ガラリと場所を変えて、一気に折口信夫からアムロ・レイの世界へ。
2日目は2階「DONDEN」がメイン会場となる。11のエリアに2万冊以上の漫画と、漫画に関連する文庫・新書が並ぶ。蔵書数は4万冊にのぼる。マンガを入り口にして近大生を知の世界に呼び込み「知のどんでん返し」をおこしたいという狙いがネーミングの由来である。フロアを巡るDONDENツアーでは現役近大生も案内役として熱弁をふるう。むかし夢中になった漫画たちと思わぬ再会を果たし、たちまち少年少女になる座衆一行。
実はこの日、エディストライターの堀江純一も会場に駆けつけていた。皆がDONDENを巡る間、黙々と「LEGEND 50」エリアで即興模写に励む。堀江はここ「LEGEND 50」で漫画家 田中圭一さんとのセッションにも出演したことがある編集学校きっての”マンガの人”である。
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フロアを一巡りした後は、DONDEN「菊と刀の大日本」エリアで安彦良和さんによるゲストセッション。この時間帯以降、近大生がオンライン視聴できる”DONDENマンガフェス2022″生配信がスタートした。
「日本の漫画は記号化している」安彦さんがツルツルのホワイトボードにアムロとシャアを例に描き始めると会場から思わず「おぉ」とどよめきが起こった。1粒の汗を描けばそれだけで感情表現ができる。吹き出しひとつとっても同じだ。その形や台詞の書体を変えることで色々なことが表現可能となる。漫画における日本独特の記号表現に触れながら、そのルーツには北斎漫画があると紐解く。最後に「60分じゃ足りなかったな」とにっこり呟いた頃には、みなすっかり安彦ファンになっていた。
オンライン生配信もまだまだ続く。次は「LEGEND 50」エリアでのDONDEN読みバトルだ。DONDEN読みとは漫画×文庫×新書の三冊をあわせ読みすることをいう。AIDA座衆と近大生からそれぞれ4名の代表者が立ち、読みを競うバトルを繰り広げる。審査員はゲスト講師のお二人。
バトルには、AIDA座衆代表として[破]師範 戸田由香と、近大生代表として千離衆 南田桂吾も参戦した。戦いは拮抗し、大波乱バトルに!勝敗は最終戦にまでもつれ込み、結果2勝2敗の完全引き分けという想定外の結末となった。
安彦良和さんが選ぶ最優秀賞に輝いたのは、近大生でありISIS編集学校卒門者の伊串和真さん。「自分は近大の犬である」と語った伊串さんに「王道の狗になってほしい」と安彦さんから激励のメッセージが贈られた。
いよいよ、合宿もグランドフィナーレである。最終プログラムは、安彦さん、安藤さん、座長松岡による鼎談で2日間を振り返る。
話は、SNS時代における祝祭性から、本や知との出会い方について展開していった。終盤、ゲストのお二人が向かわれている「顕われること」をキーワードに、座長から問いが向けられると、安藤さんは「どこか遠いところではなく、一番近いところで何かが顕われる」と考古学の見地から語り、安彦さんは「視覚的に入ってきたものから描きたいというきっかけがある」と描くことへの動機について触れた。「私の仕事はどうしたら出現させられるのか。その顕れにほぼ関わってきた」とは座長松岡の言葉。
[AIDA]も顕れを起こすトポスともいえよう。折口もアムロも、神も仏も、日本語もしるしも、あらゆるものが顕れたこの2日間。静かな興奮に包まれたまま、大阪合宿は幕を閉じた。
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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