願掛けは肖り本に 2023年 新年会10shot

2023/01/12(木)12:07
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 初詣で引いたおみくじの結果を正確に覚えている人は実はあまりいないだろうと思う。しかし、1冊の本に込めた願いは忘れ難いものがある。

 編集工学研究所・松岡正剛事務所の新年会が、2023年1月6日(金)に開催された。今年もそれぞれ2023年の抱負をこめて年末年始に読んだ本を持ち寄りながら、新年への思いを共読する。

 

花伝所長 田中晶子のしつらえで本楼に新春がおとずれる。シンとする空気の中、お屠蘇の乾杯で新年会がひらかれる。

 

新年に向けて、スタッフに期待することを年末の紅白歌合戦とも重ねて手渡していく松岡正剛。今年自身が新たに始めるコトについてもチラリと予告があった。

 

新年会は1冊の本に託して今年の抱負を語りあう「肖冊会(shosatsue)」がメインプログラム。今回の進行は、黒膜衆を率いながらイベントの演出も手がける衣笠純子と、昨年15[離]で典離し、「多読SP村田沙耶香を読む」でも特別賞を受賞した山本春奈。飛ぶ鳥を落とす勢いのある二人が務める。

 

「今年は仕上げに向かいながら、皆に手渡していきたい」意気込み新たにする林頭 吉村堅樹が選んだのは『折口信夫論』(松浦寿輝/ちくま学芸文庫)。「起源に遡りながら新たな言葉を編集学校を通じながら考えていきたい」2023年はどんな仕掛けを考えているのか。今後の動向は「おつ千」で随時キャッチを!

 

エッセイ集『ラディカルな意志のスタイルズ』(スーザン・ソンタグ/河出書房新社)を抱えてきた穂積晴明。「この時代にどういう方向性で進んだらいいのか、それは編集にある。それを新しいスタイルとして昇華したい」と言い切り、穂積流デザイン宣言4箇条を掲げた。

 

一人ひとりの肖りたい思いを受けて、一人ひとりへ言葉をかけていく。労い、期待、助言を織り交ぜながら、場をあげていく。

さて、年末の千夜千冊は1813夜『アレゴリー』で締め括られたが、年始1冊目はどんな本が放たれるのか?今はその公開が待たれる。

 

読者の皆さんは2023年の肖り本にどんな1冊を選ぶだろうか?新年のお題として、決意の1冊を周りの人たちと持ち寄って共読してみることをお勧めしたい。きっと、2023年のお守りになってくれるだろうと思う。

 

 

本と、スタッフと、記念撮影。

 

  • 後藤由加里

    編集的先達:石内都
    NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-07-01

発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。