【Playlist】玄氣で侠氣な九天7選(選:中野由紀昌)

2022/01/25(火)22:30
img LISTedit

守破離という編集の道筋に学びつつ、九州を旗印に掲げて活動する「九天玄氣組」。義理と人情を秤にかけりゃ圧倒的に人情が勝るが、やると決めれば鬼にも化すし仁義も通す。しかし侠気めいた九天の生態を知る者はどれだけいるのだろう。風の噂で「九州支所が熱い」としか聞いたことのないエディストのために、九天の片鱗が詳らかになる「玄氣で侠気な九天7選」を組長の中野由紀昌がセレクトした。

 

玄氣で侠氣な九天7選(選:中野由紀昌)

【1】「炭男」を言祝ぐ【九天玄氣組年賀2022】

【2】松岡校長を唸らせる内倉須磨子マジック〈九天組長インタビューfile4〉

【3】タモリとセイゴオ対談本から40年 [九天玄氣組 年賀2021]

【4】松岡校長の「義理人情」フルスロットルで倍返し!〈九天玄氣組〉

【5】セイゴオフィルターで九州を読み解け!~千夜郷読会はじまる~

【6】「落花狼藉オトコ」九州を急襲【75感門 九州】

【7】まだら、まんだら、九天玄氣組。

 

 

 なんと半分以上が松岡校長への年賀関連記事である。遊刊エディストのネタにしやすいからでもあるが、決して年賀を作るだけが九天の活動ではないと、組長としてあらかじめ念押ししておきたい。

 

 そうはいっても、発足時の2006年から毎年欠かさずお届けしてきた九天にとって、年賀編集は活動の原点である。全組員総出で取り組む年賀編集は正月を迎えるための編集稽古であり、祝砲だ。なにしろ目利きの松岡正剛への贈り物。そんじょそこらの年賀状じゃ微笑んでもらえるはずがない。毎年あの手この手でアクロバティックなお題を練りあげる。お題を受け取った組員たちは「そんなことやるの!?」と一瞬ひるむものの、最後は見事にやってのけるのだから、うちのクミインは構えが違うのだ。そのたびに組長は九天の秘めた力に期待を膨らませ、毎年容赦なくハードルを上げていく。「ちょっとやりすぎ?」とセーブしようと微塵にも思わないのが組長の怖いところ。だってほら、九天はもっと遠くへいきたいじゃない。

 

 過去16年、どんな作品を作ってきたのか。

 まずは発足前の2004年から2017年までの年賀作品は【2】で紹介。内倉須磨子さんの手わざが光る九天年賀作品がずらりと並んで壮観だ。2018年以降は校長の著書に肖るBOOKシリーズだが、なかでも2021年の『密の傾向と対策』はタモリにはじまり頭山満、宮崎滔天、柳原白蓮ら九州人に扮する擬きオンパレード。「九天はなにをしでかすかわからん!」と学校中をざわつかせた異色の年賀となった【3】。2022年の新作は【1】で。松岡校長も自称する「炭男」をテーマに、句集とラジオ番組を編集するという新スタイルにも挑戦した。

 

 しかし贈る側は勝手なもの。「どうお礼をすればいいか」と松岡校長を毎年悩ませていたと知り愕然としたのは、コロナ・パンデミック直前の2020年2月、松岡校長が福岡でお礼の会をセッティングしてくださった時だ【4】。義理を人情で包み込む松岡正剛の背中に、唐獅子牡丹が浮かんで見えたのは組長だけではなかったはずだ。

 

 九天を九天たらしめんとするのは、九州人の気質にも要因があるのかもしれない。その一端を垣間見る記事が【6】。感門之盟の九州会場に、突然東京からすっ飛んできた落花狼藉オトコ・齋藤成憲師範代(師範)を迎えた時の顛末を取り上げている。

 

 

「日々是玄氣」な九州編集エディスト集団

 そうして年に一度、松岡校長との芳しき年始挨拶の交歓で玄氣をフルチャージしたあとは、それぞれの故郷九州を掘り起こしていく。2020年4月緊急事態宣言発令後には、すぐさまオンラインで千夜千冊の郷読会を開き、地縁を手繰り寄せながら九州の読み解きに没頭した【5】。現在は緊迫感漂う台湾に焦点を当て、歴史を掘り起こしながら、多角的な視座を学ぶ「舜天海談話会」も宮坂千穂さんの号令で開かれている。朱舜水に連環するアジアの旅路だ。

 

 組長の目標は、九天20周年を迎える2026年までに、九州をテーマとした松岡正剛×九天玄氣組の書籍を刊行することである。もちろん年賀のようなプライベート・メディアではない。昨秋のキックオフミーティングで松岡校長に示された指南をもとに、あれこれ挑んでいく。

 

 以上、遊刊エディストの記事をもとに活動の一端を辿った。現在、総勢47名【7】。イシス編集学校の辺境で燃え続ける燠火ingな九天玄氣組、どうぞお見知りおきを。

 

(写真:吉田麻子・出崎由美子)

 

2022年の年賀番組収録へ向かう前に集合したのは熊本市の玄米パン屋「玄氣堂」。入江雅昭さん(左から2人目)の建築。(パン屋と九天は無関係です)

 

 

  • 中野由紀昌

    編集的先達:石牟礼道子。侠気と九州愛あふれる九天玄氣組組長。組員の信頼は厚く、イシスで最も活気ある支所をつくった。個人事務所として黒ひょうたんがシンボルの「瓢箪座」を設立し、九州遊学を続ける。

コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-30

エディストの検索窓に「イモムシ」と打ってみたら、サムネイルにイモムシが登場しているこちらの記事に行き当たりました。
家庭菜園の野菜に引き寄せられてやって来る「マレビト」害虫たちとの攻防を、確かな観察眼で描いておられます。
せっかくなので登場しているイモムシたちの素性をご紹介しますと、アイキャッチ画像のサトイモにとまる「夜行列車」はセスジスズメ(スズメガ科)中齢幼虫、「少し枯れたナガイモの葉にそっくり」なのは、きっと、キイロスズメ(同科)の褐色型終齢幼虫です。
 
添付写真は、文中で目の敵にされているヨトウムシ(種名ヨトウガ(ヤガ科)の幼虫の俗称)ですが、エンドウ、ネギどころか、有毒のクンシラン(キョウチクトウ科)の分厚い葉をもりもり食べていて驚きました。なんと逞しいことでしょう。そして・・・ 何と可愛らしいことでしょう!
イモムシでもゴキブリでもヌスビトハギでもパンにはえた青カビでも何でもいいのですが、ヴィランなものたちのどれかに、一度、スマホレンズを向けてみてください。「この癪に触る生き物をなるべく魅力的に撮ってやろう」と企みながら。すると、不思議なことに、たちまち心の軸が傾き始めて、スキもキライも混沌としてしまいますよ。
 
エディスト・アーカイブは、未知のお宝が無限に眠る別銀河。ワードさばきひとつでお宝候補をプレゼンしてくれる検索窓は、エディスト界の「どこでもドア」的存在ですね。

堀江純一

2025-06-28

ものづくりにからめて、最近刊行されたマンガ作品を一つご紹介。
山本棗『透鏡の先、きみが笑った』(秋田書店)
この作品の中で語られるのは眼鏡職人と音楽家。ともに制作(ボイエーシス)にかかわる人々だ。制作には技術(テクネ―)が伴う。それは自分との対話であると同時に、外部との対話でもある。
お客様はわがままだ。どんな矢が飛んでくるかわからない。ほんの小さな一言が大きな打撃になることもある。
深く傷ついた人の心を結果的に救ったのは、同じく技術に裏打ちされた信念を持つ者のみが発せられる言葉だった。たとえ分野は違えども、テクネ―に信を置く者だけが通じ合える世界があるのだ。

山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。