中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
松岡正剛いわく《読書はコラボレーション》。読書は著者との対話でもあり、読み手同士で読みを重ねあってもいい。これを具現化する新しい書評スタイル――1冊の本を3分割し、3人それぞれで読み解く「3× REVIEWS」。
さて皆さん、とつぜんですが疲れてはいませんか? 異常気象に対人ストレス、デジタル疲れ……。現代病に特効薬はありませんが、心と体の「弱さ」は編集のパワフルなトリガーになります。弱さを軸にすれば、ケアの世界と編集稽古は驚くほど似ている。今回は〈ケアをひらく〉シリーズの名編集者、白石正明氏による初の著書、その名も『ケアと編集』を取り上げます。
●●●〝「傾き」への肯定〟で3× REVIEWS
3× REVIEWSのツール・ロール・ルール
◆本:『ケアと編集』(岩波新書)
◆読み手:高田智英子/吉居奈々/羽根田月香
◆ルール:1冊の本を3分割し、それぞれが担当箇所だけを読み解く
●1st Review
Ⅰ いかにして編集の先生に出会ったか
Ⅱ ズレて離れて外へ
「問題」に別の光を与える
●2nd Review
Ⅲ ケアは現在に奉仕する
Ⅳ ケアが発見する
Ⅴ 「受け」の豊かさに向けて
Ⅵ 弱い編集――ケアの本ができるまで
あとがき
『ケアと編集』
白石正明著/岩波新書/2025年4月18日発行/1056円
■目次
Ⅰ いかにして編集の先生に出会ったか
1 ケアとは
2 べてるの家との出会い
3 編集の先生
Ⅱ ズレて離れて外へ
1 問いの外に出ざるを得ない人たち
2 分母を変えるのが編集
3 吃音者は分母を変えて生きていく
4 面と向かわない力
Ⅲ ケアは現在に奉仕する
1 ケアと社交
2 消費と浪費と水中毒
3 今ここわたし
4 ナイチンゲールを真に受ける
Ⅳ ケアが発見する
1 原因に遡らない思考
2 手を動かすより口を動かせ
3 同じと違う
4 いつも二つある
Ⅴ 「受け」の豊かさに向けて
1 蘭の花のように愛でる
2 受ける人
3 いい「波」はどこから来るか
4 受動性と偶然性
Ⅳ 弱い編集――ケアの本ができるまで
1 山の上ホテルのペーパーナプキン――中井久夫・山口直彦著『看護のための精神医学』
2 魔法と技術のあいだ――本田美和子、イヴ・ジネスト、ロゼット・マレスコッティ著『ユマニチュード入門』
3 弱いロボットの吸引力――坂口恭平著『坂口恭平 躁鬱日記』、岡田美智男著『弱いロボット』
あとがき
主な参考文献
■著者 Profile
しらいし・まさあき/1958年、東京生まれ。青山学院大学から中央法規出版を経て1996年に医学書院入社。1998年に雑誌『精神看護』を、2000年に〈ケアをひらく〉シリーズを創刊。同シリーズは50冊を数え、川口有美子『逝かない身体』が大宅壮一ノンフィクション賞(2010年)、熊谷晋一郎『リハビリの夜』が新潮ドキュメント賞(2010年)、六車由実『驚きの介護民俗学』が日本医学ジャーナリスト協会賞(2013年)、國分功一郎『中動態の世界』が小林秀雄賞(2017年)、東畑開人『居るのはつらいよ』が大佛次郎論壇賞(2019年)、鈴木大介『「脳コワさん」支援ガイド』が日本医学ジャーナリスト協会賞(2020年)を受賞。シリーズ自体も2019年に毎日出版文化賞を受賞した。2024年3月に定年退職。初の著書を上梓し、既存の価値観をくるりと覆す「弱い編集」を実践し続けている。
●●● いかがでしたか? ケアの漢方薬で今夏も乗り切りましょう!
■■■これまでの3× REVIEWS■■■
前川清治『三枝博音と鎌倉アカデミア』×3×REVIEWS(勝手にアカデミア)
四方田犬彦編『鈴木清順エッセイコレクション』×3×REVIEWS(勝手にアカデミア)
エディストチーム渦edist-uzu
編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。
震える足で、越えていく――西岡有美のISIS wave #61
この秋、イシス編集学校の基本コース[守]の師範代として登板する西岡有美さん(56[守]ピノキオ界隈教室)。西岡さんは、[守][破][花]の講座を渡る中で、イシス編集学校で大切にしていることと自分が好きなことの共通点に気づ […]
型をもって「難民」を語れば――田中志穂のISIS wave #60
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 イシス修了生による好評エッセイ「ISIS wave」。今回は、55[守]山派レオモード教室の師範代を終えたばかりの田中志穂さんの登場 […]
意味の世界を生き抜く方法――菅野隼人のISIS wave #59
「それってなんなの?」。菅野隼人さんは常に「問い」を見つけ、「問い」を深めています。「問い」好きが高じて、「それ哲ラジオ」というポッドキャスト番組を始めてしまったほどです。 そんな菅野さんがイシス編集学校と出会いました。 […]
イシスの「指南」はあったかい――木島智子のISIS wave #58
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 木島智子さんは、56[守]に初登板する師範代の卵だ。しかし自分が師範代になるなんて思ってもいなかったと振り返る。木島さんを変えたもの […]
イシスの学びは渦をおこし浪のうねりとなって人を変える、仕事を変える、日常を変える――。 [守]学衆・板垣美玲のプロレス好きは、回答からダダモレしていた。〈ことわざ〉を擬く稽古では「孫にドロップキック」。〈見 […]
コメント
1~3件/3件
2025-10-29
中二病という言葉があるが、この前後数年間は、”生きづらい”タイプの人にとっては、本格的な試練が始まる時期だ。同時に、自分の中に眠る固有のセンサーが、いっきに拡張し、世界がキラキラと輝きを放ちはじめる時節でもある。阿部共実『月曜日の友達』は、そんなかけがえのない瞬間をとらえた一編。
2025-10-28
松を食べ荒らす上に有毒なので徹底的に嫌われているマツカレハ。実は主に古い葉を食べ、地表に落とす糞が木の栄養になっている。「人間」にとっての大害虫も「地球」という舞台の上では愛おしい働き者に他ならない。
2025-10-20
先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。