「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
10代のリミックス
感門之盟のタブロイド記念紙の巻頭文を書くにあたって、まずテーマである「リミックス」を【コンパイルとエディット】した。辞書にあたったり、記憶をたどったりしたあと、長男(14)にもリミックスという言葉から 何を連想するかを買い物の道すがら聞いてみた。
即答で、「リミックスといえば音楽動画」と返ってきた。
イベントを盛り上げるための企画として、楽曲の元データがニコニコ動画等のプラットフォームから配布される。当日は、プロ、アマチュア問わず、いろんな人が動画をあげ、記録的な投稿数になったりする。あの曲がこうなったのかと楽しむだけでなく、リミックスする作り手の「らしさ」を感じとったりしながら、いろんなバージョンを聞き比べ、感想コメントを読む。リミックス・コンテストも開かれる。
長男は日々投稿される動画を自宅で、すべてネット経由でチェックしている。デジタルツールとリミックス文化はほとんど不即不離だとあらためて知る。
感門之盟の司会は世界史の先生
幼い頃は野菜という色と形のあるものに興味が集中していたが、音楽と並んで時間を使うようになってきたのがニュースだ。新型コロナウイルスの感染拡大のあたりから本格的に新聞を読むようになり、ウクライナ侵攻以降はニュースだけでなく分析記事まで読むようになった。
今回もオンラインで参加した感門之盟の2日目、司会の新井陽大師範の冒頭の言葉を聞いたときは、食卓で別の作業をしていた長男にすぐ話してみた。
高校の世界史の先生である新井陽大師範(右)。左は若林牧子番匠
専門が東欧史で、注意のカーソルの先はポーランド、ウクライナにまたがる地域の中のユダヤ文化であること。とりわけヘブライ語から生まれたイデュッシュ語と地域に溶け込んでいったユダヤ文化の変容に関心があり、現在のウクライナ西部にある都市リビウに史料収集に訪れた経験があること。
「それは、本当にすごい」。
ふだんは高校の世界史の先生をしているんだってと伝える。
一緒に司会をしている若林牧子番匠は野菜をお仕事にされていて、特に根っこが大好きらしいとというと「そこなんだ」と頬を緩めた。
イシスには、つまり社会には、いろんなプロフィールを持つ人がいるということを、いつでも言いたくなる。
デジタル時代の学び方
感門之盟の翌々日、ウクライナのゼレンスキー大統領によるオンライン国会演説があった。普段は夜10時を過ぎてから帰宅する夫が、この日はリアルタイムで見るために夕方6時前に帰ってきた。夕食を作る手をとめて3人でテレビを見る。
2022年3月23日午後6時のリビング
ネットがつながりつづける戦争なんて想像もしていなかったとつぶやくと、長男が「インターネットは中立だから、どんなことがあっても完全にとめるのはむずかしいはず」という。
10分あまりの演説が終わり、フキノトウの天ぷらを揚げ始める。
夫が、イギリスでの演説はチャーチルを引用していてよかったけど今日は抑え目だったと感想を言う。
長男は学校を離れていることもあり、まだ歴史の学習を体系的にやったことがない。そろそろ気になってきたらしく、NHKの『映像の世紀』を録画して見たりしている。
天ぷらを食べながら、いったい、君は歴史をどうやって学んでいったらいいんだろうねと尋ねてみると「点をつなげていくのがいいのかな」という答えが返ってきた。
4月の子どもフィールド千夜千冊共読会では1764夜『ホモ・デジタリスの時代』を読む。さまざまに編集された情報が次々にお茶の間に飛び込んでくる時代の学び方について、オンラインで集い、読み、考える。
デジタルツールとの付き合い方だけではなく、歴史の学び方もテーマとして浮上してきた。現役のセンセイも誘ってみよう。いつかは大人と子どもで共読するバージョンもやってみたい。
松岡校長メッセージ「リミックスな三毛猫になりなさい」
『アレクセイと泉』
本橋成一/小学館
写真家・本橋成一氏の「チェルノブイリ三部作」の一つ。
国境近くのベラルーシの村での日常生活が切り取られている。
写真(スクリーンショット)協力:新井陽大、高橋陽一
松井 路代
編集的先達:中島敦。2007年生の長男と独自のホームエデュケーション。オペラ好きの夫、小学生の娘と奈良在住の主婦。離では典離、物語講座では冠綴賞というイシスの二冠王。野望は子ども編集学校と小説家デビュー。
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