「子どもにこそ編集を!」
イシス編集学校の宿願をともにする編集かあさん(たまにとうさん)たちが、
「編集×子ども」「編集×子育て」を我が子を間近にした視点から語る。
子ども編集ワークの蔵出しから、子育てお悩みQ&Aまで。
子供たちの遊びを、海よりも広い心で受け止める方法の奮闘記。
それは一瞬の出来事だった。
空を切る気配に続くガタンッという音の後、ディスプレイに映っていたイシス子ども支局メンバーの姿がフッと消えた。
視線を下に向けると、キーボードの上に広がる水たまり。
その日、WEB会議中に膝に抱いていた娘が倒したコップの水によって、2012年冬のボーナスで購入したMacbook Airとの突然の別れが訪れた。
広島エディットツアーで「コップは何に使える?」ワークをしたときの桂大介師範の言葉が呼び起こされる。
「子どもはとても自由にものをみているんですよね」
ああ、確かに自由だ。
「母親のノートパソコンを破壊する」なんて使い道が、コップにあると思っていなかった。
「コップは何に使える?」といえば、イシス編集学校[守]の最初のお題だ。
私も二度の師範代登板で、計18名の学衆さんのコップの使い道に指南をお届けした。
しかし今まで触れてきた「コップ」回答を「親の目」で眺めると、実は少なからず「コップをこう使ってほしくない」回答があることに気づく。
・ストレス解消のために投げつける
→割れるから投げないで!
・割って武器に
→危ないから割らないで!
・虫を閉じ込める
→出来ればね、飲み物以外はね、入れないでほしいな…
こんな指南が届いたら学衆さんもびっくりである。
「コップ」の指南をお届けする際に、たびたび使ってきた言葉がある。
「「どんなコップか」によって、「何ができるか」は動きます」
コップを変えれば、出来ることも出来ないことも変わる。
そう考えながら娘に与えている乳児向けのコップを見ると、親が考える「やってほしくない」が詰まっている。
素材は軽いシリコンで、落としたりぶつけたりしても割れないし、ダメージも小さい。
吸ったときだけ中の液体が出てくる蓋がついていて、傾けたり振り回してもこぼれない。
蓋のおかげで子どもがカップの中にものを入れることもしにくい。
子育ての先輩たちの、数多の「やめて~」という叫びの果てに得た知恵が結集されているのだろう。
先達たちの経験から得た知恵をありがたく享受する一方で、ふと思う。
もちろん危険は取り除かなければならない。
でもコップで出来ること、出来ないことを頭の中でイメージする力が過去の経験から得られているのであれば、最初から使い道が限られたコップを与え続けると、娘の「経験に支えられた想像力」は制限されるのだろうか。
最初から望ましい使い方だけが出来るものを用意するのか、多少の「やっちゃった」や「危ない」を覚悟しても多様な使い道を探らせるのか。
娘が大きくなっても、その塩梅にはずっと悩み続けるのかもしれない。
それこそ電子機器はいつから使わせるのか、使わせるならネット閲覧にフィルターはかけるのか、なんて考えるのだろうか。
そんな少々気が早いかもしれない想像は、娘が落としたシリコンカップが足の指に当たって打ちきられる。
怪我はしないが、当たり前に痛い。
親の「してほしい」も「してほしくない」も彼女は軽々超えていくのかもしれない。
浦澤美穂
編集的先達:増田こうすけ。メガネの奥の美少女。イシスの萌えっ娘ミポリン。マンガ、IT、マラソンが趣味。イシス婚で嫁いだ広島で、目下中国地方イシスネットワークをぷるるん計画中。
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