豆から挽いた珈琲が落ちるのを待つ香ばしさ。2014年のイシス編集学校[遊]風韻講座の座名は珈琲座だった。エディットカフェに座を覗きに帰ると、旧かな遣ひで五七五に遊んだ時間をそのまま味わえる。
編集学校の教室、とりわけ風韻講座は座に連なることの愉しさを教えてくれた。小池師範の意匠の凝らされた稽古はどれも芳しかったが、白眉は連句だ。ふだんの会話では条件反射的に放って、自分と相手のあいだでひとりぼっちにさせてしまいがちな言葉。連句では、誰かの言葉のむこうにどんな空間が広がっているかをイメージして、そこに分け入るあいだに自分はなにを言葉にしてどんな新しい空間をつくるか思い巡らす。
また次の誰かが自分のつくった空間の襖を開けて、となりに新たな部屋をつくる。連句が巻き終わると、ひとりでは決して訪れることのできなかった景色が立ち上がっている。頭の中で飴玉のように吟味した季語とともに、連句を巻くあいだに体が感じた季節が折り重なっている。
風韻講座の連句の経験が忘れられなくて、今も相部礼子師範、大塚宏師範代が捌き手となりFacebookで連句を巻き続けている。SNSに場を移した連句の名は、芭蕉翁の発句から名づけた、薄紅葉の巻。講座が終わっても、一座は続く。
林 愛
編集的先達:山田詠美。日本語教師として香港に滞在経験もあるエディストライター。いまは主婦として、1歳の娘を編集工学的に観察することが日課になっている。千離衆、未知奥連所属。
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