【特集】ETS群島リレー22@金沢 わび・さび・すさびを編集する

2019/10/13(日)08:28
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 縁側と中庭と畳敷き。「わび・さび・すさびの編集術」のテーマにふさわしく、オープン間もない金沢町家アートスペース be金沢が会場に選ばれた。ひがし茶屋街からすぐ近くの立地だ。

 

 

 この部屋にある「さび」を集めてください。2019年8月12日、エディットツアースペシャル金沢には、小6からおばあちゃんまで、風流人11名が駆け付け、こんな問いからはじまった。

 

 さび(寂び)とは、ひっそりと落ち着いた現象にひそむ寂しさと、それに対応した感情にひそむ寂しさがまじること。小上がりの和室はガランとして、ちゃぶ台が1つあるだけなのだが、編集フィルターを使えば、次々と「さび」が集まった。

 

 開けにくそうな小窓 / 土間のひび割れ / 行灯のやわらかい光 / 黒くなった柱 / 庭の古めかしい壺 / ボソボソと落ちていく蚊取り線香 / 畳のにおい / 中庭で風化した樹皮 / あと何度聞けるか分からない蝉の声…。「この部屋から見える”さび”」を集めたのは少しルール違反だが、内外の境界が曖昧な町家ならではの情報収集であった。

 

 「わび・さび・すさび」の後には、数寄者が好む「やつし」も紹介された。クラッシュデニムもその一例である。わざと見すぼらしくする、あえて劣ったようになってみる、という日本文化の美意識のことをいう。「やつし」を表現しきっているのは、ジュリー、清志郎、それからエレカシの宮本だ。

 

 「やつし」が分かった小6は好んで髪をグシャグシャにした。


  • 八田英子

    編集工学を世界に広めるために編集工学研究所に入所した元SE。不適な笑みを湛えながら、問答無用でばさばさと人を斬りまくる。編集的先達は沢田研二。

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-10-02

何の前触れもなく突如、虚空に出現する「月人」たち。その姿は涅槃来迎図を思わせるが、その振る舞いは破壊神そのもの。不定期に現れる、この”使徒襲来”に立ち向かうのは28体の宝石たち…。
『虫と歌』『25時のバカンス』などで目利きのマンガ読みたちをうならせた市川春子が王道バトルもの(?)を描いてみたら、とんでもないことになってしまった!
作者自らが手掛けたホログラム装丁があまりにも美しい。写真ではちょっとわかりにくいか。ぜひ現物を手に取ってほしい。
(市川春子『宝石の国』講談社)

川邊透

2025-09-30

♀を巡って壮絶バトルを繰り広げるオンブバッタの♂たち。♀のほうは淡々と、リングのマットに成りきっている。
日を追うごとに活気づく昆虫たちの秋季興行は、今この瞬間にも、あらゆる片隅で無数に決行されている。

若林牧子

2025-09-24

初恋はレモンの味と言われるが、パッションフルーツほど魅惑の芳香と酸味は他にはない(と思っている)。極上の恋の味かも。「情熱」的なフルーツだと思いきや、トケイソウの仲間なのに十字架を背負った果物なのだ。謎めきは果肉の構造にも味わいにも現れる。杏仁豆腐の素を果皮に流し込んで果肉をソース代わりに。激旨だ。