私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。

「エッキョウ汁講」。46[守]襟足バンビ教室師範代、尾島可奈子が願いと決意を込めたネーミングだ。
開講以来、学衆の回答を丁寧に掬い続けてきた。指南はもちろん、囁くような声も聞き逃さず勧学会に共読の場を立ち上げた。稽古はお題を重ねるごとに深まっていた。しかし第1回番選ボードレールには悔いが残った。もっともっと、バンビのようにジャンプできたのではないかと。
汁講は過去をエッキョウ・今とエッキョウ・未来へエッキョウの三間連結仕立て。稽古を振り返り、互いのつながりを深めるためのワークが準備されていた。お菓子や動物に喩えての他己紹介では、金平糖や水ようかん、トラやパンダが飛び出した。担当師範の武田英裕は教室を「たべっ子どうぶつ」に喩えた。「いろんな動物がいるバンビの森、みなさんは動物から神獣に進化できるはず」の言葉に、それぞれの気持ちが引き出された。番ボー講評に選ばれなかった悔しさ、逃げ場をつくっていたことへの気づき、師範代への申し訳なさ。過冷却の水に小さな振動が加わると一瞬で氷柱が出現するように、教室に蓄積されていたエネルギーが一気に結晶化した。全員の気持ちの震えが合わさって相転移が起きた瞬間だった。
尾島は汁講を「決起集会」と結んだ。師範代の目に光る涙を学衆は見逃さなかった。年が明け、第2回番ボーでの襟足バンビ教室の活躍は目を見張るものだった。回答と指南のスレッドは長く伸び、エントリーした全員が入選・入賞を果たした。武田は驚嘆の賛辞を贈った。
2月の第2回汁講プランは学衆が組み上げ、[破]だけではなく、[花伝所]へ、師範代へ、編集の人生へと向かう対話が飛び交った。
教室みんなの力で壁も境も乗り越え、バンビは神獣となった。跳躍はもう止まらない。
武田師範による汁講のイラスト。似ているだけではなく、各自の最高の笑顔を捉えている。2回目の汁講には[破]植田フサ子評匠と[花伝所]深谷もと佳花目付が駆けつけ、編集する人生を垣間見せてくれた。
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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コメント
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2025-07-03
私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。
2025-07-02
連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。