「汁講鍋の残りで〆の雑炊をつくろう」
未だ温もりが冷めぬ汁講の翌朝、厳選タングル教室の勧学会に学衆の細井あやがスレッドを立ちあげ、呼びかけた。待っていたかのごとく、学衆たちの発言がつながった。「それぞれの土地の味わいが加わって、滋味深い雑炊ができあがった」と一同で称えあった。「汁講鍋の底に見事に残る!」と、交わし切れなかった問答を鍋に残る出し汁や具材に見立てたからこそ、投稿が加速したのだ。
汁講の直前、師範代の川村眞由美は、学衆に幾つかのお題を出した。その中のひとつが「『厳選タングル教室』を一冊の本に見立てよ」というものだった。
『足摺り水族館』panpanya
「なんとも言えない不思議な感じの本なのですが、ずっと気になっ
て手放せないのです」と師範代の川村。「私にとって、この教室も
同じです」と誇らし気だ。
『エモーショナル・デザイン 微笑を誘うモノたちのために』
『人を賢くする道具 ――インタフェース・デザインの認知科学』
ドナルド・A・ノーマン
「道具のあり方について書いた本です。良い道具も使いよう。私た
ちが学んでい方法も同じ。ちゃんと使えるようになりたいです」と
細井は方法に一途だ。
『ちか100かいだてのいえ』いわいとしお
子どもの本棚から絵本を持ってきたのは、学衆の青井隼人だ。「こ
の教室は、ふだんは静かなのに何が出てくるか分からない感じがあ
る。地下に降りていくほどに賑やかになっていくこのお話がぴった
り」と目を細める。
互いの本と語りに引き込まれていく。その本に結実するまでに、当人に去来したであろう稽古への切実に想像を飛ばすひとときとなった。見立ては、一見関係ないものを別のものにあてはめて表現する方法である。ふたつの物事の間に思ってもみない関係線を見つけることができれば、かえってそのものの本質を伝えることがある。
「実際に会ってみると、テキストから想像するみなさんと一致していました」との声もあった。さらに「初対面のはずなのに、すでにお互いのことを知っていて、話題も尽きない。なんとも不思議で心地のいい時間でした」と青井が汁講を振り返った。型を介して、問感応答返を積み重ねてきた厳選タングル教室の学衆たちの間には、既に堅い関係線が引かれていたのだ。見立てと対話によって、滋養豊かな教室のプロフィールを確認しあい、今やその先のターゲットに向かって、新たな料理がはじまっている。
2022年12月16日(金)開催の厳選タングル教室汁講に参加したのは、学衆の細井あやさん、
松浦克太さん、青井隼人さん、M.Sさん、川村眞由美師範代、石井梨香番匠、師範阿曽祐子。
阿曽祐子
編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso
生きることは霧とともにあること――今福龍太『霧のコミューン』発刊記念ISIS FESTA SP報告
あの日、本楼を入る前に手渡された和紙の霧のアンソロジー集には、古今東西の先達の言葉が配されていた。多彩なフォントの文字たちのなかで、水色の「霧」が控えめにその存在を今も主張している。 ISIS FESTAスペシャル「 […]
死者・他者・菩薩から新たな存在論へーー近江ARS「還生の会」最終回案内
近江の最高峰の伊吹山が雪化粧をまといはじめる12月、近江ARS「還生の会」は、当初の予定の通り最終の第8回を迎える。日本仏教のクロニクルを辿りなおした第6回までを終え、残りの2回は、いまの日本を捉えなおすための核となる […]
霧中からひらく新たな「わたし」――今福龍太さん・第3回青貓堂セミナー報告
「写真をよく見るためには、写真から顔を上げてしまうか、または目を閉じてしまうほうがよいのだ」(ロラン・バルト『明るい部屋』より)。第3回目となった青貓堂セミナーのテーマは「写真の翳を追って――ロラン・バルト『明るい部屋 […]
今年のお盆休みは、実家で「いただきます」というたびに、温もりと痛みとが同時に走った。それは、ひと月前の観劇体験のせいなのだろうと思っている。 2024年7月24日の18時開演。遅れたら入場できないかもしれないとのこと […]
別様への出遊に向かえ――『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』発売
2024年4月29日、一日限りの「近江ARS TOKYO」が終わり、駆けつけた人々は、余韻と期待をもって、会場で先行販売された松岡正剛からのもう一つの贈り物『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』(松 […]