自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
感門之盟2日目オープニング、2組目のゲストは九州支所・九天玄氣組(きゅうてんげんきぐみ、以下九天)、組長中野由紀昌だ。九天は師範代から学衆まで、初期から現代までの九州に縁(ゆかり)のある人たちが、「いかに九州を編集するか?」に挑み続ける、緩くて弾みある縁組だ。そのための場づくりが中野の仕事である。
※1組目のゲストトークはこちら。
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盗む門には物怪来たる〜モンスターの見つけ方:Day2オープニングゲストトーク1曼名伽組・小島組長【82感門】
Zoom参加の中野組長。編集学校色を擬いた赤と黒のコーデがキマッている。額の横のオブジェが気になる。
■祇園祭擬を擬く
九天といえば校長への毎年のお年賀。その質は毎年ドンドン上がっている。今年はのお年賀は「本の飾り山笠」。博多祇園山笠の擬である。
祇園祭といえば京都…だけではない。祭神である祭神素戔嗚尊(すさのおのみこと)・牛頭天皇(ごずてんのう)を祀る八坂神社は京都のみならず全国各地に3000社、八坂以外の神社も合わせると6000社以上あり、その多くの祭が「祇園祭」と名付けられているため、全国各地に祇園祭があることになる。八幡様と編集学校だけでなく、こちらも擬だらけなのだ。
その擬の中で特に有名なのが博多祇園山笠である。山鉾を山笠に《持ち替え》、山笠を豪華絢爛な「飾り山笠」と町中を舁いて(担いで)走り回る「舁き山笠」に《わける》などの編集が奏功してか、京都祇園祭を凌ぐ人気を誇っている。そんな博多祇園山笠を擬いた、ここにしかないデモンストレーションが「本の飾り山笠」だ。
正面から見た「本の飾り山笠」。京都祇園山鉾擬である博多祇園山笠をさらに擬いたお年賀だ。
スサノオ擬のセイゴオ。眼鏡、髭、顎の形など見れば見るほどよく似ている。
裏面のバニー・セイゴオ。天岩戸開きの立役者、半裸のストリッパー神、天鈿女命(あめのうずめのみこと)を彷彿させる。
■九天のデ・モンストレーション・クロニクル
中野はまず、2006年の発足以来の歴史を高速で振り返る。
最初の8年は九州の見方を校長に学ぶ時代だった。
9・10周年を機に、九州を自分たちで編集しはじめる。校長に茶摘みを体験してもらう、国会答弁を九州各地の方言で行うなど、焼酎の発酵音で音楽を奏でるなど、九天らしいモンスターが続々と登場する。企画、場づくり、用意から卒意まで、すべてを自分たちの手で行っている。
ここまでできたのは、毎年のお年賀作りという「場」でアウトプットを繰り返しながら、コミュニケーションの方法を深く濃ゆく探ることを積み重ねてきたからだ、と中野は振り返る。
■デーモン出とるやろ〜
さらに中野は最近のお年賀の中から「これぞデーモンだ」という自信作を連打する。
写真は2018年のお年賀、校長本『擬』を擬いた九天版『擬』。九天の面々が「松岡正剛もどきになれ」のお題にチャレンジしている。最高傑作はマリリンモンローになりきった、三苫麻里師範代(37守/破めんたいエディトン教室・45守中洲マリリン教室)のマツリンモンローだ。
こちらは2021年、タモリと校長の『愛の傾向と対策』を擬いた『密の傾向と対策』。コロナ禍時代を象徴するお年賀である。表紙は昨日感門を迎えたシビルきびる教室・佐土原太志師範代。左下が石牟礼道子擬の石井梨香多読ジム冊師、右上が西郷隆盛擬の中村まさとし評匠、左下は夢野久作『ドグラ・マグラ』の表紙の女性を擬いた三苫師範代。これ以上のデーモンは無いと中野は大絶賛、思いもよらない一種合成だと八田も大喜びだ。

■新たなアウトプットの場
こんな風に18年間段階的にデーモンを育ててきた九天だが、発足当初から校長に突きつけられていたお題があった。それは「文化と経済を分けない」ということだ。これからは経済の問題も視野に入れつつ、九天をはじめとする面白いコンテンツを発信する新たなアウトプットの場として電子出版レーベルを立ち上げた。その名は字像舎(じぞうしゃ)。ネーミングは校長、デザインは方源(デザイナー)の穂積晴明だ。
字像舎のビジュアルイメージ。例のオブジェの正体がここで明かされた。
字像舎では九天以外のコンテンツでも面白いものがあったらどんどん出していくので、相談してほしい。九天の過去のアウトプットのアーカイブも作っていく。やり方もコンテンツも編集学校にすでにあり、今、「場」が整った。ならば「感門の後、どんなデモンストレーションをする?」と問いかけてほしい。あとは行動あるのみ。中野からの檄が飛ぶ。八田も「もうアウトプットする場所がないとは言えない」とダメ押しをした。
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■元気出してください
最後に同じ九州出身の佐々木所長に、九天から「千佳っぱ玄氣出汁てください」と手紙が添えられた贈り物があったことが八田より明かされた。実は八田は佐々木の代≒擬としてこの場に立っていた。「師範代は半年間、校長の代として頑張った。誰かの代になって、少し背伸びしして、新しい一歩を踏み出してほしい」。佐々木の笑顔に見守られながら擬となった八田は締めくくった。
八田の活躍を笑顔で祝福する佐々木局長。
清水幸江
編集的先達:山田孝之。カラオケとおつまみと着物の三位一体はおまかせよ♪と公言。スナックのママのような得意手を誇るインテリアコーディネーターであり、仕舞い方編集者。ぽわ~っとした見た目ながら、ずばずばと切り込む鋭い物言いも魅力。
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(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
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