前代未聞の7人のナビゲーター。
会場が大分の耶馬渓だけに、これはヤバ系?
時間も大幅にオーバーするのではと関係者がやきもきするなか、大分エディットツアー「いいちこ!大分編集祭り」が開催された。
登壇するのは、イシス編集学校の九州支所・九天玄氣組の誇る七人の侍、田中さつき、松永真由美、篠原郁恵、日浦健、石井梨香、品川未貴、三苫麻里である。女性陣は浴衣姿で艶やかなそろい踏みを決めた。侍の切り込みは七人七様。多面体のごとく編集を示した。
一の侍 品川未貴
テクニカルを一手に引き受けたのが、イエナコーヒー店主・品川である。凛とした佇まいが美しい。姫島盆踊りで参加者をお迎え、自ら大分の各地で撮影した写真を使い、玄人はだしのオープニングムービーを組み立てた。
二の侍 篠原郁恵
旧姓・鈴木郁恵こと篠原郁恵は乳飲み子を抱えながらも、ちゃきちゃき娘ぶりは健在だ。生まれ育った大分の名物をクイズ仕立てで紹介した。大分といえば、温泉、磨崖仏、かぼす。いやそれだけではない。トンネルの数も石灰石の採掘量も日本一なのである。
三の侍 日浦健
九重連山を背景にマイクを片手に登場したのが日浦だ。豪雨災害にあった日田・天ヶ瀬温泉でのボランティア活動を朴訥とした語りでレポート。被災した旅館店主が「賞状を処分してくれ、思い出は自分の中にあるから」と語ったというエピソードを紹介した。このツアーの参加費は災害地の義捐金にあてられる。
四の侍 田中さつき
広瀬淡窓の書を屏風に仕立てた和室では田中さつきが咸宜園愛を語った。江戸の最大の私塾でもあった咸宜園。その特徴は名前が表すように、「ことごとくよろしい」というモットーと、「三奪の法」として年齢、身分、学歴を問わなかったことである。田中は、編集稽古に正解はない、教室で属性は問わないというイシスと咸宜園を重ねる。コーナーラストは咸宜園にありそうな「引き出し」にあるものの見立てで自己紹介ワークを仕立てた。
五の侍 石井梨香
田中のワークを受けて、「編集」の本丸を語ったのは、守の師範でもある石井である。その心意気は壁にかけた炭鉱絵の山本作兵衛の手ぬぐいに表した。IN-OUTのあいだで動く編集があらゆることに通底し、自己紹介ワークではどのように情報を集め、関係づけ、構造化し、表現したのかをモデル化した。
六の侍 松永真由美
六人目はセロ奏者でもある千葉の松永だ。母親が大分出身である。対にしたのは温泉とプール、椎茸とかぼす。大分にちなんだミメロギアワークでは、十六人の参加者をブレイクアウトルームに振り分け、チーム編集の妙を楽しむ仕掛けをつくった。参加者のミメロギアはこちら。鈴虫の温泉・蝉のプール。プロポーズの温泉・告白のプール。打たれて温泉・流されてプール。婆ちゃんの椎茸・母ちゃんのかぼす。仕込みの椎茸・仕上げのかぼす。
七の侍 三苫麻里
最後の侍は、中洲のマリリンこと三苫麻里。「はーい、マリリンでーす」と登場した三苫は、イシス編集学校の紹介を担当した。マリリンは何の衒いもなく、参加者特典の2割引、家族割の半額を紹介し、最後には九天の中野組長まで引っ張り出して、ちゃっかり九天玄氣組をアピールして締めくくった。
圧巻怒涛の七人囃子。時間は3分余しての締めくくり。合言葉は「いいちこ!」。みんないいよーという意味だ。咸宜園の「ことごとくみなよろし」そのままに、耶馬渓での七景は万事OKの大団円。予想もつかないてんこ盛り、カオスから新たなニューオーダーを生んだ大分エディットツアーは、ナビゲーター数珠つなぎというワークショップの別様の可能性を示した。
吉村堅樹
僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。
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