イシス編集学校の「世界をまるごと探究する方法」を子どもたちに手渡す。
子どもも大人もお題で遊ぶ。
イドバタイムズは「子ども編集学校」を実践する子どもフィールドからイシスの方法を発信するメディアです。
街中で色とりどりの短冊が笹の葉に揺れる7月7日、「子ども編集学校」の展望を描く会合があった。
午前はオンラインでのよみかき編集ワーク研鑽会、午後は子どもフィールド七夕オフ会@国際子ども図書館である。
古く新しい知の宝庫に集う
午前の研鑽会を終え、3歳の娘と一緒に東京・上野に向かった。JR上野駅から徒歩10分、緑あふれる上野公園を抜けると、大きなアーチ窓が目を引く洋館が建っている。むせかえるほどの暑気を帯びた白昼でも、白い煉瓦の外壁とガラス張りのエントランスからひんやりとした空気が一帯に漂う。
国際子ども図書館
ここ国際子ども図書館は、明治期に建てられた帝国図書館を改修した、国立の児童書専門図書館である。ルネサンス様式の外観に、内装はシャンデリアや大階段などかつての意匠を残しつつ、現代の設備を取り入れた、今と昔が立体交差する建物だ。新聞貯蔵場は「子どもの本のへや」、応接室は「おはなしのへや」に変わり、小さな来館者たちを今日迎えている。建物が醸す荘厳な佇まいと、館内に響く子どもの笑い声や赤ちゃんの泣き声は不思議と似合っていた。
オフ会を企画したのは、気仙沼在住で、夏休みで東京に帰省中の林愛である。奈良から松井路代、京都から坂口弥生が上京するというので、私も娘を連れて参加した。
大階段
「ごんぎつね」パネルと「MOMOTARO」ポスター
本に囲まれBPT
館内をめいめい好きにめぐったあと、併設するカフェに集合した。ソフトクリーム、フロート、かき氷など、どこか懐かしい夏メニューを各々注文する。カフェには、おもちゃや本が置かれ自由に手に取れるようになっていた。あっという間にソフトクリームを平らげた娘は絵本を次々に持ってきて「読んで!」とせがんだ。大人たちは新書や物語の本を間に、イドバタトークを始めた。子ども図書館を基地として、注意のカーソルが動いたモノ・コトを話し合う。
児童文学史、成長段階で変わる図書、子どもが読み取る本の「型」、算数の英語表現、子どもの身体感覚やダジャレの言語感覚、教え上手・教えられ上手の子、昭和の親子関係。時代や場所を行き来しながらプロフィールが重なり、子ども編集学校の将来という着地点に向かっていく。
カフェで手に取った『帝国図書館ー近代日本の「知」の物語』長尾 宗典 (著)/中公新書
「応答」という方法
こども支局の松井路代がスケッチブックにまとめた理念のうち、子ども編集学校で大切にしたい方法の一つに「応答」があった。編集において重要なプロセス「問感応答返」の構成要素であり、よみかき編集ワーク研鑽会でも挙がった言葉だ。出された答えに正誤の軸をもたず、丸ごと受け止めよくのぞきこむ。
ワークショップの過去の記録動画でナビ役の得原藍は参加した子どもの自由な答えも大人の整然とした答えも歓迎し、発想を活かし思考を広げる役割を果たしていた。「面白がること」を動力に、新しい気づきや別の発想を参加者と共に創っていく。
「面白がること」はシンプルだが容易くない。だからこそ応答の速度・深度を高める力となり、子どもの発想を育てる芽となる。子ども編集学校の希求するもの、その方法を改めて確かめ、七夕オフ会は解散となった。
「感」が「面白がる」を呼び込む
図書館を出ると、前庭に立つ彫像に気づいた。作家・小泉八雲の記念像だった。
『怪談』などの情緒豊かな再話文学で知られる八雲だが、妻セツが書物を読み語る声を聞き、物語を書き記したという。物語を集めて、聞いて、書き、物語にする。きわめて編集的な手順と思える。子どもが読み聞かせを全身で感じ入るように、八雲も身体から物語を感じとっていたのだろうか。他者と交わすみずみずしい「感」が「面白がること」の源になるかもしれない。
小泉八雲記念像
生き生きした面白がる「感」から、活きた応答が生まれ、子どもにとっても大人にとっても創発的な学びの場となるように。笹に願いの短冊を結ぶように子ども編集学校への希望を胸に留めて家路を急いだ。
文:荒井理恵
写真:荒井理恵・松井路代
編集協力:松井路代
イドバタ瓦版組
「イシス子どもフィールド」のメディア部。「イドバタイムズ」でイシスの方法を発信する。内容は「エディッツの会」をはじめとした企画の広報及びレポート。ネーミングの由来は、フィールド内のイドバタ(井戸端)で企画が生まれるのを見た松岡正剛校長が「イドバタイジング」と命名したことによる。
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