棚下照生。この忘れられたマンガ家が、最近、X(ツイッター)で話題になっていた(なぜかは知らないが)。大人漫画のタッチで劇画を描くという、今となっては完全に絶滅した手法が、逆に新鮮に映るのかもしれない。代表作『めくらのお市物語』は、連載当時、大変な人気で、映画やテレビドラマにもなったのだが、現在では、タイトルに問題アリで、復刊の目途もない。もしも古本屋で見かけることがあったら絶対買いです。
「せっかくの遠出だから、角川武蔵野ミュージアムに行ってみよう」
イシス編集学校の55期基本コース[守]の最後のお祭り的なイベント・第89回感門之盟が9月20日(土)に行われていました。私が師範代を務める「つきもの三昧教室」では、感門之盟に対して遠方の西日本から2名の学衆さんが参加していたのです。せっかくの関東訪問の機会、翌日の新幹線での帰りの前に角川武蔵野ミュージアムへ訪問する企画が立ち上がりました。
同じトポスで8月2日に汁講を行った55「守」山派レオモード教室のPOST記事に肖りながら、訪問後に行った学衆さんの振り返りワードも交えつつ、汁講をレポートいたします。
エディットタウンの9つのカテゴリー
学衆3名、師範の阿久津健、そして師範代の私、合計5名の参加者が11時にミュージアムへ集合し、4階にある本の森であり本の街である「エディットタウン」に向かいます。入口付近にある紹介パネルに集合して、9つのカテゴリーを紹介しました。
いきなり本棚へ向かうのではなく、奥にある階段付近の小空間へと進みました。実はミュージアムのアドバイザリーボードの1人・荒俣宏さんの本棚があるのです。そこには初代館長だった松岡正剛と、グラフィックデザイナー・杉浦康平が協力して1979年に完成させたレア本『全宇宙誌』が置かれていたのです。学衆3名は食い入るように雑誌の中の宇宙空間に入り込んでいました。9月13日に読了式が開催された多読スペシャル「杉浦康平を読む」の最優秀賞作品は『全宇宙誌』に肖っていましたね。
『全宇宙誌』を共読する学衆さんたち
直ぐ近くの本棚劇場で、特別展「昭和100年展」に連動したプロジェクションマッピングを鑑賞します。1940年代の太平洋戦争、1960年代の東京オリンピック、そして1980年代のデジタルゲームなどが紹介されていました。
本棚を見て回るにあたって、気になる書物を写真で撮影し、昼食の際に紹介することにしました。学衆Oさんはエディットタウンの入口側へと戻り、松岡の紹介する映像を見ながら、心のなかで対話をしていたようです(アイキャッチ画像のことです)。
エディットタウンには千夜千冊の本も数多く並べられています。イシス編集学校の講座を「編集思考素」の三間連結で構成する藤原稜三『守破離の思想』(1252夜)や、師範代が教室を運営する際のカマエを示した太鼓持あらい『「間」の極意』(0543夜)がありました。これらを学衆Kさんに紹介します。書物を奉るような様子を見ると、将来、師範代養成コースの花伝所へ進むことをイメージしました。
『「間」の極意』を奉るような学衆Kさん
エディットタウンの空気感に対して「広々、爽やか、生き生き、ワクワク、興味津々」などの連想シソーラスを関係づけた学衆Hさんは、ガイア・ヴィンス『進化を超える進化』(文藝春秋)に興味が持っていました。本の森の「こもれび」の温かさを感じつつ、編集工学研究所のミーム(文化的遺伝子)である「生命に学ぶ」意識を持って選ばれていたのでしょう。アートと時間で構成された四次元空間に込められている思考と技術の方法を発見していたかもしれませんね。
『進化を超える進化』を手に取る学衆Hさん
エディットタウンでの書物の散策を終えて、角川武蔵野ミュージアム2階のフロアからゆっくりと歩き途中にある書店「ダ・ヴィンチストア」を経由して、すぐ近くの所沢市観光情報・物産館に立ち寄ります。1階にはお手頃価格でランチができるカフェとスペースがあるのです。本格スパイシーカレー、地元産を使用した肉汁カレーうどん、つけ汁うどん、そして、昆布茶とレモン、醤油、中濃ソースなどの複数の食べ方のある「あじフライ定食」もありました。
学衆Kさんはテーブルの上にスマホを置きつつ、エディットタウンで気になった本として、三間連結の型を使いながら書物の写真を3枚紹介します。
『妖怪』水木しげる/講談社
『BEFORE THEY PASS AWAY -彼らがいなくなる前に』ジミーネルソン/バイインターナショナル
『切断ヴィーナス』越智貴雄/白順社
水木しげるが育った昔の日本には「冥」の世界だけでなく、「顕」の世界にも妖怪が出現していたようです。高度成長期とともに日本が清潔になり、徐々に妖怪を見かけなくなりました(1冊目)。Kさんは妖怪の類似となる民族のフィルターを使ってシャーマンもいないことに気がつきました(2冊目)。マイナー民族が言語とともに滅びゆくように、失われたモノを目に見える形として身体に取りこむことを強調していました(3冊目)。
物産展近くでのランチ、その後はエディットタウンで出会った書物をスマホで紹介
物産館を後にして、「ダ・ヴィンチストア」で書物の買い物を行い、さらに買った本の交換を行いました。誰に渡すかはくじ引きで事前に決めています。ミュージアム訪問は書物三昧の日になりましたね。買った本のリストはコチラです。
『ジャズる縄文人』金子好伸/宮帯出版社(畑本⇒学衆Hさん)
『魔女の植物園』(学衆Hさん⇒学衆Kさん)
『空の青さをみつめていると』谷川俊太郎(学衆Kさん⇒学衆Oさん)
『世界堂書店』(学衆O⇒阿久津)
『密会』富野由悠季/KADOKAWA(阿久津⇒畑本)
『魔女の植物園』を受け取った学衆Kさんは、緑あふれる場所へ引っ越しをして以来、植物が身近になり、もっと知りたいという気持ちが芽生えたようです。魔女にはなりたいが、魔女狩りされないように、編集に対しての襟を正す想いを語っていました。
『ジャズる縄文人』を受け取った学衆Hさんは、次の破講座でジャズの持つカジュアル感を纏って稽古に臨むことを事後の振り返りで宣言されていました。Hさんが以前から縄文に興味を持っていたことを知っていたので、「やわらかいダイヤモンド」のような意外性のあるタイトルの本を選びました。
書物4冊の交換シーン
ミュージアム訪問のクロージング前に師範・阿久津から『密会』を頂きました。つきもの三昧教室らしさのある怪しげなタイトルですね。近年、古書価格が高騰していたようですが、今年4月から6月に放映されたガンダム最新作『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』に合わせて再販が決まり、入手しやすくなったようです。守師範代ロールを終え、次の物語講座でのロールに向かう前に映像作品を視聴しておきたいと思います。
チーム師範の阿久津から手渡される富野由悠季『密会』
感門之盟などの都内イシスイベントの前日や翌日に「角川武蔵野ミュージアムを味わう」という選択肢があります。これから始まる秋開講の56[守]や55[破]でも活用できるといいですね。
写真:阿久津健、畑本ヒロノブ
文:畑本ヒロノブ
参照:つきもの三昧教室・勧学会での振り返り
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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