戦争を語るのはたしかにムズイ。LEGEND50の作家では、水木しげる、松本零士、かわぐちかいじ、安彦良和などが戦争をガッツリ語った作品を描いていた。
しかしマンガならではのやり方で、意外な角度から戦争を語った作品がある。
いしいひさいち『鏡の国の戦争』
戦争マンガの最極北にして最高峰。しかもそれがギャグマンガなのである。いしいひさいち恐るべし。

少し前に話題になった韓国の小説、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)を読んでみました。目標を持つこと、目指す道を踏み外さないこと、成功することや人に迷惑をかけないことに追い立てられている人々が、書店という場所で、自らのこれまでと今を受け入れていく物語です。
読者の感想には「こんな書店に座っていたい」「オアシス」「小さく温かな灯り」といった言葉が書かれています。ホッとする場所がヒュナム洞書店なら、多読ジムはどんな場所なんだろう。本を読みながら考えてみました。
「本当」の自己紹介から始まった読書会
ヒュナム洞書店の読書会エピソードの中心人物は、店の近くに住んでいるミンチョルオンマ(ミンチョルのママといった意味)。韓国では母親である女性に対して、子どもの名前にオンマ(母)をつけて呼ぶことが多いようです。美人で華やかで行動派のミンチョルオンマは、「金を稼ぐってそんな甘いもんじゃないわよ」と言い放ちつつも、開店当初から店主のヨンジュを気にかけている人情派でもあります。
ヨンジュのすすめで読書会のリーダーとなったとたん、5人ものメンバーを集めたやり手ですが、初めての読書会では緊張で頭が真っ白になったとヨンジュに助けを求める素直な人でもあります。水を飲んで深呼吸した後に、「誰かの母や妻ではなく、自分の本当の名前で自己紹介をしよう」と提案し、そこから二時間、「オンマたちの読書クラブ」のメンバーは、自分のことだけを話せるのが嬉しくて仕方ない様子で、競うように語り合ったのでした。
カタルシスとパッサージュ
ヒョナム洞書店の読書会が本を媒介にして自分を語り共感しあう場であるならば、多読ジムはスタジオ内のメンバーの本の読み方を交換しあう場と言えるでしょう。本の表紙や装丁や前書きから受けとったイメージを出し合い、本から抜き出した引用やマーキングを見せ合います。
本の読み方は人それぞれですし、一人の人でも時期や時間や状況によって読み方が変わります。それを交換することで、同じ本でも着眼点が全く違うことに驚いたり、見過ごしていた細部に気づいたりすることもあります。
多読ジムの参加者はこう語っています。
・他人の読書が自分のものになっていく。
・知をジャンプさせる土台をシェアしつつ、いろんな方向に飛んでいける場はここしかない
・読んで何となく感じたことが他の本やスタジオの仲間との共読、冊師のコメントと重ねてみると、全く異なる風景が見えてくる。
・読書の領域がスムーズに広がっていく。
ヒョナム洞書店の読書会がカタルシスなら、多読ジムは、それまでとは違うレイヤーへのパッサージュによる解放だなあと思います。
「オンマたちの読書クラブ」は、その後、妻や母としても生き、39歳で小説家デビューしたパク・ワンソの本を読み続けているようです。多読ジムでは、シーズンが替わる度に、初めての本、運命の本に出会い、時には初めての「わたし」にも出会うことができます。
・毎シーズン、これは運命の出会いかも、と思う本が一冊はある。
・一生読まないかもしれない本に出会えるのも多読ジムならでは。
・読んだら書くのがこのジムなので、「あれ、私ってこんなこと考えていたの」って思うような、新しい自分に出会うことがたまにある。
新たな「わたし」に出会いたいなら、多読ジム、おすすめです。
★season 18 のトレーニングは、2024年3月11日スタート!
紹介記事はこちら
■info 多読ジムseason 18 春
【定員】若干名
【お申込】https://shop.eel.co.jp/products/detail/644
【申込資格】突破者以上
【開講日】2024年3月11日(月)
【申込締切日】2024年3月4日(月)
【受講費】月額11,000円(税込)
※ クレジット払いのみ
※ 初月度分のみ購入時決済
以後毎月26日に翌月受講料を自動課金
例)season 18 春スタートの場合
購入時に2024年3月分を決済
2024年3月26日に4月分、以後継続
※申込後最初のシーズンの間はイシス編集学校規約第6条に定める期間後の解約はできません。あらかじめご了承ください。
→ 解約については募集概要をご確認ください。
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
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コメント
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2025-08-14
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2025-08-12
超大型巨人に変態したり、背中に千夜をしょってみたり、菩薩になってアルカイックスマイルを決めてみたり。
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2025-08-07
「べらぼう」見てないんですが、田沼意知がとうとうやられちゃったんですね。
風評に潰された親子のエピソードは現代の世相とも重なり、なんとも胸がふさがります。
一ノ関圭『鼻紙写楽』は、このあたりの話を巧みに取り込んで物語化しており秀逸。蔦重も出てくるし、この作品、「べらぼう」とだいぶ重なるんじゃないかなあ(見てないけど)。