自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
情報は番(つがい)で創発する。
「一種合成型」を用いた「番選ボードレール」を走り抜けた翌日、本楼では、56[守]の指導陣の勉強会「創守座」が開催されていた。
「一種合成型」とは、ラジオとカセットをかけ合わせて、ラジカセというツールを作り、カルチャーを成してしまうような「関係の発見」の型である。
[守]学匠の鈴木康代が、一種合成型と教室を重ねながら、挨拶の言葉を贈った。教室でも、師範代や学衆のエディティングモデルのかけ合わせで「創発」が起こる。社会化され固定化された関係のままを良しとせず、抗ってほしい。稽古のなかで、そこに気づいていってほしい。
創守座のオープニングメッセージを贈る鈴木康代学匠。教室での対話と創発に期待をかけた
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「千夜千冊番読み(せんやせんさつつがいよみ)」のコーナーでは、番匠阿曽祐子・師範景山和浩のコンビが、千夜千冊の「番」(つがい:対や交互の意味)での読解を仕掛けた。2つのテクストの重ね読みである。
ピックアップされたのは、『セクシーな数学』(グレゴリー・J・チャインティン)、『無名時代の私』(文藝春秋編)というジャンルを超越した2夜だった。
番匠の阿曽祐子・師範の景山和浩。「番読み」のネーミングも二人によるものだ
数学には、本来セクシーがある。ラグビーの膠着状態を打破するアンストラクチャー(非構造)な動きのように、数学にもセクシーといいたい生命的なランダムネスが必要だった。ストラクチャーとアンストラクチャーの両面に「編集」があると語られる、千夜千冊1830夜『セクシーな数学』。
無名時代には、理不尽にもみえる「藪から棒」を掴むことが必要であり、それこそが自己の範疇を超えた可能性をもたらす。才能の開花は、棒に刺されて起こるのだ。ある意味では「有名になってはならない」という戒めにも聞こえてくる、千夜千冊1292夜『無名時代の私』。
無関係にもみえる2冊を巡る松岡校長の言葉から、型を使って新たな関係に向かっていく勇気と、不確実性を恐れず他者と混じり合うことへの励ましを受け取った師範代は少なくなかった。
彼らは、3年あるいはもっと長い間、壁にぶつかりながらも、自分はここに賭けるしかないというものを見出していたのだ。あるいは、賭けるしかないと、観念していたのだ。
さくさくウムベルト教室 師範代 翠川辰行
対比するものを、どのように楽しんで交わらせるか。交わりにより何を生み出すのか。それはお題だけではなく、自分自身の中、社会の中、あらゆることに、ところで行われてよいのではないか。
連菫ポレポレ教室 師範代 高橋英子
通底するのは「自発的な相転移」
私自身が相転移されたがっている。
半跏グノーシス教室 師範代 坂口弥生
千夜千冊番読みのメッセージは、一種合成の砂煙のなかに立ち昇った。
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「セクシーであること」と「無名であること」。「康代学匠の言葉」と「番読みの仕掛け」。「番ボー」と「創守座」。
番(つがい)の試みはまだまだ終わらず、その実験の舞台を再び教室へと移す。
文:師範 阿久津健
写真:阿久津健・北條玲子
阿久津健
編集的先達:島田雅彦。
マクラメ編み、ペンタブレット、カメラ、麻雀、沖縄料理など、多趣味かつ独自の美意識をもつデザイナー師範。ZOOMでの自らの映り具合と演出も図抜けて美しい。大学時代に制作した8ミリ自主映画のタイトルは『本をプレゼントする』。
モニターの光の中に、教室の仲間たちの言葉が浮かび上がる。ペンを握り、それをノートに書き写していく。言葉が生まれるまでのプロセスや想像力が、指先から伝わってくる。 * * * * * 56[守] […]
タイムキーパーは原田淳子、ビデオカメラマンは中村麻人だ。 これは、56[守]創守座の裏方の布陣である。イシス編集学校をよく知る者には、[破]講座を統括する原田学匠、花伝所で辣腕を振るう中村師範といったほうが […]
俳句・根本対同・ミメロギア──56[守]創守座 用法3解説に寄せて
飛び込む水の音がしたときに、蛙の姿はもうそこにはなく、春の古池だけが残っている。 俳句とは、読み手のなかに「蛙」を鮮やかに想起させる「アブダクション」でできている。俳人でもある師範の一倉広美は、[守]の用法 […]
半歩で躓く者こそが、入門するに相応しい。 イシス編集学校では、入門前の「お試し稽古」として、編集力チェックという企画があり、誰でも無料で参加することができる。 ◇◇ 開講したばか […]
55[守]の各教室で汁講(しるこう:師範代と学衆の集い)が行われている。2025年8月、山派レオモード教室でもオンラインの稽古場を飛び出し、東所沢の角川武蔵野ミュージアムにて汁講が開催された。田中志穂師範代、学衆6名、筆 […]
コメント
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2026-01-13
自らの体内から這い出したコマユバチの幼虫たちが作った繭の塊を抱きしめるシャクトリムシ。科学者は「ゾンビ化されて繭を守るよう操作されている」と解釈するけれど、これこそ「稜威」の極北の姿ではないだろうか。
2026-01-12
午年には馬の写真集を。根室半島の沖合に浮かぶ上陸禁止の無人島には馬だけが生息している。島での役割を終え、段階的に頭数を減らし、やがて絶えることが決定づけられている島の馬を15年にわたり撮り続けてきた美しく静かな一冊。
岡田敦『ユルリ島の馬』(青幻舎)
2026-01-12
比べてみれば堂々たる勇姿。愛媛県八幡浜産「富士柿」は、サイズも日本一だ。手のひらにたっぷり乗る重量級の富士柿は、さっぱりした甘味にとろっとした食感。白身魚と合わせてカルパッチョにすると格別に美味。見方を変えれば世界は無限だ。