すでに「物語講座四冠受賞の男【78感門】」で授賞式の顛末ごとお伝えしたように、受賞者本人も驚く間もないくらい、鮮やかな4冠で幕を閉じた14綴・物語講座。
さて、物語講座アワードの名物といえば、各プログラムや受賞作品にちなんで、一人ひとりに贈られる贈呈本。初めて出会うはずなのに、なぜだかしっくり手に馴染む。今綴、ことのほか広く深く、丹念に丁寧に選定された本を手に取った受賞者たちは、幼馴染に再会した時のような、遠い昔のタイムカプセルを開けた時のような、ほんのり懐かしい気持ちにすらなったのではないだろうか。
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では、各賞贈呈本を、受賞作品とREMIXしてご紹介。
◆窯変落語賞(藤田和広さん・夜想曲南軍将軍文叢)
★受賞作品★『幸男の玉突き事故』
☆贈呈本☆ 『世界はゴ冗談』筒井康隆/新潮社
ミメーシス・アナロギア・パロディアが生み出す黒いおかしみ。
老いてなお諧謔文学の最前線に立ち続ける巨匠に敬意を表しつつ、「玉」つながりとは、またゴ冗談。
◆窯変ミステリー賞(北條玲子さん・夜想曲南軍将軍文叢)
★受賞作品★『アネの聲』
☆贈呈本☆ 『三度目の恋』川上弘美/中央公論新社
交錯する二人の時間は、現世なのか夢なのか。
好きなのに、好きだから、許せない一線があり、越せないはずが、超えてしまう。その濃淡がとても切ない。
◆窯変幼な心賞(藤田和広さん・夜想曲南軍将軍文叢)
★受賞作品★『ドーナツオヤジ』
☆贈呈本☆ 『夜の声』ミルハウザー/白水社
緻密でリアル、だけどどこかズレていて変。
「幼な心」に真正面から対峙すると、捩れが内側に向かう。そして自由になるのだ。
◆トリガー賞(藤田和広さん・夜想曲南軍将軍文叢)
★受賞作品★『赤い月と観覧車』
☆贈呈本☆ 『眠りの航路』呉明益/白水社
時間と家族のあいだに存在する未知を、「今」に重ねることで煌めく「生」。
自分自身の存在の証が揺さぶられる瞬間が、暗幕の上、映像的に描かれる。
◆編伝賞(後藤泉さん・言の葉人魚姫文叢)
★受賞作品★『Lumiere fantome』
☆贈呈本☆ 『未来の記憶』エレナ・ガーロ
誰が何と言おうが関係ない。純潔で、純粋で、無垢で潔癖。
まぼろしなのに、確かに現実。たとえそれが、禁じられた未来であったとしても。
そして、3冠を経て、晴れて4冠目の冠綴賞に輝いた藤田さんには、記念本として指導陣向けカバー付き『綴懇巻』が送られた。
(歴代デザインの中でNo.1の華やかさにドキドキが止まらないと評判のカバーデザイン)
お稽古の中で自分で仕上げた作品は横書き、綴墾巻になると縦書き。指導陣が丁寧に校正・製本し、改行位置も、数字やアルファベットの書き方も、すべて変わる。
「自分の書いたものが本になると、プロの写真家に撮ってもらったプロフィール写真のように、自分のようで自分じゃないような、なんとも気恥ずかしい気がする」とは藤田さんの弁。
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感門之盟の後も、まだまだ名残惜しげに各文叢の物語は続く。
「記憶も歴史も、みんな物語。どこかで<物語は創作だ>と思い込んでいましたが、そうじゃない。文叢が閉じたあとも、物語を書き続けていけたら…」
編伝賞を受賞した後藤さんの真っ直ぐな感想が、とても眩しかった。
物語講座15綴 今秋開講予定(乞うご期待)!
小濱有紀子
編集的先達:倉橋由美子。古今東西の物語を読破し、数式にすることができる異才。国文学を専攻し、くずし字も読みこなす職能。自らドラムを打ち鳴らし、年間50本超のライブ追っかけを続ける情熱。多彩で独自の編集道を走る、物語講座・創師。
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