先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。

スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。
感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。
はづかしや おれが心と 秋の空
一茶の句ではないが、エアサックス加藤は恥ずかしげもなく変節した。前回の記事でも紹介したが、加藤はセイゴオ知文術の課題本として、教室でいの一番に『生命誌とは何か』を選んだことを宣言した。「生命科学の本で、専門的な知識を織り交ぜながら語る本を読んでこなかったから挑戦したいです!」と意気込んでもいた。ところが! 1週間後、加藤は心がわりしたのだ。
「さていよいよ知文に励もうと思うのですが、今になってどうしても課題本を『フラジャイル』にしたくなってしまいました。前期、前々期と『フラジャイル』に挑んでは手応えなく終わっており、どうしてもこの度、知文も3度目の正直ということで今更ながら挑戦してみたく思ったのです」。すでに教室で、加藤はエントリー変更の申し出を済ませていた。オネスティー上杉と編集天狗は半ば呆れながらも、加藤の申し出を受け入れた。
そう、加藤は前々期。前期と2期つづけて『フラジャイル』を選んだ。そして、2回ともエントリーできなかった。締め切りに大幅に遅れて、知文の回答をした。遅れたものはもちろん選外、師範からの講評ももらえない。一体どんな文章を書いたのか。加藤はオネスティーと天狗にこれまでの知文を見せた。一瞥した編集天狗から一切の受容なしに、問題点が列挙される。「自己愛がひどい。引用が多すぎる。無駄な言葉を使いすぎ。タイトルを本文で引き取ってない」。次々と繰り出される指摘に、加藤はしおれた。「僕は組み立てることをせず、方法も意識せず、ただなんとなく書いているだけでした」。
その様子を見ていたオネスティー上杉が優しくアドバイスをする。「これまでの大賞を受賞した文章を見てみたんだけど、大賞を受賞した文章は著者が書いていることと自分が考えていることがわかるように書かれているね。加藤くんもその分節化をまずは意識してみるといいんじゃないかな」。でも、「文章の中でリスクテイクはしないとダメだよ」と付け加えるのも忘れなかった。
とはいえ、エアサックス加藤はここまで順調に稽古を進めている。編集天狗へのインタビュー、モード文体術、5つのカメラ文体術を提出。これからはアリストテレス賞エントリーに専念できる。しかし、加藤はまだ書けるかどうか見えないと、不安も吐露した。天狗から新たな指令が出た。まずフラジャイルを腑分けすること。一言でフラジャイルと言っても方法的に見て何パターンかのフラジャイルがある。自分に引き寄せた都合の良いフラジャイルばかりに注目してはいけない。とりあえずフラジャイルをグルーピングすることから始めるべし。
『フラジャイル』の文庫本は持っていた加藤は、新たに単行本を購入した。気構えだけはできている。3度目の正直で、エアサックス加藤はエントリーできるのかどうか。そして、2席以上をゲットできるのか。知文エントリーは13日、締め切りまで10日を切った。
【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー
■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!(本記事)
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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コメント
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2025-10-20
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2025-10-15
『キャラ者』は、”マンガ家”だった頃の江口寿史の、(まとまった作品としては)ほぼ最後の仕事。恐るべきクオリティの高さで、この才能が封印されてしまったのはもったいない。
「来年こそはマンガ家に戻ります!」と言ったのは、2016年の本の帯(『江口寿史KING OF POP SideB』)。そろそろ「来年」が来てもいいだろう。
2025-10-14
ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。