【エアサックス加藤の三度目の突破 最終回】さらばエアサックス加藤!また会う日まで

2023/04/20(木)18:00
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スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。

感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントの最終回である。


 

 ♪仰げば尊し 天狗の恩
  教えの庭にも はや幾年

 いよいよこの時が訪れた。三度目の突破を見事果たしたエアサックス加藤。突破の報告と次への旅立ちの意志を編集天狗とオネスティー上杉に伝えるため、豪徳寺に現れた。

 振り返れば、3月末の感門之盟の前日、エアサックス加藤は暗かった。ただひたすら暗かった。P1グランプリのリハーサルが終わり、教室での打ち合わせも、片付けもすんだ後、学林堂の大理石テーブルに加藤は一人、虚空を見つめて佇んでいた。目は座っていた。教室の仲間も指導陣も、ダークサイドにまたも落ちてしまった加藤を遠巻きに見ながら、学林堂を後にした。
 近寄りがたい空気を撒き散らしていたエアサックス加藤に、いつも厳しい編集天狗が声をかけた。「どうしたんだ」「すべてダメでした。アリストテレス賞も、ビジュアルクロニクルもはしにも棒にもかかりませんでした」。自尊心だけは人一倍高い加藤は傷ついていたのだ。

 突破を果たしても、自己評価にこだわり続ける加藤。その怨念を成仏させるためというわけではないが、エアサックス加藤のビジュアルクロニクルをお披露目しよう。エアサックス加藤のクロニクル記事を参考にご覧いただければ幸いである。

 学校教育に馴染めなかったエアサックス加藤にとって、学校が時計と万年筆で出来た蛇で象徴されている。松岡正剛校長との出会いのきっかけになった『多読術』には蝉がとまっていて、羽の左が鳳凰、右が龍が描かれている。祖母からもらった翡翠に掘られたペンダントのような秘宝を模しているらしい。
 中性的な人物は英雄エアサックス加藤で、突破の杖を手にしている。死者のような遠いものから力を得ることを、『神曲』で煉獄に渡す船のように象徴。4本のオールの一つがサックスになっている。名付けて「陽史蝉書」。5年ほど地中に幼虫としていて、成虫としての生は短い蝉に自らを重ねたのであろうか。

 三度目にして突破を果たしたエアサックス加藤は、こともあろうかISIS花伝所へ進むことを決めた。コミュニケーション不全の兆候を見せる加藤の受講に、頭を抱える田中晶子花伝所所長の姿が浮かぶようだ。花伝所に申し込むと準備シートの記入が求められる。ここでエディスト読者に加藤がどう書いてきたのかをお披露目しよう。

花伝所入伝の動機をおしえてください。
 編集学校を知った時から全てのコースを受講しようと思っていました。自分にはかけ離れていると思える師範代というロールになって、どう見え方が変わるのか楽しみです。

 かけ離れているという自己認識はあるらしい。楽しみな反面、恐ろしくもある。。

 

花伝所で習得したいと思っていることは?
 花伝所ではある意味、人との会話一般に関して学んでいくと聞きました。自分は人と仕事やプライベートで付き合う時、相性のいい人と悪い人の差が激しく、合わないと何も喋れなくなってしまいます。しかしどんな相手でも編集工学を用いれば、その相手と自分の間に特有の面白さが生まれてくる気がするので、その方法の一端でも感じ取れればと思っています。

 相性の悪い人に指南ができなくなることが想像できるエアサックス加藤。果たして彼は変革されるのであろうか。

 

演習中、気にかけたり、留意したいことは?
・リズムよく回答すること。
・時間を決めて回答しその予定の中で終わらせること。
・自分は、他人のせいにはせずとも、過剰に自分のせいだと感じて落ち込むくせがある。それをどうにか違う状態にもっていく点。

 さすがに、編集天狗に口を酸っぱくして言われたことは頭に残っている加藤。しかし、それが実行できるかは別問題である。

 

 エアサックス加藤の入伝に対して、学林局のお姉様方の目はもちろん冷ややかだ。無理無理無理〜と半笑いである。そんな予想を覆すことができるのか。最後にオネスティー上杉から、ビジュアルクロニクルの絵と重ねながら心温まる応援のメッセージが届いた。

 今回突破できたことで、加藤くんの大切にされているものが形に言葉にできたことが大きいんじゃないかと思います。破を受ける前に自分が考えていることを言葉にするのが大変だったと思うけども、情報を削りながら彫塑していくことができたのが大きいことではないかなと感じました。杖になっている部分がサックスになっていけることを目指して欲しいですね。エアサックス状態でもいいので楽譜でも作っていくことができるといいんじゃないかなと思っています。


 加藤くんは、自分って想像以上に固まっているということ、それを自覚できているが故に悩んでいることが多いと思うんですね。花伝所を経て、師範代ロールになっていくと、それを動かすときに他の人の味方を借りることで、他視点になっていくのが自分をほぐす有効な方法だと気付けると思うんです、師範代が一番たくさんのわたし状態になれるように、いやがおうにもインプットとアウトプットする仕組みになっている師範代ロールを通じて動かされることがきっとあると思っていて、動かし具合をビビッドに感じるものがあると思う。すごいことをやろうと思いすぎないで、きたものを受けて進んでいった方がより自由に迎えるんじゃないかなと思います。頑張ってください。応援しています。そしてまたヤドカリ軍団で同窓会しましょう。 

 

オネスティー上杉

 

 編集天狗は、オネスティーほど甘くはない。これからは天狗はいない。エアサックス加藤一人で花伝所に挑まなければいけない。他者の評価や自己評価を気にする前に、目の前の課題を愚直に取り組め。言い訳をするな。締め切りには絶対に遅れるな。遅れることが恥だと思え。できなくてもそれが今の実力なのだから臆せずに出す。決してあきらめなければ、いつか道は開ける。それでも師範代になれなかったら、三度目の花伝所でまた会おう。でも、もう編集天狗が現れなくても済むことを願っている。そう締めくくり、手を振り去るエアサックス加藤を見送った。

 ♪思えばいと疾し この年月
  今こそわかれめ いざさらば

 さらば、エアサックス加藤。師範代としてエディストに戻ってくることを、読者は待っている。

 


【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー

■【エアサックス加藤の三度目の突破 最終回】さらばエアサックス加藤!また会う日まで

■【エアサックス加藤の三度目の突破12】イシスの女神が再生したものは?

■【エアサックス加藤の三度目の突破11】天狗に願掛け、結果はいかに?

■【エアサックス加藤の三度目の突破10】窓からミュージアムが見える?

■【エアサックス加藤の三度目の突破09】ダース・カトウの再生はなったのか?

■【エアサックス加藤の三度目の突破08】嗚呼!エアサックス母子応援団

■【エアサックス加藤の三度目の突破07】波乗りエアサックスの慢心を諫める

■【エアサックス加藤の三度目の突破06】たくさんの天狗とたくさんのわたし

■【エアサックス加藤の三度目の突破05】歴史的快挙そして新たなる野望

■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし

■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!

■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに

【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!

 
  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。