誰にでも必ず訪れる最期の日。
それが、どのような形で訪れるかはわからないが、一番ありえそうなパターンの一つが終末介護病棟での最期じゃないだろうか。沖田×華先生と言えば、自虐ネタのエッセイマンガでよく知られるが、物語作家としても超一流だった。深く死に向き合いたい方は、是非ご一読を。
(沖田×華『お別れホスピタル』)
12教室96名で開講した50[破]は、8月13日、76名の突破をもって終了した。突破率79%、近年まれに見る大勢の突破者誕生だ。最近では40[破]65名、47[破]60名以来の快挙である。猛暑日の最多記録がつづき、冷房していても暑いという声も聞こえるなか、学衆・師範代とも集中をきらさない稽古ぶりに編集にかける本気をみた。
[破]では、文体、クロニクル、物語、プランニングと4つ編集術を学ぶ。最初に学ぶ文体編集術を土台として、さまざまな世界と対峙し、そのなかに新たな関係を見出し、自分の見方を仮説したり、メッセージしたりするのが[破]の稽古である。基礎となるのは文体編集術、松岡校長流の文章術だ。世に文章術、文章表現のハウツーは多いけれど、イシスの[破]は唯一無二の型を伝授する。実用的にも夢幻的にも使える方法が、シンプルなお題で学べる。こんなところはほかにないと自負している。
先月(2023年7月)に刊行された『松岡正剛の国語力』には、こんなことがあかされている。
国語力の獲得には「なり・ふり」を感じること、ZPDのように自己の発見よりもむしろ他者との出会いを実感すること、未知の領域で「埒をあける」ことが重要である。
国語の「なり(成り)」とは言葉の由来のこと、「ふり(振り)」は言葉のふるまいのことだ。[破]の稽古でいえば、伝えたいメッセージにふさわしい言葉を選び抜くこと、言葉のつながりや対応関係に敏感になることといえるだろう。
ZPDとは(Zone of Proximal Development)のことで、幼児の「発達の最近接領域」だ。幼児が何かを「わからない」から「わかる」ようになる、「できない」から「できる」になる。そのあいだにある「埒(zone)」である。幼児は発達段階的に知覚領域と認識を広げていって「自己」を獲得するのではなく、自分と他者、自分と世界にランダムに出会っていくなかで、あるとき一挙果敢に「自己」を確立するという説だ。
[破]でいえば、非日常的な問い、興味のなかったモノゴトの歴史、なじみのない本や映画に、始めはよそよそしく出会う。だんだんとつきあっていくうちに、一挙に関係を結べる「ワカル」時がくる。未知の領域に「埒」をあけていけるように、お題と教室という仕組みがあるのだ。わたしたちは、子どもが自己を確立するように、いまからでも新たな国語力、実のところは「編集力」を獲得できる。
どんな本であれどんな文章であれ、そこからはそれなりのZPDや埒を感じることができるはずで、とくに国語力においては「意味の街並み」や「意味の埒」が成立する範囲に気づくようになることが、かなり効果的なのだ。
『松岡正剛の国語力』(p254)
[破]の稽古は、幼児が世界と自己を「ワカッタ」する方法にも似ている。師範代や師範が何度も言う「書きながらメッセージを発見する」「書いているうちに書きたかったことが見つかる」というのは、未知の領域で「埒」をあけるということだ。わからないながらもお題に向かい、外に情報をとりにゆき、コンパイルを重ねてみる。自分の言葉で言い換えて、自分なりにピンとくるたとえにしてみる。するといつか「これだったのか!」と埒があく。
わかりきった世界から出たいけど、未知の世界のよそよそしさがこわいという人は多い。突破したみなさんは、4か月の稽古を経て、埒をあける方法を手にした。臆することなく憧れの未知の世界へ向かってもらいたい。
<追伸>
突破した学衆には松岡校長の『知の編集工学』が贈られる。実は来月増補版が刊行され、カバーも新しいデザインが準備されている。校長のポートレイトバージョンはレアアイテムになる。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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