私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。

「旗」は古来、何かを指し示すものとしてあった。日本では旗(幡)は神を招き入れるものであり、古代イスラエルでは人々の集まる中心地に旗が掲げられた。古代ギリシャは都市ごとに旗にしるしを描き、戦国武将も海賊も、おのれの旗をあげた。
[守]の師範代たちもまた、それぞれの教室に旗を掲げる。「フライヤー」という名の旗だ。師範代になってまずやることは、フライヤー制作なのだ。なぜか。教室の世界観をイメージで伝えるビジュアル、見る人の「注意のカーソル」をひきつけるキャッチコピー、守の講座や教室の魅力を伝えるボディコピーの三位一体で、自分たちが向かう「南」を示すためにほかならない。
では、10月30日に開講を控える、52[守]の師範代たちは、どんな「旗」で学衆たちを迎えようとしているのか。
18教室のフライヤーの中から際立ったものを、相部礼子、角山祥道の両師範が紹介する。
フライヤーが真っ先にはためく
大和丈紘師範代●ノート結索教室
相部:早さに目を見張りました。52[守]では、フライヤー制作のガイダンスを実施ししたのですが、終了後2時間も経たないうちに「一つ作ってみました」と初稿をアップ。初稿からすでに、蠢き出す情報の音が聞こえてくるようでした。
角山:完成形も遊び心満載です。現代社会を「ふきげんな検索」と見立て、「ゆかいな結索」=編集稽古と対にする。ビジュアルといい、この編集方針に貫かれていましたね。
教室模様がまなこに浮かぶ
高田智英子師範代●語部おめざめ教室
角山:案を提出するたびにビジュアルもボディコピーも変わりました。「捨てる」ことを厭わないのは、高田師範代の強みでしょう。
相部:手描きの目に注目しました。暗闇の中で大きな目が開くと、そこには学衆が集っている様子が。高田師範代には、もう教室の将来像が見えていますね。「編集稽古、目覚めろ我ら」という力強いキャッチコピーも、語部が民衆の心を振るいたたせるかのようでした。
角山:睫毛が「ISIS」なのも隠れたポイントです。
かすかな声に耳をすませて
瀬尾真喜子師範代●即断ピアニッシモ教室
相部:余計なものをそぎ落としたシンプルな線が力強いです。
角山:ビジュアルとしては非常にインパクトのある作品になりました。石井晴美師範代の変速シフト教室といい、町田有理師範代の校長バージョン教室といい、52[守]は、キレのいいビジュアルが揃いましたね。
相部:瀬尾師範代はフライヤーの制作過程で、「師範代になるとはどういうことか」という学びも得ていました。「フライヤーを作る理由」のひとつが、ここにありますね。
編集的自己の生まれる日
野崎和彦師範代●はじき・おはじき教室
相部:真ん中にどんとある「遊」の一文字に、「遊びをせんとや生まれけむ/戯れせんとや生まれけん」の今様が頭に浮かびました。稽古を遊びつくし、編集の世界に新たに生まれなおす体験をするんだ、という野崎師範代の強い意志を感じます。
角山:ソフトを駆使せずに手作業でやり尽くしたところに、「編集」のひとつの形をみました。望むらくは、もっとボディコピーをしっかり書いても……。
相部:フライヤー制作は多くの師範代にとって「未知」の体験です。しかし「仮留め」を恐れず、案をどんどん出していった師範代のフライヤーは、「こんな教室にしたい!」という意気込みも鮮明になりましたね。
角山:しかし、出来上がったフライヤーも、いってみれば「仮留め」。未知の学衆の出会いで、旗の色も形も変わっていくのでしょう。
相部:翻る旗の下、いよいよ52[守]の未知への旅が始まります。
文:相部礼子、角山祥道
アイキャッチ:掲載したフライヤーは、左上から順に、飯田泰興師範代/風月盆をどり教室、内村放師範代/カミ・カゲ・イノリ教室、大濱朋子師範代/白墨ZPD教室、新井隆子師範代/北方ボタニカル教室。
◆イシス編集学校 第52期[守]基本コース募集中!◆
日程:2023年10月30日(月)~2024年2月11日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
テスト・課題・就活には編集力が一番効く 学校のテスト結果に先がけて、55[守]番選ボードレール「一種合成」の講評が揃った。5日間にわたり届いた10本のほとんどに近大生の名前があった。やはり今期はひと味違う […]
緊急開催!!! 特別講義「佐藤優の編集宣言」の読前ミーティング
特別講義「佐藤優の編集宣言」(7月6日開催)まであと一週間という金曜、55[守]最初の番選ボードレールの講評のさなか、特別講義チームによるミーティングが開催された。 数日前に佐藤優さんから課題本『消された外 […]
「この部屋、昼はこんなにまぶしかったんですね」 東京から駆け付けた学林局の衣笠純子が、教室を見てつぶやいた。6月17日、大阪は快晴。近畿大学・アカデミックシアターのACT-116はガラス張りで、午後の光 […]
第2回創守座の特徴は、なんと言っても学衆のオブザーブだ。指導陣が一堂に会する場を、半分、外に開いていくというこの仕組み。第1回の創守座が師範代に「なる」場だとすると、この回では師範代になることを「見せる」場にもなる。オ […]
かつて「ケイコとマナブ」というスクール情報誌があった。習い事である”稽古”と資格取得にむけた”学び”がテーマごとに並んでおり、見ているだけで学んだ気分になれたものだ。 今や小学生の約3人に2人は習いごとをしているが、 […]
コメント
1~3件/3件
2025-07-03
私の28[花]キャンプは、吉阪隆正の建築思想【不連続統一体】の体験だった。場面ごとに異なる空間が次々と立ち現われてくる。よく分からないままに一周すると、ようやく建物を貫く原理のようなものが見えてくる。この「遅れて」やってくる全体性がたまらなかった。
2025-07-02
連想をひろげて、こちらのキャビアはどうだろう?その名も『フィンガーライム』という柑橘。別名『キャ
ビアライム』ともいう。詰まっているのは見立てだけじゃない。キャビアのようなさじょう(果肉のつぶつぶ)もだ。外皮を指でぐっと押すと、にょろにょろと面白いように出てくる。
山椒と見紛うほどの芳香に驚く。スパークリングに浮かべると、まるで宇宙に散った綺羅星のよう。
2025-07-01
発声の先達、赤ん坊や虫や鳥に憑依してボイトレしたくなりました。
写真は、お尻フリフリしながら演奏する全身楽器のミンミンゼミ。思いがけず季節に先を越されたセミの幼虫たちも、そろそろ地表に出てくる頃ですね。