タッパーウェアはそのまま飼育ケースに、キッチンペーパーは4分割して糞取り用のシートに。世界線を「料理」から「飼育」に動かしてみると、キッチンにあるおなじみの小物たちが、昆虫飼育グッズの顔を持ち始める。
勢いづいたら止まらない。
大会前の前哨戦ではやや不安を感じさせる内容だったものの、そこから奮起して本番に向けて練習を重ね、ワールドカップでは「Our Team」のスローガンの下、周囲をアッと言わせる快進撃を続けたラグビー日本代表を思わせる教室模様が、イシス編集学校の51[破]に生まれている。
イシス編集学校において、[破]の指南は、[破]師範代になってはじめて学ぶ。伝習座の翌日から、師範1人と師範代2~3人のチームで、開講前の10日間で師範代を徹底的に鍛える「錬破」という指南トレーニングが行われるのだ。錬破では、文体編集術という7つのお題について、毎日一題ずつ回答事例に指南を行う。師範からダメ出しをされて再指南をしたり、おかわり指南を行うこともある、昼夜を問わず繰り広げられる錬磨の場である。
筆者は、師範として二人の師範代の指導を担当した。スピード感のある指南が持ち味の森下揚平師範代(マジカル配列教室)は、錬破当初、大局的に回答を見ることが苦手だったり、逆に回答の中の不足を見逃すところが見られた。朗らかで遊び心いっぱいの西宮牧人師範代(カンテ・ギターラ教室)は、物語講座や多読ジムスペシャルを受講してきた。そのリソースを活かした軽快な指南が持ち味だが、回答の不足の見極めや評価を指南の言葉にすることに苦労していた。
先達の指南事例について、師範代と師範の3人で共読する中では、回答の不足を明示的に書くべきか、暗示的に書いても伝わるかを検討した。学衆にどこまで求めるか、うんと遠いターゲットを示すべきか、一歩一歩近づくように指南するか、二人の師範代は[破]の指南を深めていった。
錬破は、延長に延長を重ね、10月16日の開講当日の深夜まで続いた。それだけ、二人の師範代の51[破]にかける思いは強かった。開講直前、チームラウンジで西宮師範代が呟いた。
「ですます調のよそよそしい口調が原因で、指南が窮屈な印象になっていた」
「指南の言葉は、やりたいモードで。 師範代が固くなってしまうよりずっといい」
筆者はこう返した。錬破で徹底的に基礎を繰り返した師範代にだからこそかけられる言葉だった。「型を守って型に着き、型を破って型へ出る」師範代は、これを実践してみせたのだ。
二人の師範代は、錬破を通じて、自分の指南を徹底的に見直した。開講2週間がたった現在、学衆に響く指南をテンポよく届けている。両教室とも回答、再回答が絶え間なく届く実に賑やかな教室模様となっている。
開講前の準備期間は、本番に向けての体力作りの時期。この期間でいかに指南のベースを身体に通すことができるかが、開講してからの教室運営の礎となる。鉄を打つような熱い鍛錬を経て、[破]の指南の手ごたえを得た師範代は、キックオフのホイッスルとともに、それぞれの「らしさ」のユニフォームを纏い、走り出す。錬破での充実の日々があるからこそ、教室では、堂々とそれぞれの得意を活かしてプレイができる。
この、編集学校の仕組みが世の中の組織に広がっていったなら、「失敗を恐れず」なんて常套句を使わずとも、毎日をいきいきと過ごせる人が増えるのではないか。自分たちの持ち味を活かしながら颯爽と指南を届ける師範代と、[破]の稽古に熱中する学衆を間近に見ながら考える。
51[破]はまだ始まったばかり。
秋から冬へと移り変わる季節の中で、今後、各教室でどんな景色が見られるのか、どんな意外なできごとがあらわれるのか、全く違う10個の世界観を持つ51[破]の教室から今後も目が離せない。
文/森川絢子(51[破]師範)
写真/後藤由加里
左:森下揚平師範代 右:西宮牧人師範代
イシス編集学校 [破]チーム
編集学校の背骨である[破]を担う。イメージを具現化する「校長の仕事術」を伝えるべく、エディトリアルに語り、書き、描き、交わしあう学匠、番匠、評匠、師範、師範代のチーム。
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コメント
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