51破の開講がいよいよ二週間後に迫った。「型を破って型に出る」が破の眼目。学衆にどう指南を手渡せばいいのか。最初の伝習座が豪徳寺ISIS編集学校で開催された。つどった指導陣の意気込みで、学林堂は夏真っ盛りだった。
破の最初の稽古は文体編集術。読み手に何を伝えたいのか、どうすれば伝わるのかを徹底的に鍛える。その中のインタビュー編集術では、学衆がインタビュアーになって相手の魅力を引き出し、その魅力を読み手に伝えるまでを稽古する。文体編集術レクチャーでは、「生きた編集術を体現するとはどういうことか」をテーマに、得原藍師範と森川絢子師範が遊刊エディストのライター上杉公志氏、福井千裕氏を招きインタビューを行った。
ここではかいつまんでその内容をお伝えしたい。
貪欲にISISのイベントを取材し続けている福井。記事の語り口はユーモラスで、意外な組み合わせが読者を引き込む。松岡校長が「トレーサビリティに優れる」と高く評価する注目のエディストライターだ。
「取材情報の選別はどうしているのか」の問いに、軽井沢風越学園で開催されたISISワークショップ取材の様子を語った。
ぶらぶらしていると、中学生の生き生きした姿に惹かれ記事のテーマは決まった。しかし「きれいごとにしたくない」という意地があったという。どう伝えるか。
「自分だけで書こうとするとすぐに行き詰まってしまう」
そこでまず考えたのは、どうやって編集学校と重ねるかということだった。ネット上の風腰学園の記事を読みあさり、注目したのがライブラリ。学校の真ん中に設えてあることを、本を大事にする編集学校との結び目にした。
「わたしがここにいたからこそ浮かび出ることを大事にする」
福井の視点は、子供の表情を逃さない。ホワイトボードの不気味な顔の絵に、気持ち悪そうに顔をしかめる中学生。
「失敗も含めて、きれい事じゃない記事にしたい」
創刊当時内輪ネタの多かったエディストを、面白くないと感じたこともチラッと漏らし、メディアの読み手を意識することの重要性を強調した。
遊刊エディストJUSTチームの上杉。この春からチームを率いている。メンバーの注目ポイントが見事にバラバラなのが面白いと、夫々の興味に一緒に向かうディレクションを意識する深〜い包容力の持ち主。
康代学匠にサプライズを仕掛けた記事について質問を投げられると、「あれは寝耳に水だった」ことをあかす。エディストライターにとってもサプライズ、これは何かしたかったと当時を振り返る。守の学匠を10期つとめた節目、誕生日のサプライズとは分けが違う。くわえて松岡校長が引き出した「私もちょっぴり孤独になるんです」の一言で上杉の心は沸き立つ。笑顔の印象が強い康代学匠のぽろっとこぼした心情。どう伝えれば伝わるのか。
「サプライズであるからこそ、普段と違う康代学匠を引き出したかった」
舞台を降りた康代学匠を直撃し、赤のリップというキーワードを仕入れる。オーダーを変更して物語にするという設えを考える。文体でサプライズを表現して読者にも驚きを伝えたい。読み手に伝えるための意図を幾層にも込める。そうして書き上がった記事には編集工学が綾として織り込まれている。
「編集学校で起きていることを独り占めしたくない。書くことは苦しいが、続けることでえられるものがある」
社会と編集学校の出来事を照合、記事にし続ける上杉。書き続けるエンジンは遊刊エディスト。読み手の存在は書き手の背中を押してくれるのだ。
インタビュアーをつとめた得原藍師範(左)、森川絢子師範(右)
リハで松岡校長の大幅なディレクションを受け、師範二人はわずかな時間の中でロールの意味を再考した。本番では相手の意識が前に向くよう、機をみて質問を挟み、後戻りさせないよう気を配る。質問は当初の3割まで絞ることで場にスピード感をだす。語りの中のキーワードを言い換え「マーキング」し、流れに句読点を打つ。このインタビュアーとしてのかまえが、二人のライターから多くの話を引き出した。
西宮・B・牧人
編集的先達:エルヴィン・シュレーディンガー。アキバでの失恋をきっかけにイシスに入門した、コンピュータ・エンジニアにして、フラメンコ・ギタリスト。稽古の最中になぜかビーバーを自らのトーテムにすることを決意して、ミドルネーム「B」を名乗る。最近は脱コンビニ人間を志し、8kgのダイエットに成功。
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