オンライン伝習座速報「意味単位のネットワークとは」桂師範の用法解説

2020/05/02(土)19:01
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師範が師範代へ方法の南を指す。お題と回答の虫の目で現場を駆け抜ける師範代を、編集工学や社会といった鳥の目で別様の可能性へ導く。

用法2の解説を担当する桂大介師範は「テレワークにはしない」という、先週のハイパーでの6カメ体制に刺激を受け、複数カメラで講義に入った。

 

「コロナパンデミックで情報が過剰かつ一様になりつつある今、意味単位のネットワークを取り上げたい。」

 

まずは情報そのものに立ち返る。

 

「情報とは区別力、差異である。情報というと、例えばこれはペットボトルだ、キャップだなどと、一対一対応と思われがち。

 そうではなくて、何かと何かを区別するし、他との関係において情報を捉えるということ。」

 

日本は雨の表現が他国に比べて多く、虹は国によって色や数も異なる。

つまり、私たちは「言葉」という情報によって世界を切り分けている。

 

「言葉は一対一なのではなく、もともと繋がっていて独立言葉は本来ない。」

 これが意味単位のネットワークであり編集工学の基本。

 だから獲得している語彙によって見ている世界が変わる。」

 

ウイルスといっても、今では「コロナ」をさすが、数年前は「コンピュータウイルス」を連想されることが多かった。

言葉という情報は、本来は揺らいでいるものである。

 

「たとえば『ウイルスっぽいもの』を思い浮かべると、噂話や信頼、言語など色々ある。

 これが『わけるとわかる』ということ。分類すると別の概念とつながっていく。」

 

意味のネットワーク上のシナプス結合が編集で起こる。

アナロジカルシンキングとは意味単位のネットワークの上の移動とも言える。

 

終盤、新しいスコアを作るお題と重ね、「評価と評判」についてSNSに触れる。

 

「SNSのリツイートは『見方』『好き』を評価している。
 だが評価は数でししか評価されず、本来の多様な見方や好きが均一化されてしまう脆弱性がある。」

 

では、押し寄せてくる評判や、均質化された評価に振り回されないためには。


「松岡校長に『何かをやるとするなら50人のために10年続けるつもりでやる』といった言葉がある。

 評判に飲まれてしまうのは10年やるつもりでないから。評判は否応なくやってくるもの。

 50人のためになんとか言葉を尽くして粘り強くやっていくこと。」

 

言葉という情報がもつ、本来の意味単位のネットワーク。

用法2では編集思考素や階層といった複数の情報を関連づけることによって、また新たな別様の可能性へ向かっていく。

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

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山田細香

2025-06-22

 小学校に入ってすぐにレゴを買ってもらい、ハマった。手持ちのブロックを色や形ごとに袋分けすることから始まり、形をイメージしながら袋に手を入れ、ガラガラかき回しながらパーツを選んで組み立てる。完成したら夕方4時からNHKで放送される世界各国の風景映像の前にかざし、クルクル方向を変えて眺めてから壊す。バラバラになった部品をまた分ける。この繰り返しが楽しくてたまらなかった。
 ブロックはグリッドが決まっているので繊細な表現をするのは難しい。だからイメージしたモノをまず略図化する必要がある。近くから遠くから眺めてみて、作りたい形のアウトラインを決める。これが上手くいかないと、「らしさ」は浮かび上がってこない。

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025