タッパーウェアはそのまま飼育ケースに、キッチンペーパーは4分割して糞取り用のシートに。世界線を「料理」から「飼育」に動かしてみると、キッチンにあるおなじみの小物たちが、昆虫飼育グッズの顔を持ち始める。
イシス編集学校についての本の執筆を続けています。学衆、師範代、師範経験者の言葉に助けていただきながらの執筆ですが、その途中で、出版元になる予定の編集者から、熱意ある檄が飛ばされました。次のようなものです。
インターネット、SNSが普及している時代にあって、比較的若い世代の特徴でもありますが、「相互編集」がなぜ必要なのかの理解がうすく、理解がない現状があります。ここを飛ばすことは危険です。
コスパ重視で、答えだけが欲しい、自分が傷つくのはもっとも避けたい。
最短でコツを知りたい。
「編集する能力」をお互いに鍛えていく必然性をおそらく必要としていないのです。
平たく言えば、「なぜ一人ではダメなのか」。
この編集者からの要望で、「相互編集」こそ、今とこれからの世界が必要としていることなのだ、と私も気づきました。そこで、なぜ必要なのかについて、本に組み入れる前に編集者に以下のように伝えました。みなさんと共有し、「もっとこういうことを書いて欲しい」「相互編集の必要性をこういうことで痛感した」という意見があれば、ぜひ寄せて下さい。
まず、松岡校長の次の言葉を引用しました。
・私たちは、そして、それらは、すでに名前がついている。だから、新たな自由を加えてやるべきだ。それらは、それを待っている。
・私たち(それら)は、すでに記述された中にある。それならば私たち自身を複数の属性によって記述していくべきなのだ。
・私たち(それら)は、すでに組織化されている。
・私たち(それら)は、とっくに何かと関係づけられている
・私たち(それら)は、つねに相互関係ネットワークの中にいる。
・私たち(それら)は、もともと制限をうけている。
このように私たちが「すでに投げ出された存在」であるからこそ、〈自己編集化〉を始められる。そこに〈相互編集化〉がおこる。「私が本書を通して言いたかったことは、この点に尽きている」と、『知の編集工学 増補版』にあります。
編集工学は「自分」とか「私」というものがたくさんの他者や出来事とつながっている、と考えています。あらゆる生物が相互編集世界の中にいます。人間も同様です。その前提があるからこそ、個々人は環境や世界や他者と相互編集しなければ、「今の自分」から自由にはなりません。しかしそのためにはどうしたら良いか? 単に知識をためることでは、私たちは自由になりませんよね。知を編集能力によって、自在に使いこなすことが必要なのです。他者の体験、知見、考えとの相互交換こそ、自己編集のトリガーになるのです。
その能力を拓く仕組みが、イシス編集学校の方法です。
私は以上のように考えていますが、ご意見どんどんお寄せ下さい。
イシス編集学校
学長 田中優子
田中優子の学長通信
No.04 相互編集の必要性(2025/04/01)
No.03 イシス編集学校の活気(2025/03/01)
No.02 花伝敢談儀と新たな出発(2025/02/01)
No.01 新年のご挨拶(2025/01/01)
アイキャッチデザイン:穂積晴明
写真:後藤由加里
田中優子
イシス編集学校学長
法政大学社会学部教授、学部長、法政大学総長を歴任。『江戸の想像力』(ちくま文庫)、『江戸百夢』(朝日新聞社、ちくま文庫)、松岡正剛との共著『日本問答』『江戸問答』など著書多数。2024年秋『昭和問答』が刊行予定。松岡正剛と35年来の交流があり、自らイシス編集学校の[守][破][離][ISIS花伝所]を修了。 [AIDA]ボードメンバー。2024年からISIS co-missionに就任。
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2026年が明けました。そして、学長通信が2年目に入りました。この新年はおめでたいのか、どうなのか、という微妙に戦雲が垂れ込める新年です。 12月に鈴木健さんと対談して、本当に良かった、と思います。この、エディテ […]
先月は『不確かな時代の「編集稽古」入門』の刊行予告をしました。無事刊行されました。刊行後にもっと詳しく書く、と約束したのですが、その前にぜひ書いておきたい出来事が起こってしまったので、今月はそちらです。 […]
【田中優子の学長通信】No.12 『不確かな時代の「編集稽古」入門』予告
この表題は、もうじき刊行される本の題名です。この本には、25名もの「もと学衆さん」や師範代経験者たちが登場します。それだけの人たちに協力していただいてできた本です。もちろん、イシス編集学校のスタッフたちにも読んでもらい […]
今年の8月2日、調布の桐朋小学校の校舎で「全国作文教育研究大会」のための講演をおこないました。イシス編集学校のパンフレットも配布し、当日はスタッフも来てくれました。 演題は「書くこと読むことの自由を妨げ […]
コメント
1~3件/3件
2026-01-27
タッパーウェアはそのまま飼育ケースに、キッチンペーパーは4分割して糞取り用のシートに。世界線を「料理」から「飼育」に動かしてみると、キッチンにあるおなじみの小物たちが、昆虫飼育グッズの顔を持ち始める。
2026-01-22
『性別が、ない!』新井祥
LGBTQなどという言葉が世間を席巻するはるか以前、このマンガによって蒙を啓かれた人も多いのでは?第一巻が刊行されたのが2005年のことで、この種のテーマを扱った作品としてはかなり早かった。基本的に権利主張などのトーンはほぼなく、セクシャルマイノリティーの日常を面白おかしく綴っている。それでいて深く考えさせられる名著。
2026-01-20
蛹の胸部にせっかくしつらえられた翅の「抜き型」を邪険にして、リボンのような小さな翅で生まれてくるクロスジフユエダシャクのメス。飛べない翅の内側には、きっと、思いもよらない「無用の用」が伏せられている。