週刊キンダイ vol.006 ~編集ケイコが行く!~

2025/06/18(水)12:10 img
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 かつて「ケイコとマナブ」というスクール情報誌があった。習い事である”稽古”と資格取得にむけた”学び”がテーマごとに並んでおり、見ているだけで学んだ気分になれたものだ。
 今や小学生の約3人に2人は習いごとをしているが、大学生になると1割ほどに減る。ゼミの課題やレポート、授業に加えてバイトや遊びなど、あれこれやることが多いのだろう。

 

 編集稽古はそんな大学生事情などお構いなしにやってくる。第1回番選ボードレール(番ボー)の〆切は6月15日。「とにかくエントリーを!」とマグロワンダフル教室の稲森師範代はダイレクトメッセージ大作戦で1人ずつに声がけし、6名がエントリーする大健闘を魅せた。その2日後には、近大生の特別プログラム稽古Dayの開催だ。学林局の衣笠純子は編集ケイコとなって再び新幹線に飛び乗り、東大阪キャンパスACT-116へ向かう。

 

     (東大阪キャンパスでの編集稽古)

 

稽古Dayにいくと毎日稽古したくなるのが不思議です。
(マグロワンダフル教室 尾形知美さん)

 

 場は何かを動かす力がある。止まっていた稽古が進み出した。
 ほとんどの学生はエディットカフェでの発言が少なめ。「他の人の回答をみてどう思う?」と聞いてみると「めっちゃわかるーとか、あるんですけど」と発言はなくとも感は動いているようだった。回答と指南のやりとりが縦糸ならば学衆同士の交し合いは横糸。教室は編み込まれてこそ模様となっていく。
 「編集学校って人間関係がけっこう長く続くんです。だから、稽古を通じて大人と知り合えるのは貴重な経験なんです」と稽古Dayのためにわざわざ東京から駆けつけた編集ケイコがいうのだから間違いはない。

 

     (何気ない会話から編集熱が高まっていく)

 

 話題は番ボーへ。「師範代は”これでいい”とはなかなか言ってくれない」と苦笑い。辞書を引っ張りだして、徹底的に調べ、回答をくり返すことで、突然「あ、これだ!」が訪れたという。

 

 稽古とは何か。字義通りには「古を稽える」ということである。古典に還るというのではない。「古」そのものに学ぶこと、そのプロセスにひたすら習熟すること、それが稽古だ。

 千夜千冊 1508 夜 『世阿弥の稽古哲学』 西平直

 

 「古」そのものに学ぶとはどういうことだろうか、単に古典を知るだけではなく稽古によって言葉の本来でもある「古」に向かっていく姿、それ自体が稽古なのだ。番ボーで辞書を引いて引いてやっとたどり着いた先に、こんな意味があったのか!という驚きに出会う。出会ってしまったら驚く前には戻れない。
 使い慣れた言葉にこそ、古(いにしえ)にむかっていきたくなる。編集稽古は休まることを知らないのだ。

 

とまらぬ編集稽古で、得意手への扉をひらこう!

 

アイキャッチ/稲森久純(55[守]師範代)
文/一倉広美(55[守]師範)


週刊キンダイ 連載中!

週刊キンダイvol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
週刊キンダイvol.002 ~4日間のリアル~

週刊キンダイvol.003 ~週刊キンダイ vol.003 ~マグロワンダフルって何?~

週刊キンダイvol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~

週刊キンダイvol.005 ~ハンシがゆく~

 

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コメント

1~3件/3件

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本

(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg