【三冊屋】ウイルスまみれのわたしに(小倉加奈子)

2020/10/11(日)09:40
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●書名:『ウイルスの意味論 生命の定義を超えた存在』山内一也/みすず書房
 書名:『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』吉川浩満/朝日出版社
 書名:『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』
    ナシーム・ニコラス・タレブ、望月衛(監訳)、千葉敏生(訳)/ダイヤモンド社

 ヒトの遺伝子の半分は、過去に感染したレトロウイルス由来のものであるらしい。
 昨今、新型コロナウイルスパンデミック下の状況がウィズコロナと呼ばれたり、その後を見据えた目標としてアフターコロナという言葉が声高に叫ばれたりしているが、わたしたちはそもそもとっくにウィズコロナ状態だったいうことだ。そしてこの先もずっとウイズコロナであり続けるのだろう。

 

 『ウイルスの意味論』において、山内先生は、「ウイルスは細胞の中で生きて、細胞の外では死んでいるのです」と云う。つまりウイルスはわれわれと共生する時に生命として輝く、ということだ。山内先生は「ウイルスは身体を捨てて情報として生きるのです」ともいう。乗り物を変えながら広がるなんて、たしかにまるで情報である!

 

 ウイルス学という学問を越えて、ウイルスのふるまいを別の現象に見立てていけば、SNSやテレワークの方法を含め、まだまだ色々なことを学べる気がする。ダーウィンの進化論を絶滅という観点から見直した『理不尽な進化』と、理不尽さに反脆弱と「なるべくリスクを冒せ!」と読者の背中を押すタレブの最新作『身銭を切れ!』。この2冊は単独でも十分に読みごたえがあるが、ウイルスの意味論というスコープを持って読むと、ウィズコロナならではの見方が得られるだろう。


 ウイルスまみれのわたしに気づき、情報パンデミックを乗り切る方法を見つける、今まさに必読、必携の三冊。

 

●3冊の本:

 『ウイルスの意味論 生命の定義を超えた存在』山内一也/みすず書房
 『理不尽な進化 遺伝子と運のあいだ』吉川浩満/朝日出版社
 『身銭を切れ 「リスクを生きる」人だけが知っている人生の本質』ナシーム・ニコラス・タレブ、望月衛(監訳)、千葉敏生(訳)/ダイヤモンド社

  • 小倉加奈子

    編集的先達:ブライアン・グリーン。病理医で、妻で、二児の母で、天然”じゅんちゃん”の娘、そしてイシス編集学校「析匠」。仕事も生活もイシスもすべて重ねて超加速する編集アスリート。『おしゃべり病理医』シリーズ本の執筆から経産省STEAMライブラリー教材「おしゃべり病理医のMEdit Lab」開発し、順天堂大学内に「MEdit Lab 順天堂大学STEAM教育研究会」http://meditlab.jpを発足。野望は、編集工学パンデミック。

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