氷河期世代らしく軽やかに 林愛の未知奥ふしぎ旅

2019/10/26(土)13:00
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 東京下町出身の林愛(10[離])は、香港で日本語教師、情報関連会社、保育事業会社と転職を重ねた。身のこなし方が就職氷河期世代らしい。

 

 3・11後に、宮城県気仙沼市の神社に嫁ぐ。宮城県北東に位置し、津波で甚大な被害を被った土地だ。そこで荒俣宏の来訪神・マレビト関連の講演を聞き、フィールドワークを始める。岩手県南への旅で手にしていたのは『荒俣宏・高橋克彦の岩手ふしぎ旅』(荒俣宏 高橋克彦、実業之日本社)だった。


 2018年8月に女児を出産した。だが、林のフィールドワーク熱は収まるところを知らない。秋田のマタギの里では、山民や職能民の生活をかいま見た。南朝が拠点とした福島県の霊山では「まつろわぬ東北」を体感した。


 東北は広大な面積のわりに、十把一絡げに扱われがちだ。林は、そんな未知奥の幾重にも重なる襞をかき分ける。足どりは、あくまでも軽やかだ。

 

  • 井ノ上シーザー

    編集的先達:グレゴリー・ベイトソン。湿度120%のDUSTライター。どんな些細なネタも、シーザーの熱視線で下世話なゴシップに仕立て上げる力量の持主。イシスの異端者もいまや未知奥連若頭、守番匠を担う。