[ISIS for NEXT20#1][前編]名司会者は師範代に学ぶ ー局長佐々木千佳の膝枕力―

2020/12/29(火)20:20
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こんにちは、そして、こんばんは。
ラジオエディスト アシスタントの梅澤奈央です。

 

昨日放送の第1回、お楽しみいただけましたか。

今年の年末は、テレビよりもラジオエディスト。

 

>>>[ISIS for NEXT20]#1_局長佐々木千佳の膝枕力 ―年末特番!ラジオエディスト音声配信―

 

佐々木局長のたおやかなお声に、パーソナリティ深谷もと佳が色っぽく切り込む。

エディットカフェで出会うのとはまた違う、おふたりの「らしさ」を感じられたのではないでしょうか。

 

 

今日からは3日間にわけて、この模様をテキストでお送りいたします。

まずは、[前編]。

佐々木局長が、ご自身の司会術について秘伝を明かしてくださったパートです。

 

イシスの司会といえば、佐々木。

佐々木局長がひとこと発するだけで、会場全員がいっせいにうなずく。

一座をふわりと抱きしめたり、きゅっと引きしめたり。

あの名司会の秘密は、じつは師範代に学んでいたとか。

 

[前編]は、0:00〜7:55ころまでのダイジェスト。どうぞお楽しみください。

 

>>>[目次]はこちら

聞き手:深谷もと佳

 


#1 局長佐々木千佳の膝枕力 [前編]名司会者は師範代に学ぶ


 

―――2020年11月10日、夜の東名高速を白いZ4が疾駆していた。目指すは豪徳寺、ハンドルを握るのは深谷もと佳(花目付、36[守]FMサスーン教室師範代)。小田原から1時間半の道のり、彼女はイシスの将来を追い越そうとしていたのだ。

 

深谷は考えた。松岡正剛校長が2000年にイシス編集学校を立ち上げたとき、失われた十年を概括した「十の見切りと五つの方針」があった。校長は、きっと20年先のいまさえ予見していたはずだ。ならば、イシスハタチのいま、私たちがするべきは足跡をなぞるだけでなく、切り拓くべき道の先を眺望すること。

 

イシスはどんな40歳を迎えるのか。これからの20年をつくるキーパーソンに話を聞かねばなるまい。深谷がまっさきに狙いを定めたのは、学林局局長・佐々木千佳だった。

 

深谷は豪徳寺ISIS館2階、応接間に通された。卓上にMacBookAirやICレコーダーを並べ、録画・録音のセッティングを手早く済ませる。差し向かいに座った佐々木と深谷は、じっくり語り合うのはこれが初めて。想い人同士の初々しいはにかみなど即座に吹き飛び、深谷はマイクを突きつけた。まずは、佐々木の得意手「司会」の方法を聞き出す。

 

 

■佐々木千佳の司会術に迫る 膝枕のコツは、モードにあり

 

深谷:佐々木局長の司会っぷりは定評がありますよね。感門之盟や伝習座など、松岡校長の濃くてボリューミーな話であっても一瞬でまとめて、次のコンテンツへつなげていく。あの要約力、なにかコツはあるんでしょうか。

 

佐々木:司会を任されて最初のころは、校長にすごく怒られていましたよ。「なんであのときに一言言わないんだ」って。でも、その指摘は、コンテンツをうまくダイジェストできているかっていうことではないんです。

 

深谷:といいますと?

 

佐々木:司会がひとこと挟むなら、それまでに運んできた内容やモードを受けないと意味がない。「それでは次へまいります」って言っちゃうと、前のことをぜんぜん受けたことにならないですよね。でも、「いやぁ何とも言えませんね」っていう一言でもあれば、前を受けられる。意識しているのは、要約のテクニックというよりこのことですね。

 

深谷:ダイジェストするというより、モードを受けるということなんですね。

 

佐々木:そうですね。会場になにかの話が提供されますよね。そして、みなさんがそれを受け取っていく。そうしてだんだん、その場が「座」になっていきますよね。そこを言葉にするイメージです。

 

▲2020年9月、20周年記念感門之盟の司会も「やっぱり佐々木しかいない」と校長の選。(撮影:後藤由加里)

 

 

■司会の極意は、師範代が知っている

 

佐々木は司会の方法を明かしてゆく。コツは、内容の要約ではなく、一座の様子を言語化すること。深谷はそれを「受容」だと察知した。編集学校の師範代なら誰しも、花伝所で叩き込まれる基本術だ。

 

深谷:なるほど。「座」自体を受けるわけですね。佐々木局長の司会に感動していた某師範代は、それを「膝枕力」って言ってたの。

 

佐々木:え、膝枕?!(笑)

 

深谷:校長さえも、まるで膝枕されているような居心地のよさなんだと思います。

 

―――佐々木は、「やるほうは緊張しているんですよ」と軽やかに笑う。佐々木は準備の鬼。司会にあたっては、話すべき内容を一言一句書き出すという。準備の段階では、どんな内容が語られるかわからない。そのときでも、「この場はこうなりそう」「ならばこの言葉づかいで」と、想像をはたらかせて司会のシナリオを綿密に練り上げる。深谷はそこにも切り込んだ。

 

 

深谷:でも、イベント中には、がんがんメモってるようには見えないんですが。

 

佐々木:その場のみなさんと同じ気分になることを意識しているので、最中は、キーワードをちょこっとメモするくらいですかね。

 

深谷:動いている場をMCとして采配していくのって、場の気分や流れをアブダクションしているんでしょうか。

 

佐々木:それは、ラジオDJをされていた深谷さんのほうが詳しいかと思いますが……(笑)でも、司会でやっていることは、編集学校の師範代がやっている「受容」と同じ原理なのかと思います。

 

深谷:師範代の「受容」ですか。

 

佐々木:師範代って、学衆さんの一言一句の辻褄を見ているわけではないですよね。その人の来し方行く末までを見て、言葉を受け取っている。
司会をするときも同じです。イメージとしては、カーペットをぱぁーっと目の前に広げるような気持ちといいますか。自分もすこしステージを上げなきゃいけないし、そのうえにみなさんも乗っけていかなきゃいけない。そんなBPTのイメージですね。

 

―――司会は指南に似ているらしい。佐々木局長にとって、「師範代」はどんな存在に見えているのか、話は展開していく。

 


■局長は魚の目。師範代に憧れて

 

深谷:[破]で学ぶ「鳥の目/虫の目」ってありますでしょう。そこに「魚の目」を足していた人がいたんですね。マクロとミクロを見るだけでなく、動きながら隣も見るというような力ですね。佐々木局長は、どんな目をもってらっしゃるのでしょうか。

 

佐々木:イベントで司会をするときもそうなのですが、まず最初にみなさんがどんなコンディションなのか把握して、それに対して次はこういう気分になるから、じゃあターゲットにはどうやって向かいましょうか、と考えてスケールをつくるんですね。

 

「局長」というロール柄、「この人たちが次にどういうステージにいくのか」「その場は次にどうなっていくのか」という次の方向を見て、そちらへ引っ張っていこうとしちゃいますね。一人ひとりに寄り添うだけでなく、どこかへ引っ張りたい。

 

深谷:『インタースコア』(p.503)には、こう書かれていますね。局長としての毎日は、「人が花ひらくところに次々立ち会う日々でした」と。佐々木局長がなさってきたことは、人を見ることだったんですね。

 

佐々木:や、本当にそうです。師範・師範代に憧れ続ける日々なんですよね。

 

 

深谷:憧れてる……?

 

佐々木:「あの人のこういう言葉がすごい」とか「なんでこんなタイミングで動けるんだろう」とか、そういうことがつぎつぎ起こるんですよ。いいな、いいなと思うことの連続です。

 

深谷:へぇぇ。じゃあ20年間、憧れ続けてきた感じですか。

 

佐々木:まさにそうだと思いますよ。師範・師範代の言葉って、相手にむけて一生懸命作り出している言葉じゃないですか。だからほんとうに尊いです。


 

♪ ♪ ♪

 

いかがでしたか。

あの司会術は、師範代の「受容」こそがカギだった。

そして、佐々木局長も憧れる師範代の力。

どうやったらあんな力が身につくのか、気になりますね。

 

受容ってなんだ?と感じられた学衆のみなさんは、ご自身の教室師範代に尋ねてみてください。

師範代経験者なら、みーんなこのカギをポケットに忍び込ませています。

 

明日は、続き「バイトあがりの教務主任」をお届けいたします。

佐々木千佳の編工研バイト時代の苦労とは?

局長からみるイシスのすごさとは?

これからの教育に求められるものとは?

 

どうぞご期待ください。ではまた。

 

>>>[中編]へつづく

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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