【エアサックス加藤の三度目の突破08】嗚呼!エアサックス母子応援団

2022/12/21(水)19:00
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スニーカーならエアマックス。NBAはエアジョーダン。ダイノジはエアギター。そしてイシスにはエアサックスと呼ばれる男がいる。

感門之盟で音楽を学ぶ卒門学衆としてフィーチャーされたものの、サックスの演奏が未熟だったため、校長から吹かないで持ってるだけにしてとディレクションされたことから、「エアサックス」の愛称がついた。49[破]学衆・ヤマネコでいく教室、加藤陽康。これは3度目の正直ならぬ3度目の突破にかける若者の4ヶ月に渡る編集稽古のドキュメントである。


 

 天狗こわい。天狗こわい。母の胸に駆け寄る息子。
 編集天狗の赤ら顔はいつにも増して紅潮していた。
 
 「今日は怒られに来ました。あれから何もやっていません」。エアサックス加藤は悪びれた様子もなく、この1週間回答を一切していない自分を晒した。沈黙する編集天狗を横目に、加藤は述べる。
 「面白い発見をしたんです。天狗さんは編集は塩梅だと言われたじゃないですか。僕は困惑して動揺したんです。すごく大事なことを言われた気がしたんですが、それで十日間くらい経ってしまいました」「ん?それが発見なの?」「そうです」。天狗は怒りを飲み込んで、「そう、塩梅が大事。塩梅というのは内と外のあいだだからね」と言葉を足した。

 この日のエアサックス加藤は能弁だった。「この前、ヤドカリ三男の山内さんとお話したんですが、いま編集工学研究所でインターンされているじゃないですか。その時に今はトライ&エラーを繰り返していると言われていて、それも響きました。たたき台が大事だと気づいたんです。捨てて持ち変えるスピードはなぜ生まれるのか。トライ&エラーかと思った」。

 ここまでおとなしく聞いていた編集天狗であったが、静かにこみ上げるものがあったようだ。関西弁でまくしたてた。「いまいち。それだけやといまいち。たたき台でええけど、たたき台でもたたきがいがあるもんまで、最初からいっとかないとあかんねん。ごたくはええけど、回答出してへんやん。今すぐ出せ!出せ!出さんかい!」。

 それを横目で見ていたのが、50[守]悠阿弥アメリ教室の仁禮洋子師範代と愛息の悠人くんである。そこで冒頭のシーンになるわけだ。仁禮師範代は悠人くんを抱きかかえながら、エアサックス加藤に優しく言い含めた。「稽古はコンスタントにやらないと効果がないよ。自分もまとめてやるスタンスだったけど、それは効果がないと師範代をやった今ならわかる。師範代も締切を守ってやってくれるのを待っているから」。悠人くんは天狗がこわいようで固まっている様子。仁禮師範代が「悠人くんお兄ちゃんに、頑張って!って言ってあげて」と何回か呼びかけたが、どうしても天狗が気になるようで応援メッセージは聞けなかった。「すみません。天狗さん。悠人が悪夢見るのでそろそろいなくなってもらっていいですか」。

 現役師範代親子からも叱咤激励のメッセージを受けたエアサックス加藤。年の瀬も押し迫り、物語編集術のお題も出題され、お尻に火がついてきた。悪い病が顔を出し始めたエアサックスは、ここから巻き返して突破へ突き進めるのか。加藤は正念場を迎えた。

 


【エアサックス加藤の三度目の突破】バックナンバー

■【エアサックス加藤の三度目の突破08】嗚呼!エアサックス母子応援団

■【エアサックス加藤の三度目の突破07】波乗りエアサックスの慢心を諫める

■【エアサックス加藤の三度目の突破06】たくさんの天狗とたくさんのわたし

■【エアサックス加藤の三度目の突破05】歴史的快挙そして新たなる野望(本記事)

■【エアサックス加藤の三度目の突破04】守の型を使い尽くすべし

■【エアサックス加藤の三度目の突破03】心がわりの相手は君に決めた!

■【エアサックス加藤の三度目の突破02】インタビューは天狗さまに

【エアサックス加藤の三度目の突破01】編集天狗と突破を誓う!


  • エディスト編集部

    編集的先達:松岡正剛
    「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。