名もなき船長からのメッセージではじまった2024年冬の群島ククムイの航海は、3つの島めぐりから成る。
島は言葉を求め、言葉は島を呼び寄せます。
島々への航海は、だから変異する言葉のはざまをめぐる航海でもあります。
「音」の響きの変異を繊細に聞きとる、感覚の旅です。
~群島ククムイ名もなき船長からのメッセージより一部抜粋~
最初に訪れたのは、言葉と遊ぶコトノハの島。今福龍太船長から届いた言葉を声に出して味わい、連想を広げ、本を探して読む。この航跡を短いエッセイに仕立てる。今回の言葉は「フサ」。フサ、と声に出してみること、感じてみるのが楽しかった。アタマだけでなく、身体性をもって言葉に向かう感覚が目覚めていきそう。”フサ”と”ふさ”ではまったく違う。耳にしたニュースから”フサ”のイメージを膨らませた。たくさんの感想がもれてくる。感じること、読むこと、そして、書くことの間から、乗組員たちが思わぬ景色と出会い、11のエッセイが生みだされた。
それから10日も経たぬ節分過ぎのある日、台湾に住まう今福船長から手紙が届いた。どうやら先回りして、台湾島から北緯23.5度線をたどり、地球の反対側のメキシコ湾への想像の旅の途上にあるようだ。船長にとっての原風景でもある海辺のたくさんの地名、その間から青と碧と藍と翡翠色の海がククムイ船の前に広がる。南からの風にのって、乗組員たちのエッセイ一つひとつに船長からの一行詩が贈られた。「みなさんの言葉すべてが、私を幸福にさせ、私の原風景の汀をなぜか一つ一つ呼びだしました」と。
ふたつめのシマシマの島は、言葉で遊ぶ島。日々、歌うように乗組員たちの航海日誌が綴られ、鳴りやむことがない。とりわけ、1月18日には島にたくさんの声が響きあった。出航以来、初めての顔合わせとなるオンライン共読会が開催されたのだ。ひと通り、ククムイ船に乗りあわせることになったいきさつを交わしあったのちに、船長フィルターで選んだ千夜千冊を読みあう。今回取り上げる千夜千冊は124夜 『クラゲの正体』坂田昭である。
読む方の声のトーンやイントネーションがジャズセッションのようだった。千夜千冊も、とてもJAZZY!に感じた
寄り道するようにふわふわ漂うような千夜。ククムイの旅に重なる
声を聴きながら、脳の余白で連想が広がっていく
文字だからこそ伝わる、声だからこそ伝わることがある
(千夜千冊を輪読した後、2分でクラゲのお絵かき遊びに湧いた群島ククムイの乗組員たち)
「言葉は声と口と耳を内在させている」(666夜『声の文化と文字の文化』ウォルター・オング)と綴る松岡校長、「ことばという楽器を奏でよう」(『薄墨色の文法』)と唄う今福船長。ふたりの先達が指し示す言葉について、深めあう月夜となった。
ククムイ船は、目下3つめのアヤトリの島を進む。『霧のコミューン』(今福龍太著)の言葉やイメージから、数枚の組み写真を仕上げる途上にある。「読む、撮る、仕組む」の道のりで、どのような発見と変容が訪れるのか。島影を追い求めることによって、言葉に変異がもたらされ、言葉の変異によって新たな島影があらわれる。ファインダーを覗く乗組員たちの目が、ときにいたずらっこのように弾み、ときに母のようにやわらぎ、ときに大鷲のように鋭くなる。颪風に背中を押された3か月の島めぐりも、間もなくクライマックスを迎える。
時をおかずして、光風の航海への出帆が控える。行先はまだ霧の中。が、今福船長からの言葉と書物が道しるべであることは変わらない。寄せくる波に耳を澄ませよう。乗船の霧笛が聞こえてくる。
多読アレゴリア2025春「群島ククムイ」
【定員】20名
【申込】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025haru
【開講期間】2025年3月3日(月)~2025年5月25日(日)
【申込締切】2025年2月24日(月)
【受講資格】どなたでも受講できます
【受講費】月額11,000円(税込)
【2025春 多読アレゴリアWEEK】
▼着物コンパ倶楽部
▼MEditLab for ISIS
▼勝手にアカデミア
はとさぶ連衆は鎌倉に集い俳句を詠みつつアカデミア構想に巻き込まれるの巻
▼軽井沢別想フロンティア倶楽部
▼大河ばっか!
▼よみかき探Qクラブ
▼身体多面体茶論
▼終活読書★四門堂
▼OUTLYING CLUB
▼千夜千冊パラダイス
◎3/3(月)スタート◎シーズン2は《編集術の奥義》につながる千夜が登場!
▼群島ククムイ
霧の向こうの青・碧・藍・翡翠色の海
阿曽祐子
編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso
生きることは霧とともにあること――今福龍太『霧のコミューン』発刊記念ISIS FESTA SP報告
あの日、本楼を入る前に手渡された和紙の霧のアンソロジー集には、古今東西の先達の言葉が配されていた。多彩なフォントの文字たちのなかで、水色の「霧」が控えめにその存在を今も主張している。 ISIS FESTAスペシャル「 […]
死者・他者・菩薩から新たな存在論へーー近江ARS「還生の会」最終回案内
近江の最高峰の伊吹山が雪化粧をまといはじめる12月、近江ARS「還生の会」は、当初の予定の通り最終の第8回を迎える。日本仏教のクロニクルを辿りなおした第6回までを終え、残りの2回は、いまの日本を捉えなおすための核となる […]
霧中からひらく新たな「わたし」――今福龍太さん・第3回青貓堂セミナー報告
「写真をよく見るためには、写真から顔を上げてしまうか、または目を閉じてしまうほうがよいのだ」(ロラン・バルト『明るい部屋』より)。第3回目となった青貓堂セミナーのテーマは「写真の翳を追って――ロラン・バルト『明るい部屋 […]
今年のお盆休みは、実家で「いただきます」というたびに、温もりと痛みとが同時に走った。それは、ひと月前の観劇体験のせいなのだろうと思っている。 2024年7月24日の18時開演。遅れたら入場できないかもしれないとのこと […]
別様への出遊に向かえ――『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』発売
2024年4月29日、一日限りの「近江ARS TOKYO」が終わり、駆けつけた人々は、余韻と期待をもって、会場で先行販売された松岡正剛からのもう一つの贈り物『[近江ARSいないいないばあBOOK]別日本で、いい。』(松 […]