連句百韻できました。書屋俳諧百人連句「本楼に」発表!

2025/12/03(水)08:04 img
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 豪徳寺・ISIS館にて本の風を起こした<別典祭>。そこにはEDOの風狂も吹き渡りました。


 「連句百韻できるかな」と、【EDO風狂連】が百句を連ね巻き上げる「百人連句」の場を設けたのはISIS館・井寸房。別典祭に参加した16の多読アレゴリアクラブの面々はもとより、道すがら立ち寄ってくださったご近所の方から、噂を聞きつけて来場したイシス編集学校の講座未受講の方、そして往年のレジェンドまで、連句経験がある方もない方も、EDO風狂連の大武歌雀・福澤詩雀の手ほどきで、あれよあれよと句を作り、連句の妙を楽しんでくださいました。


 二日の祭りで繋いだのは八十九句。無謀な試みかと思いきや、ご参加のみなさんの力添えにより、残すところ十一句にて別典祭の幕は閉じました。
 が、しかし。【EDO風狂連】連中の祭は終わりません。祭の余韻をラウンジへと持ち込み、別典祭に参加できなかった連中も交え、句をつなげつなげて遂に挙句の百句めに到達したのでございます。
 ここに、その百句をご披露いたします。とくとご覧くださいませ。

 

別典祭【EDO風狂連】書屋俳諧百人連句
百韻「本楼に」

初折表
発句  本楼に墨する夜の囲炉裏かな    夕魚
脇    客を迎えてまずは熱燗      歌雀
第三  寒紅梅ひとつふたつと咲く庭に   詩雀
四    雀ちゅんちゅんジャンケンをして 千羅
五   負け続きぐうの音も出ずとび去りて 始鳴
六    飛行機雲が長くのびている    栞
七   のれんから覗き見上げる望の月   ばにい
八    新酒のみつつ千夜千冊      さやさや
初折裏
九   秋の海群島巡り此処いずこ     銀河
十    届くお囃子金毘羅祭       紅別
十一  虫時雨家路をいそぐ童たち     香果
十二   お胎のなかで母の声聴く     祐子
十三  教室の書き取りの文字大人びて   絽風
十四   言葉使いがちょっと生意気    高士
十五  私たち黒留袖でファッションショー 海釦
十六   レースくぐりて風のおとずれ   浪春
十七  あげは蝶ふわりふわりと木戸越えて 香土
十八   はるか山際夏の月きゅん     歌雀
十九  鏡見て二重リボンにウインクす   静泉
二十   つまさき立ちて赤い鼻緒で    翠香
二十一 花びらが落ちた足元猫じゃれる   転鞠
二十二  のびゆく影に春の夕暮れ     宝樹
二折表
二十三 鎌倉の空は朧に鐘響き       穂凪
二十四  煩悩の葦蝌蚪の突つきて     楽人
二十五 渦を巻き深みにはまり水の底    日々
二十六  ト音記号に強弱をつけ      思音
二十七 緊張の乙女居並ぶ舞台袖      釉箋
二十八  夫に似ている羅漢探して     風隣
二十九 薬指石を選んでリング買う     水韻
三十   カレンダーには記念日ばかり   釉箋
三十一 壁掛けの時計電波を受信せず    風隣
三十二  宇宙人らがのぞき見してる    つゆ艸
三十三 オーロラの太陽フレア揺らめいて  魔が差す藤丸
三十四  風とたわむれ水面の踊り     奈々
三十五 山影に灯り見送る彼岸花      朱あやめ丸
三十六  月の団子を伏してくわえる    蓬由
二折裏
三十七 今年絹反物広げ浪のごと      掬清
三十八  雲のまにまに夢の溺れる     宝樹
三十九 古傷の痛みに耐えてにっこりと   香土
四十   心の鎖解き放つ医者       詩雀
四十一 競走馬ラスト直線一斉に      歌雀
四十二  民の熱狂ドバイ突き抜け     始鳴
四十三 幼な子が古きつぼ売る細道で    柊木
四十四  日の長きこと影長きこと     三味楓
四十五 子安貝瀬戸内海に洗われて     紅別
四十六  それでもさめぬ春眠の月     米羽
四十七 遅咲きの花の香りに誘われて    酔翠
四十八  予定日過ぎて子猫生まれる    群風
四十九 先生はひとごこちつきお茶を飲み  美蕾
五十   モカ珈琲のかくまで苦し     番器
三折表
五十一 締め切りの原稿用紙埋まらずに   とおる
五十二  小犬かかえて街にくりだす    孤島
五十三 くびまきのあざやかな赤まちあわせ 某中
五十四  OUTLYING白き情熱    ○樹
五十五 別典祭EDOの地で咲く万博か   馬骨
五十六  脈々続く呼び込みの声      穂凪
五十七 細胞のうごめく気配書き留めて   意写
五十八  雲なく晴れてこころ湧きたつ   実紀
五十九 ほくほくと芋をふかして跳びはねる 鈴康
六十   足もとの栗これ見てと笑む    群祐
六十一 グリコする石段の先秋祭      愉月
六十二  表も裏も木の葉の時雨      月晶
六十三 冴える月写真におさめ別世界    紫苑
六十四  かじかむ指を包むコーヒー    樟安
三折裏
六十五 つんとする鼻腔の奥の涙味     菜美
六十六  踏切ばかりかんかん響く     蘇名呂
六十七 無精髭追われ追われて息切らし   旅破
六十八  あつあつラーメン腹の虫なく   蓬由
六十九 昼さがり音からからと糸つむぎ   浪春
七十   弧描く筆子と和算連中      紅別
七十一 席替えでやっとあの娘のお隣に   風隣
七十二  椅子を並べて灯火親しむ     始鳴
七十三 後ろ髪ひかれる帰路に秋夕焼    六二三
七十四  誤字の恋文みだれぐさめき    翠香
七十五 かけおちの行手を照らす真夜の月  香土
七十六  裏側のぞく望遠鏡で       羯魔
七十七 花ふぶきヒッチコックの鳥が来る  平放
七十八  尾長のために巣箱をかけに    Niva
四折表
七十九 左手の旅行かばんに猫の子ら    代々
八十   眼に見守られブコウスキー    Hiro
八十一 あの頃の小町に逢える街酒場    某中
八十二  琥珀に透ける薔薇のひとひら   孤島
八十三 虎が雨ピアノ奏でるシューベルト  音付
八十四  真夜に虹立つ「よい子は眠れ」  真澄
八十五 ひそやかに大人の時間しんしんと  遊湯
八十六  扉を閉めて天窓開けて      思音
八十七 雨上がり音さやさやと忍ぶ恋    誠太郎
八十八  パールのピアスわざとかくして  香土
八十九 君のため悩む薑置くところ     釉箋
九十   香り誘うは古酒とくちずけ    梅星
九十一 白塗りて揺らす言霊後の月     紅葉
九十二  ゴートクジにも祝詞こだます   篝雪
四折裏
九十三 不夜城にアレゴリアンの夜光虫   馬骨
九十四  門へみちびく道しるべ役     孤島
九十五 バンバンボー夢でも叫び苦笑い   梅星
九十六  ホーホケキョ―と入れる合いの手 あや野
九十七 村人は腰をさすりつ畑を打ち    詩雀
九十八  魚氷に上るひょいと浮かれて   歌雀
九十九 季は巡り名残惜しくも花筏     徨兎
挙句   微笑み交わす麗らかな午後    万迷

 

 ご参加くださったみなみなさま、誠にありがとうございました。

 

酒上夕書斎」第六夕別典祭SPの冒頭では、田中優子学長と大武美和子歌雀による百人連句についての交し合いも。

◇◆◇

 

【EDO風狂連】の面々。【EDO風狂連】連中でもあるエディストライターが百人連句の様子をJUSTした。

 

(写真:後藤由加里、アイキャッチ・文:米田奈穂)

 

  • EDO風狂連

    【EDO風狂連】は、江戸の文化を「読む」「書く」「遊ぶ」連です。江戸以前の文化を本歌取りした江戸文化をまるごと受け止め、江戸から日本の方法を学ぶ。目指すは「一人前の江戸人」です。