私たちはたいてい、幼い時期にいくつかの“ものがたり”に出逢う。
それは、親や祖父母が読み聞かせてくれる童話やおとぎ話だったり、意味も分からず口ずさむ流行歌だったり、親戚の集まりで大人たちが話す内緒話だったりする。
ものがたりは、まだ見ぬふるさとの原風景のようなものを、いつの間にかこちらの胸裏に刻み込んでいる。
ものがたりとは、永遠に生き続ける人類最大の記憶装置なのである。
しかしなぜか私たちは、懐中に眠るものがたりの種を探すのがちょっぴり苦手になっている。
考えるな、感じろ――今こそものがたりを五感で観じたい。編み手が託した言葉のつぶてを、語り部の声や音色とともに思いっきり浴びてみたい。
そんな思いから、師範の植田フサ子と岡村豊彦がユニットを組む「青熊書店」が、この夏、イシス編集学校とともにハイパーな共読の場を持ち込む。8月21日(水)に豪徳寺の本楼で開催する朗読ライブだ。
朗読家の景山聖子さん・箏アーティストの中しまりんさん・ジャズピアニストの後藤魂さんをゲストに迎え、芥川晩年の作品を絵本にした『芥川龍之介の桃太郎』(河出書房新社)と、怪談えほん『おんなのしろいあし』(岩崎書店)を【語り×音楽×映像】の朗読劇場としてお届けする。
もちろんそれだけではない。この2冊の装画を手掛けた画家・寺門孝之さんを筆頭に、当時の担当編集者たちが出版社の垣根を越えて大集合。寺門さんを囲んでのクロストークで、刊行までにはどんな“ものがたり”があったのか、今明かされる秘密やそれぞれの編集の極意などを伺ってゆく。
――2024年の過ぎゆく夏を思いながら、ぜひ“ものがたりの種”を見つけに来てください。
<ゲスト登壇者>
・寺門孝之さん/画家・神戸芸術工科大学教授。大阪大学文学部美学科、セツ・モードセミナー卒。東京・神戸を拠点に、独自の天使画をはじめ、『Holy Basil』『ぼくらのオペラ』など著書・共著多数。町田康の著作の装画を多く務め、2019年には責任編集の雑誌「ビジュアルデザイン1.」で、戸田ツトムや鈴木一誌、杉浦康平、宇野亜喜良、松岡正剛と、そうそうたる顔ぶれによる雑誌も刊行。
・福士祐さん/ピエ・ブックス刊 絵本『芥川龍之介の桃太郎』初代版企画・編集者。
・竹下純子さん/河出書房新社刊 絵本『芥川龍之介の桃太郎』新装復刊版編集者。
・堀内日出登巳さん/岩崎書店刊 怪談えほん『おんなのしろいあし』編集者。
<ゲスト演者>
・景山聖子(朗読)/元アナウンサー。声優事務所シグマセブン独立後、絵本の世界に特化。絵本スタイリストとして大手企業等と多数コラボし、大人の生活に絵本を取り入れる方法を伝えている。NHK総合テレビ絵本朗読、読み聞かせCD・書籍出版など幅広く活動中。(一社)JAPAN絵本よみきかせ協会 代表理事。
・YAMATO LOUNGE/箏アーティスト中しまりんとジャズピアニスト後藤魂(たまし)のユニット。それぞれ国内外で活動する中、異なるジャンルでの経験を活かし生み出す楽曲は、これまでにない新たな世界観を創り出す。
■日時:2024年8月21日(水)19:00-21:30
■費用:2,500円(税込)※茶菓付き
■会場:編集工学研究所 1階「本楼」
■定員:先着50名(予定)
■対象:どなたでも参加できます
■お申込み:【ISIS FESTA 番外編】朗読ライブin本楼~絵ものがたり音連れ夜行~2024年8月21日
植田フサ子
編集的先達:幸田文。熊本を愛し、言葉を愛し、編集を愛する。火傷するほどの情熱にきらり光る編集力、揺るがない正義感をもつライター兼編集者。常に多忙で寝落ちもしばしばなのはご愛敬。
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