Kimono話#01 コーディネイト体感会(1/26)でのこと【着物コンパ倶楽部】

2025/01/29(水)19:00 img
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先日、1月26日(日)の午後、輪読座の「ヒツギノミコ」という声が聞こえてくる本楼の上の2階の一室で「コーディネイト体感会」を開催しました。

そうなんです。2月そして3月と「モリヤマ流・きもの編集体験会」はバジラ高橋さんの輪読座の裏で毎月開催予定です。


 

今回の「コーディネイト体感会」のテーマは、「帯揚げと帯締めの色でテイストが激変する様子を体感する」というもの。

 

当日は紫の着物に水玉の帯を締めて、

・着物(2着)

・帯(3本)

・帯揚げ(もっているもの全部)

・帯締め(もっているもの全部)

をトランクに詰め込み編集工学研究所へ向かいました。

 

半襟は白色でたっぷり見せる着方です

 

●いつの間にか集まった無地の縮緬の帯揚げ

モリヤマ私物帯揚げ

モリヤマ私物の帯揚げ

25年愛用のトロッター

25年愛用のトロッター

 

 

着物コンパ倶楽部のモットーは、「別様の珍しきは花なり」と「Go! Mode」。

毎回全く違う趣向を凝らして出遊いたします。

 

そこで今日は、お楽しみのあとのお楽しみ。

体感会で伝えきれなかった部分のおさらいと、参加のみなさんからの問いにお応えしてお話をしたいと思います。

 

 

「ありもの」からのミメロギア*


*ミメロギア:イシス編集学校<守>で稽古する編集の型の一つ。ミメーシス(模倣)とアナロギア(類似)を合体した言葉で、一見関係なさそうな二つの事柄を上手く結びつける方法。


 

今ここで目の前で出会っている着物と帯。

互いにもともと無関係で独立している着物と帯。それを合わせて一体化させる時に、帯揚げと帯締めをミメロギアのように使ってみましょうという提案です。

 

 

着物と帯

 

 

では、早速はじめましょう。

 

着物と帯のそれぞれにある「色」を読んで類似(似ている)を見つけて、同系の色の帯揚げをあててみます。

するとお揃いが誕生します。

 

 

帯揚げの色が呼び水になって、着物の柄の葉の色と帯のモスグリーン色が繋がります(関係線が結ばれます)。

 

こうして着物と帯の青緑色が一気に前面に出てきますので、さらに模倣(見立て)に転移させるために帯締めの色を使います。

 

今回は青緑の葉と唐草模様を主役にして「天平のオリエンタル」に見立てる方向にしたいので、帯の存在感をマイナスするためにグレーの帯締めを選びます。

帯と帯締めが馴染んで(この引き算がとても重要)、よりエメラルドグリーンが際立たち、唐草模様に視線を誘導できます。

 

 

ここからのバリエーションとして、帯揚げと帯締めの色を反対にしてみましょう。

帯揚げをさらに明るい生成色にすると、青の分量が減り白の分量が増えて、軽やかな印象に変化します。

 

 

別のパターンで、金茶色の帯揚げにすると今度は赤茶色の花と葉っぱが際立って「秋の景色」に見立てることもできます。

 

 

このように、ミメロギアが「意外で珍しいのに心地よい」感じを生み出すのは、類似によって「ちゃんと関係している」という安心感を担保していることで「見立てを遊べる」からなのですね。

 

 

「かりもの」からの換骨奪胎*


*換骨奪胎:イシス編集学校<破>で稽古する物語編集術の方法の一つ。世の中にすでにある映画や物語の構造の筋目を取り出し、全く別の物語に転移する方法。


 

「ありもの」の問題点はいつか飽きがくること。

だから「かりもの」。自分では思いつかない色の組合せを世の中から借りてきます。

 

世の中というのはファッション雑誌や自然や街の風景、綺麗な鳥の羽の配色など。

こちらはmiumiuの2025年の春夏のショーの写真から「♡」と思って頂戴した色の組み合わせ。

 ↓

 

「ありもの」に飽きた時には「かりもの」がとても大きな力を発揮して、思いもしなかった新しさ(再編集)の方法を得ることができます。

 

飽きても年を取っても大丈夫。時間を超えて何度でも違う顔を見せられる(再生できる)。

着物にはそんな仕組みが備わっています。

それは全体と部分の間に所属関係や従属関係があるようでないから。ぞれぞれに独立していていつでも他者と縁を結ぶことができる状態にあることが何度でも再生を可能にしているのです。

 

 

だけど、帯揚げをこんなにたくさんは、とても、、、

 

無地の帯揚げが手頃な値段で売っていたら即GETです!

とは言ったものの、みなさんきっとこう思っているはず。

 

わたしの場合は、着物と帯を初めて買ったときに、帯に合わせて「赤」と「青」と「辛子色」の帯揚げ、そして「赤」と「青」の帯締めを手に入れたところからスタートしました。

だから好きなものから小さくスタートを切って全然OK。

 

ちなみに今回ご紹介したコーディネイトで使った帯揚げはこちらの3色。

 

このように、お気に入りの着物か帯があったら、その柄に含まれている色の帯揚げを手に入れることから始めてみてはいかがでしょう。

例えば、次にこんなチェックの帯を手に入れたら、まったく違うコーディネイトですが、同じ帯揚げがそのまま使えます。

 

 

こんな風に、着物・帯→帯揚げ・帯締め→着物・帯というように「色」が連句のようにつなぎをつくっていきながら、徐々にストックされるという流れですね。さらに嬉しいことに「次に欲しいものが明確」になる。これは「多読」の方法とおんなじです。

 

なので「自分の好き」に素直になって、そこからまずはスタートを!

 

 

だけど、「今すぐ要る」のときにはどうしたら、、、、

 

「ないもの」を「ありもので間にあわせる」とっておきの方法として、手元にあるスカーフを「帯揚げとして使う」という手もあります。

 

例えばこんな感じはどうでしょう。

スカーフにはいろんな色が含まれていますので、手持ちの帯締めの色に合わせて、スカーフの出す部分を変えることで、たくさんの色に対応可能です。

 

 

 

今度は、細雪ごっこを!

 

今回のコーディネイト体験会では、持ってきてくださった着物や、iPhoneの着物の写真をモニターに写したりして、コーディネイトの案を出し合いながら、きゃあきゃあ♡

 

ある方は、譲り受けた着物の裄や丈が短いので袖口から見せる黒いレースを持ってこられたり、丈が短いのを活かしてブーツを合わせてみようかとか。。「ありもの」から出発する工夫のあれこれの情報交換が、やっぱりとても楽しくて、松岡校長が『日本流』に書かれていましたが、着物の話を男も女もあれこれ交わす機会をもっとたくさん増やしたい。

参加されたみなさんから「今度は細雪ごっこしましょう!」という嬉しいお声もいただきましたので、そうした場も今後どんどん企みますね。

 

 


<お知らせ>

次回のコーディネイト体験会は2月23日(日)に予定しています。

こんどはもっと大胆な柄と柄の組み合わせ。アンティーク着物や半襟のコーディネイトのコツを実際にご覧いただきながらご紹介いたします。もちろんコーディネイト相談もOK。

お申し込み受付の準備ができましたら、エディストに案内させていただきますので、どうぞお楽しみに。

 

 

<ご案内・参加者募集>

男の着物についてあれこれ話すトーク会を2月4日(火)に「本楼」で開催します。

古代からの男の着物の歴史を紐解いていくと、男と女の着物のスタイルが離れたり交差したりしてきたことがみえてきます。

男の襟にひそむ「男の着物事情の歴史」と「方法日本」を存分に絡ませるにはこのお二人しかいない。ということで「着物×編集」を一緒に語ってくださるゲストをお招きしました。お二人のお二人ならではの着物姿にも大注目です!

 

【内容】

・「男の襟」部分と全体、超部分の威力について
・「くずし」の「ほど」について
・平安男子の衣服事情
  公服と私服が生まれる(衣服令)
  漢服と胡服が由来(馬との関係)
  勤務形態と服の関係(男は通い、女は住込み)
  公家のくずしの方法(ズボンの幅が倍に)
  武士のスタイル誕生(襟を折る)
・貴種流離譚と「やつし」
・明治男子の衣服事情
  幕末時点の庶民の衣服事情
  洋装アイテムとの出会い(鎖国時代)
  洋装化のトップダウン(服制更改の勅諭)
  勤め人と自営業、外と内(和洋マトリックス)
  勉学期の男という存在(書生スタイル) 
・コードのモード化と「もどき」

・男のカジュアル着物(偶然→まにあわせ→必然)

・男のフォーマル着物(型に潜む意味)

ほか

 

◉イベントで着物を着たいと思っている方

◉何からはじめたらいいのかわからなくて立ち止まっている方

◉普段はファッションには興味はないけど、着物ってちょっと気になる方

◉日本の古代や明治時代のことに興味がある方

 

もちろん女の方にも目からウロコ間違いなし。

みなさまのお越しをお待ちしております。


多読アレゴリア*新クラブ

「着物コンパ倶楽部」プレイベント 第2段

【トーク会@本楼】男の襟と同伴


■日時:2025年2月4日(火)19:30-21:30(開場は18:30)
■会場:編集工学研究所 1階 本楼

■対象:どなたでもご参加いただけます
■定員:40名 *リアルのみの開催です。

■費用:3,000円(税込)

    *当日現金にてお支払いください

■ゲスト

    中村麻人(イシス編集学校師範)

    梅澤光由(イシス編集学校師範)

■ナビゲーター

    森山智子(着物コンパ倶楽部部長/イシス編集学校師範)

■お申し込みはこちらから→編集工学研究所SHOP

 


(文:森山智子)

 

【着物コンパ倶楽部】記事

【多読アレゴリア*新クラブ】プレイベント第2弾 着物コンパ倶楽部のトーク会@本楼*2月4日(火)「男の襟と同伴」
2025/01/17(金)22:47

【多読アレゴリア*新クラブ】着物コンパ倶楽部のプレイベント*1月26日(日)「モリヤマ流・きもの編集体験会」
2025/01/14(火)13:20

 

 

 

 

 

 

  • 森山智子

    編集的先達:和泉式部。SE時代にシステムと着物は似ていることに気づき開眼。迷彩柄の帯にブーツを合わせる、洋服生地を帯に仕立てる等、大胆な着こなしをはんなり決める。イシスにも森山ファンは数多い。
    2025年春の多読アレゴリアのクラブ開講に向けて準備中。