先人の見立て力にひれ伏すしかないと思って来た「墨流し」。戯れに、Chatさんに「蝶のスミナガシを別の見立てで改名するにはどんな名前がいいですか?」と尋ねてみて、瞬時に現れた名答に打ち拉がれております。
漫画家・つげ義春が第47回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞した。おん年82歳だ。アングレームといえば、マンガのカンヌと言われており、谷口ジロー、辰巳ヨシヒロを筆頭に鳥山明、大友克洋、つげ義春の師匠である水木しげるも『のんのんばあとオレ』で最優秀作品賞(2007年)、『総員玉砕せよ!』で遺産賞(2009年)を受賞している。

水木しげるはつげ義春のことをこう評した。「つげさんはスケベで怠け者でしたね。でも品物はいいんです」。このことは千夜千冊0921夜『ねじ式・紅い花』でも取り上げられているので、ぜひあらためて読み直してほしい。水木しげるは「李さん一家」をとくに評価しているようだ。在日朝鮮人一家をめぐる物語である。

捨てたはずのわたしが、今夜わたしをたずねてくるのです。これは石井輝男監督の映画『ゲンセンカン主人』の宣伝コピー。佐野史郎主演で、『李さん一家』『ゲンセンカン主人』『紅い花』『池袋百点会』からなるオムニバスムービーである。

つげ義春は千夜千冊で取り上げられているだけでなく、イシスの面々が選書した近大アカデミックシアター2Fのマンガと新書と文庫だけの図書空間DONDEN(どんでん)のキーマンになっている。DONDENが”読断と編見”で選りすぐった漫画家50人、「LEGEND50」には手塚治虫や赤塚不二夫らとともに、つげ義春の名が連なっている。

いちファンとしては、今回のアングレーム受賞を機に、つげマンガがもっともっと日本で読まれることを期待したい。イシスには堀江純一がいる。堀江は、マンガのスコアをテーマにした記事の準備を”ダンドリ・ダントツ”で進めている。そのうちふいに、堀江純一=つげ義春がエディストの片隅でひょっこりはんすることだろう。


金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
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コメント
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2025-10-15
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ホオズキカメムシにとってのホオズキは美味しいジュースが吸える楽園であり、ホオズキにとってのホオズキカメムシは血を横取りする敵対者。生きものたちは自他の実体など与り知らず、意味の世界で共鳴し続けている。