これでフィナーレです。昨年夏から始まった「○○に読みたい千夜千冊」シリーズは四季を巡り、春を迎えました。今回は春ということで講座名に「花」を背負っている[ISIS花伝所]の師範たちが、春に読みたい千夜千冊(通称ハルセン)を選びました。撮影はエディストカメラ部。新メンバーに師範代 福井千裕、宮坂由香、西村慧を迎え、カメラ部も新しい季節を迎えました。それでは、遊刊エディストに先行してISIS編集学校のInstagramとFacebookで連載公開をしたハルセンをまとめてお届けします。
選本:39[花]師範
撮影:エディストカメラ部
◆0419夜『枕草子』清少納言
春はあけぼの。これって『扉』じゃないかしら。枕詞は私たちに埋め込まれている。桜のピンクもケナリの山吹も。清少納言の勝手気儘な編集談義に花さかせ、放埓に数奇を語ってみるのもよきかなの春。春”が”あけぼの。
選者 平野しのぶ
写真 福井千裕
◆0947夜『春宵十話』岡潔
AGI元年から年明けて今春。感門之盟でもこの話題が舞っていた。真っ正面から『人工知能』(1602夜)も面白いが、微酔い加減に「情緒の数学」を味わうのはどうだろう。演繹と帰納での発展に、地の転換が課題T(Target)へのP(Profile)を動かす。
選者 蒔田俊介
写真 林朝恵
◆1068夜『美学入門』中井正一
あはれ、余情、幽玄、粋、そうした「心身脱落」にみる美。それは「さやけさ」「かるさ」「あわさ」でもあるという。目を閉じそっと和三盆など舌にのせ、春にひそむさやかな哀感を静かにざわめかせたくなる一夜。
選者 江野澤由美
写真 宮坂由香
◆0385夜『剣禅話』山岡鉄舟
春は、さみしい。世が華やぐ時こそ、冬を感じてしまう。花咲く空より土の中、未熟な今に藻掻く。だけどそれで良い。啓蟄をすぎても潜ったままで、精神の編集人へ研鑽する。ひたすら武士道だけを考えた鉄舟のように。
選者 内海太陽
写真 木藤良沢
◆0108夜『絶対安全剃刀』高野文子
春先に感じる”そわそわ”には、指先の小さな動きが取り返しのつかない”ぞわぞわ”を引き起こしてしまう予感が混ざる。萌えいずる季節に忘れ過ぎゆくものへのまなざし方を、少女の幼な心にたずねたい。
選者 梅澤光由
写真 後藤由加里
◆1066夜『複雑性とパラドックス』ジョン・キャスティ
太陽光のエネルギーが強まりエントロピーが高まっていく時期。天気は不安定、百花繚乱、進学や異動など人事にも煩わされる。秩序がゆるみ、体もあたたかにほぐれてくると注意のカーソルも周期を外れる。あちらへこちらへ、偶然に身を寄せて、非線形な方法と遊びやすい。
選者 中村麻人
写真 西村慧
◆1704夜『苔のむすまで』杉本博司
新たな一歩を踏み出して違う景色を見たくなる。その場に留まり変わる景色に目を凝らすのもいい。同じ景色を見て交わすのも面白い。目の前だけでなく斜めや後ろを見ても発見がある。じっくりシャッターを切りたい季節。
選者 森本康裕
写真 牛山惠子
◆0010夜『内なる神』ルネ・デュボス
入学、入社、異動に引っ越し。新たな場所に身を移す季節こそ、ともにしたいデュボスの「場所論」。今いる場所でも懐かしい郷土でも、感覚と記憶に浸ることができれば、ひらめきが自ずと舞い込んでくる。
選者 古谷奈々
写真 林朝恵
◆0833夜『論理哲学論考』ルードヴィッヒ・ヴィトゲンシュタイン
18の春、孤独さの中で頑なになっていた私は、今も一人道に迷い続けている。なぜなら「10マイル先に見える教会の塔の方向に歩いて行きましょう」と誰かを誘えないからである。(参照:近視の人『反哲学的断章』)
選者 深谷もと佳
写真 後藤由加里
◆1497夜『カラヴァッジョ』宮下規久朗
春は混沌から生まれる死と再生の物語だ。せぬ隙から溢れるカラヴァッジョの魔術に溺れ、闇と光をみつめたい。
選者 小椋加奈子
写真 木藤良沢
◆0012夜『テスト氏』 ポール・ヴァレリー
桜散る「雷鳴の一夜」に撃たれたい。世界も自分もわからないことだらけだが、「あいだ」にある方法を発見できれば共生できる。詩人の世界と言葉と方法を閃光のごとく身体に通したい。
選者 林朝恵
写真 阿久津健
◆0935夜『失われた時を求めて』マルセル・プルースト
催花雨の夜、マドレーヌは突然やってきた。必死で想像していたときはわからなかったのに。わたしのマドレーヌは、19世紀キューバ音楽の生演奏の音であった。プルーストが本書に捧げた40代の日々が、千夜のコンブレの時間を経て、みんなに繋がろうとしている。
選者・嶋本昌子
写真 福井千裕
アイキャッチ写真:宮坂由香
◆「○○に読みたい千夜千冊」シリーズ
後藤由加里
編集的先達:小池真理子。
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
多読ジム×倶楽部撮家 第3弾《一人一撮 edit gallery『仏教の源流』》
「中平卓馬 火ー氾濫」が東京国立近代美術館で開催中です(4月7日まで)。約20年ぶりの大回顧展だそうです。中平卓馬は1970年代に「アレ・ブレ・ボケ」の作風で森山大道とともに名を馳せた写真家。1977年に急性アルコール […]
【83感門】締切迫る!日常から編集を起こす EDIT TIDEトートバッグ(限定受注販売)
第83回感門之盟「EDIT TIDE」を記念したオリジナルトートバッグ(2種)ができました。申込受付開始後、多くの申し込みをいただいております。買えるのは今だけ!3月末までの期間限定受注販売です。締切前のお申し込みをお […]
【4/7(日)本楼開催】歴史は編集できる!イシス式クロニクル編集ワーク~『情報の歴史21』を遊ぶ~
自分史が密かなブームになっています。1980年代から流行り始め、自分史講座に通う人もいれば、自費出版する方もいるんだとか。終活あるいは就活など人生の節目に自分史を見つめ直すという編集作業は、昔から一定のニーズがあるよう […]
【83感門之盟】初の3Days開催!タイトルは「エディット・タイド」
初の3日間開催だ。第83回感門之盟は、3月16日(土)、17日(日)、23日(土)の3日間に渡り、編集工学研究所「本楼」を本拠地に、リアル・オンラインのハイブリッドで開催される。 今回のタイトルは「エデ […]
インスタ投稿企画 第2弾《一人一撮 edit gallery『性の境界』》多読ジム×倶楽部撮家
マーキュリーとは、ギリシア神話のヘルメスを意味する。泥棒、商売、旅人の守護神であり、霊魂の導者でもある。様々な境界を超えるマーキュリーという神の名をフレディ・マーキュリーが自ら名乗ったのは至極当然のことのように思う。 […]