【ほんのれんラジオ:ホントの自分01】リアルな自分は直視できない!? デジタル時代の「ホントの自分?」を考えてみる。

2024/05/11(土)12:02
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本をきっかけに、問いを深める。ゆるくカジュアルに、世界知と遊ぶ。
「ほんのれんラジオ」の最新シリーズが公開されました!

 

2024年5月のテーマは「ホントの自分? アバター時代のたくさんの私」。これまで、「こども力」や「憧れの大人像」を考えてきたほんのれん編集部。「大人」を掘り下げていくなかで、これを考えてみたい!と突き当たったのが「ウソとホント」や「自己像」をめぐる問題でした。みなさんは、どんな自分に“リアリティ”を感じますか?

 

▼エピソード

5月のテーマは「ホントの自分?」/アバター時代のたくさんの私/編集部が選んだ旬感本5冊/ニセ?盛り?アバター?分人?そして…『擬』/どうして「ホントの自分」を考えるのか/本音と建前、嘘、フェイクニュース/盛れないアプリ「BeReal」がどうして人気なの/カメラマンに指示する4歳児/あったあった、学校の廊下に張り出される写真!/写真と自己像の関係/森村泰昌『自画像のゆくえ』/鏡によってつくられた自己像/自分の顔、見たことある?/ニセモノをめぐる本たち/リアルな自分の写真に戦慄したニレ編集長/オレは「リアル」より「リアリティ」派/不気味の谷現象/ないはずの手が痛い?/フィジカルもリアルじゃないかも 

出演:ほんのれん編集部 ニレヨーコ、はるにゃ、おじー、ウメ子

 


今月のEditor’s Note/編集長 仁禮洋子


 

スクリーン越しの自分

 

BeReal.というSNSが若者に人気だそうだ。

BeReal.は「盛ってない、ホントの自分」を見せる画像・動画アプリ。 1日1回、通知が来たら、2分以内に「今の自分」を撮影して投稿するルール。加工は不可。寝起きの自分や散らかった自室が晒されることになる。ほかのSNSが「盛り」に溢れるなかで「リアル」は新鮮なのかもしれない。しかし、「ホントの自分」って何だろうか。

15-16世紀のヨーロッパでは「自画像絵画」が急激に増えた。背景にあったのは「鏡」の製造技術の向上だ。それまでは覗き込んでも「おぼろげ」にしか見えていなかった自分が、クリアに見えるようになった。そして人々は「自分とは何か」を問うようになった。道具によって自己認識が大きく変化したのだ。デジタルツールの発達で、自己認識は、さらに劇的に変容していくだろう。自分とは全く異なるアバターを多数使い分けるようになると、アレもコレも私、になるのかもしれない。5冊の旬感本をたよりに「ホントの自分? 」を考えてみたい。

 

 

▼「ほんのれん」旬感本はこちらの5冊!

 

『「ニセの自分」で生きています─心理学から考える虚栄心』稲垣智則(著)明石書店 2023

『「盛り」の誕生─女の子とテクノロジーが生んだ日本の美意識』久保友香(著)太田出版 2019

『アバターと共生する未来社会』石黒浩(著)集英社 2023

『私とは何か─「個人」から「分人」へ( 講談社現代新書)』平野啓一郎(著)講談社 2012

『擬 MODOKI─「世」あるいは別様の可能性』松岡正剛(著)春秋社 2017

 

 

 

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\ 耳より情報 /

 

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 Business Insiderでも、ロールモデル不在時代の「大人」について考えています!

 

ロールモデルが見つからない…。10冊の本で考える、理想の大人像

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今月から、ほんのれん編集部4名が顔写真入りになりました。ぜひご覧ください。

 

 

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「不適切」が時代を作る!炎上芸術家はなぜ、時代の 革命児になったのか

 

 

  • ほんのれん編集部

    編集工学研究所×丸善雄松堂が提供する一畳ライブラリー「ほんのれん」の選書やメディア制作を手掛けるメンバー。関西弁で跳ねるデザイン知カンガルー・仁禮洋子(ニレヨーコ)、小鳥の風貌ながら知的猛禽類な山本春奈(はるにゃ)、昭和レトロを愛する果敢なコンパイル亀・尾島可奈子(おじー)、2倍速で情報収集する雑読チーター・梅澤奈央(ウメコ)ほか。ほんのれんラジオは毎週水曜更新中。ほんのれん編集部公式noteにこれまでのアーカイブを蓄積してます。https://note.com/honnoren/

コメント

1~3件/3件

堀江純一

2025-06-20

石川淳といえば、同姓同名のマンガ家に、いしかわじゅん、という人がいますが、彼にはちょっとした笑い話があります。
ある時、いしかわ氏の口座に心当たりのない振り込みがあった。しばらくして出版社から連絡が…。
「文学者の石川淳先生の原稿料を、間違えて、いしかわ先生のところに振り込んでしまいました!!」
振り込み返してくれと言われてその通りにしたそうですが、「間違えた先がオレだったからよかったけど、反対だったらどうしてたんだろうね」と笑い話にされてました。(マンガ家いしかわじゅんについては「マンガのスコア」吾妻ひでお回、安彦良和回などをご参照のこと)

ところで石川淳と聞くと、本格的な大文豪といった感じで、なんとなく近寄りがたい気がしませんか。しかし意外に洒脱な文体はリーダビリティが高く、物語の運びもエンタメ心にあふれています。「山桜」は幕切れも鮮やかな幻想譚。「鷹」は愛煙家必読のマジックリアリズム。「前身」は石川淳に意外なギャグセンスがあることを知らしめる抱腹絶倒の爆笑譚。是非ご一読を。

川邊透

2025-06-17

私たちを取り巻く世界、私たちが感じる世界を相対化し、ふんわふわな気持ちにさせてくれるエピソード、楽しく拝聴しました。

虫に因むお話がたくさん出てきましたね。
イモムシが蛹~蝶に変態する瀬戸際の心象とはどういうものなのか、確かに、気になってしようがありません。
チョウや蚊のように、指先で味を感じられるようになったとしたら、私たちのグルメ生活はいったいどんな衣替えをするのでしょう。

虫たちの「カラダセンサー」のあれこれが少しでも気になった方には、ロンドン大学教授(感覚・行動生態学)ラース・チットカ著『ハチは心をもっている』がオススメです。
(カモノハシが圧力場、電場のようなものを感じているというお話がありましたが、)身近なハチたちが、あのコンパクトな体の中に隠し持っている、電場、地場、偏光等々を感じ取るしくみについて、科学的検証の苦労話などにもニンマリしつつ、遠く深く知ることができます。
で、タイトルが示すように、読み進むうちに、ハチにまつわるトンデモ話は感覚ワールド界隈に留まらず、私たちの「心」を相対化し、「意識」を優しく包み込んで無重力宇宙に置き去りにしてしまいます。
ぜひ、めくるめく昆虫沼の一端を覗き見してみてください。

おかわり旬感本
(6)『ハチは心をもっている』ラース・チットカ(著)今西康子(訳)みすず書房 2025

大沼友紀

2025-06-17

●記事の最後にコメントをすることは、尾学かもしれない。
●尻尾を持ったボードゲームコンポーネント(用具)といえば「表か裏か(ヘッズ・アンド・テイルズ:Heads And Tails)」を賭けるコイン投げ。
●自然に落ちている木の葉や実など放って、表裏2面の出方を決める。コイン投げのルーツてあり、サイコロのルーツでもある。
●古代ローマ時代、表がポンペイウス大王の横顔、裏が船のコインを用いていたことから「船か頭か(navia aut caput)」と呼ばれていた。……これ、Heads And Sailsでもいい?
●サイコロと船の関係は日本にもある。江戸時代に海運のお守りとして、造成した船の帆柱の下に船玉――サイコロを納めていた。
●すこしでも顕冥になるよう、尾学まがいのコメント初公開(航海)とまいります。お見知りおきを。
写真引用:
https://en.wikipedia.org/wiki/Coin_flipping#/media/File:Pompey_by_Nasidius.jpg