胸元の稲穂が揺れていた。2011年9月3日、第29回感門之盟のテーマは、再生と豊穣へのイノリを込めた「イシスのミノリ」。ZEST恵比寿の舞台からエジプト神話の女神イシスが卒門、突破、放伝、韻去、退院を迎える参加者を見守っている。会場は豊穣の神々を乗せた宝船さながらの華やぎである。
ナビゲートするのは、総合司会の丸山玄(師範)と清水伺名子(師範)だ。主役たちのハレの場を盛り立てようと8月から念入りに準備を重ねてきた。2人が持つプログラム兼台本には7時間を超える全体の段取りがロールごとに分刻みで書き込まれている。船を難波させぬよう、役割分担、掛け合い、間合いを打ち合わせてきた。
冒頭の自己紹介では師範代時代の教室名に触れることに決めた。コメントは退院式は丸山、放伝式は清水という具合に細かく分担し、パッと見てわかるように色分けして、台本に落とし込んだ。
準備万端でも本番には想定外がつきもの。用意が無駄に終わることも、予定にはないコメントを求められることもある。会場全体が共振できるようなナビゲートを迫られる。司会ロールは刻々と変わる風を読み、舵をとらなければならない。一瞬一瞬が一期一会の編集稽古だ。
イシスの女神に導かれ、ミノリの感門之盟は、大きな番狂わせもなく幕を下ろした。清水は「会場との一体感を味わえる格別の機会」と謝辞を述べ、丸山は「人生最大の編集稽古」と締めくくった。稲穂はより深くこうべを垂れ、揺れている。
しみずみなこ
編集的先達:宮尾登美子。さわやかな土佐っぽ、男前なロマンチストの花伝師範。ピラティスでインナーマッスルを鍛えたり、一昼夜歩き続ける大会で40キロを踏破したりする身体派でもある。感門司会もつとめた。
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