大感門の大仕事 イシスのミノリ(第29回感門之盟)

2019/10/17(木)11:11
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 胸元の稲穂が揺れていた。2011年9月3日、第29回感門之盟のテーマは、再生と豊穣へのイノリを込めた「イシスのミノリ」。ZEST恵比寿の舞台からエジプト神話の女神イシスが卒門、突破、放伝、韻去、退院を迎える参加者を見守っている。会場は豊穣の神々を乗せた宝船さながらの華やぎである。


 ナビゲートするのは、総合司会の丸山玄(師範)と清水伺名子(師範)だ。主役たちのハレの場を盛り立てようと8月から念入りに準備を重ねてきた。2人が持つプログラム兼台本には7時間を超える全体の段取りがロールごとに分刻みで書き込まれている。船を難波させぬよう、役割分担、掛け合い、間合いを打ち合わせてきた。

 

 冒頭の自己紹介では師範代時代の教室名に触れることに決めた。コメントは退院式は丸山、放伝式は清水という具合に細かく分担し、パッと見てわかるように色分けして、台本に落とし込んだ。


 準備万端でも本番には想定外がつきもの。用意が無駄に終わることも、予定にはないコメントを求められることもある。会場全体が共振できるようなナビゲートを迫られる。司会ロールは刻々と変わる風を読み、舵をとらなければならない。一瞬一瞬が一期一会の編集稽古だ。


 イシスの女神に導かれ、ミノリの感門之盟は、大きな番狂わせもなく幕を下ろした。清水は「会場との一体感を味わえる格別の機会」と謝辞を述べ、丸山は「人生最大の編集稽古」と締めくくった。稲穂はより深くこうべを垂れ、揺れている。

  • しみずみなこ

    編集的先達:宮尾登美子。さわやかな土佐っぽ、男前なロマンチストの花伝師範。ピラティスでインナーマッスルを鍛えたり、一昼夜歩き続ける大会で40キロを踏破したりする身体派でもある。感門司会もつとめた。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。