自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
3人4脚のマラソンが終わった。読み・書きの両輪を磨きあげる[破]コースでは、松岡正剛の千夜千冊にまねぶ「セイゴオ知文術」が前半の山場だ。知文アリスとテレス賞(通称AT賞)という全校アワードとして、受講生全員が火花を散らすお題である。
学衆は課題本10冊のなかから1冊選び、それについて書く。書評でもなく感想文でもなく、著者と自分とのあいだに立ち上がった世界を「知文」として仕立てる。著者の主張だけ、自分の感想だけの独走ではなく、両者が手を携えることが要だ。
編集学校で初めて学ぶ読み方と書き方に、学衆は呻き、嘆き、頭をかきむしる。折れそうなほどの力でペンを握りしめ文机に向かう彼らに、お茶やお菓子、ときに警策をもって朝な夕な寄り添うのは師範代。すべての課題本を読み込み、それぞれの学衆の原稿を受け取っては、平均3~4回、多いときには10往復以上のやりとりをし、産婆さながらに学衆の言葉を引き出してゆく。
文化の日から始まる1週間は、締切直前の知文ウィーク。全学衆が本を読み、知文を書き、指南を読む。各教室には、ぐちゃぐちゃに丸めて捨てられた下書きの山と、そこから砂金のように選り抜かれた知の結晶があふれた。
11月10日(日)18時。締切の鐘が鳴るやいなや、歴代の指導陣が集う師範詰所に師範代9名が駆け込み、その場に倒れ込んだ。彼らの胸にしっかり抱きかかえられていたのは、学衆の作品タイトルだった。
今期のエントリーは、73名中61名。師範代が教室から持ち出した原稿は印刷され、イシスきっての目利きである評匠・師範の手元に渡った。学衆が読んで書いた作品を、つぎは選評委員が読み込み、そこへ講評を書きつけてゆく。アリスとテレス賞講評の発表は11月末予定。
今期43[破]の人気本トップ3は、1位『ひきだしにテラリウム』(九井諒子、イースト・プレス)、2位『神話の力』(ジョーゼフ・キャンベル他、早川書房)、3位『人間はどこまで動物か』(日高敏隆、新潮文庫)。
『ひきだしに~』は、モードが目まぐるしく変わる漫画版ショートショート。一貫するテーマもストーリーもないコミックを一本のテキストにまとめあげるには、メディアを横断するタフな編集力が要求される。前期42[破]の人気No.1は『神話の力』。
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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2025-11-18
自ら編み上げた携帯巣の中で暮らすツマグロフトメイガの幼虫。時おり顔を覗かせてはコナラの葉を齧る。共に学び合う同志もなく、拠り所となる編み図もなく、己の排泄物のみを材料にして小さな虫の一生を紡いでいく。
2025-11-13
夜行列車に乗り込んだ一人のハードボイルド風の男。この男は、今しがた買い込んだ400円の幕の内弁当をどのような順序で食べるべきかで悩んでいる。失敗は許されない!これは持てる知力の全てをかけた総力戦なのだ!!
泉昌之のデビュー短篇「夜行」(初出1981年「ガロ」)は、ふだん私たちが経験している些末なこだわりを拡大して見せて笑いを取った。のちにこれが「グルメマンガ」の一変種である「食通マンガ」という巨大ジャンルを形成することになるとは誰も知らない。
(※大ヒットした「孤独のグルメ」の原作者は「泉昌之」コンビの一人、久住昌之)
2025-11-11
木々が色づきを増すこの季節、日当たりがよくて展望の利く場所で、いつまでも日光浴するバッタをたまに見かける。日々の生き残り競争からしばし解放された彼らのことをこれからは「楽康バッタ」と呼ぶことにしよう。